泣けないから笑うのです
カイル君の登場。
母は娼婦だった。
こんな時代なら、別に珍しくもない。
豊かな金髪を持った美しい女性だ。
僕を産んだせいで、変わり果ててしまったが。
父親はわからない。別に、誰でもいいんだ。
問題なのは、僕だからね。
僕は生まれた時から異常だった。
父を愛していた母は、父親譲りの黒髪に喜んだのだろう。
だが、瞳は、人間ではあり得ない“深紅”だった――。
鮮血のように不気味に光る赤。
母は、その日から狂い出した。
自分は魔物を産んだのだと発狂した。
そして、憎しみの全ては僕に向かった。
「このバケモノ…!」
バシ!バシィ!!
「……っ、」
「返して、返しなさいよ!わたしとあの人の子を返して!」
ドカッ
「っ!」
降り続ける暴力に、僕は黙って堪えるしかない。
僕は本当にバケモノなのだから。
なぜなら、この瞳のせいで母は狂い、僕たち親子は町の人からも冷たい視線を浴びている。
母を不幸にしたのは、間違いなく僕だった。
それでも母が僕を殺さないのは、この瞳以外のすべてが、愛する男に生き写しだからだろう。
憎いのに愛しくて
殺したいのに殺せない。
「すみ、ませ、……母さん」
母の精神は、壊れかけていた。
僕が、解放してあげなければならない。
もう充分、生かしてもらった。13年間も。
いつか愛してもらえるのでは、なんて望んだことが愚かだったのだ。
こんなバケモノでも、母は殺せない。
僕が、愛した男に生き写しだから。
ならば――、
「あんたなんかっ、生きてちゃいけないのよ!」
パシッ
殴ろうとしていた母の腕を掴んだ。
「な、なによ!離しなさい!」
生まれて初めて抵抗したからか、母は少し怯えていた。
「母さん…」
「あんたはわたしの子じゃない!母さんだなんて呼ばないでちょうだい!」
「…ああ、そうだよね。僕はバケモノだもの。生まれたこと自体が罪深いんだ」
「な、なによっ、あんた…なんで、」
「解放してあげるよ。もう、なにも望まないから」
「なん、で、いつも…」
「さようなら、母さん」
「なんでいつも笑ってるのよ!?」
変だよね。哀しいのに、泣き方がわからないんだ。
母の手をそっとおろして、僕は静かに家を出た。
ヤンデレ予備軍のカイル君。次は、マリアちゃんの登場です。……更新遅くなりましたごめんなさい(;_;)