プラス3!
今回の時系列は前話「プラス2!」からの続きです。
今回も智也君視点となります。
あくる日の放課後。
今日は健人から一ノ瀬さんがいく予定であるという場所に連れてってもらう約束だ。
はっきりいってめんどうだ。
一度もあったことのない、それも俺ではなく健人が好きな人に会いに行くというのに同行するというのは、どうなのだろうか。
うん、帰ろう。今日は授業中にさされまくった日だし、非常に疲れた。
とぼとぼ力なく歩きながら今日のことを思い返す。
だれしも経験があるのではないだろうか?
出席番号でその日付が近いと、授業中ことあるごとにさされるという、アレ。
今日は俺の出席番号の日だったというわけではないのだが。
知ってるか。
授業の最初に指されるほうが、実は楽だったりするんだぜ。
俺の出席番号は6番。
普段なら今日は指されない日だ。なぜなら、今日は4月12日だ。
まぁ、まずは出席番号12番の生徒をさすのはお決まりとして。
次に13番にいくのが定石ってものだろう?
それなのに今日の授業を行った教師全員がこんなことを言い出すんだ。
「「「いつもいつも同じ法則じゃ、授業に緊張感がないよな(ですよね)」」」
ってことで、次は18番がさされた。
さっきもいったが、授業の最初にさされるってのは、楽勝なおさわり部分の問題が多かったりするのだ。
だいたいその授業の5、6番目に指されると、内容に深く入っていたり、応用問題だったりして、答えづらくなる。
で、24番の次が30番。
ここまで言えばもうわかるよな。
32人のBクラスにはこれ以上とばせる人数がいない。
あろうことか、6の倍数できてるんだから、残るは6番。
すなわち、俺となる。
今日はめざましTVの占いがビリだったんじゃなかろうか。。。
5番目にことあるごとにさされ、どれもこれも難しい問だった俺は、精神的にかなり参ってるのだ。
やっとの思いで下駄箱に辿りつき、上履きをしまって正面玄関を抜けようとしたところで。
「智也!!」
・・・・・・。
待ち構えていたのだろう。健人に簡単につかまってしまった。
「さぁさぁ、智也!大船にのったつもりでついてこい!」
「はぁ・・・。」
なぜ大船に乗ったつもりになるのが俺なんだ。
健人の好きな人に会いに行くのに俺がついていくんだから、お前が安心する側じゃないのか?
まぁとりあえず、ついていくことにする。
校門をでて、どうやら駅の方向へ向かうようだ。
次第に車の通りが激しくなり、騒がしくなってきた。
あー・・。ほんと今日はつかれた。。。
帰ったらすぐ、風呂にはいって寝てしまおう。
そんなことを考えていたら、健人がとある店に入って行った。
どうやら洒落た喫茶店のようだ。
健人の思い人である一ノ瀬さんは、どうやらここでよく集まってお茶しているらしい。
こんな情報、健人なんかに良く教えてくれたもんだな、一ノ瀬さんの友達は。
もちっと警戒したほうがいいのではないだろうか。
そんなことを思っていると、健人が席に座ってこっちこっち、と手招いている。
男同士でなんでこんなとこ、と思いつつも、小走りで健人の向かい側の椅子に座った。
健人は携帯を取り出して、なにかを確認すると、
「ようし、くるようだ!」
などと言いだした。
ちょっとまて。なんだその情報。
健人に協力してるストーカー野郎でもいるのか?
「ふふふ。。。びっくりするなよ?」
「するか。っていうかお前の好きになった人だろうが。俺が好きになったらまずいだろう。」
「ん?ああ、なるほど。それもそうだな。」
全くもってこいつは何を考えてるんだ。恋愛事を誰かに相談したいって気持ちはわかるのだが、その人をわざわざ他人にみせる必要性がどこにあるというのだろう。
俺だったら、たぶんその人のことを知らない人間に、わざわざ紹介したりはしない。
ん?もしかして俺束縛したい方なのだろうか。
あーやめやめ。俺は恋愛事は苦手なんだ。
考えるだけ無駄だろう。
健人の好みがどの程度が見極めてやるくらいの気持ちでいいはずだ。
やがて健人が入り口の方を見て、
「きたぞ。」
ガチャっとドアが開く。
俺は人目もかまわず振り返った。
そこには、日本人形のごとく前髪を不自然に目元付近まで一直線でのばしている黒髪ストレートの女子と、非常に仲が良さそうな茶髪で活発そうな女子の2人が入ってきていた。
まぁ、茶髪の女子のほうは、どう考えても本屋の参考書コーナーなんかにはいなそうな見た目だったし、おそらく地味そうな黒髪ストレートの女子が、健人の思い人なんだろう。
ふーん。こいつ、普通っぽい子が好きなんだな。
あの子が好きと言われれば、まぁ健人のとなりを歩いていても、別に違和感なさそうだけどな。
「健人、あの黒髪さんと結構お似合いかもな。」
「何を言っている!お前はなにか勘違いをしているぞ!」
ええ~?まじかよ。ってことはまさかあっちの茶髪女子?
似あわねぇ・・・・だめだこりゃ・・・。
まぁ意外性はかなりあるけどさ。
「お前好みおかしいかもな・・・」
っと軽くいったら、デコピンされた。
「いってぇな!なんで怒ってんだよ。」
「このドアホ!決めつけんのはまだはやい。いいから見とれ!」
今日は本当に最悪の日だ。。。
授業で指されまくったあげく、健人にデコピンまでされて、俺はこんなとこで何をしてるんだろうか。
こうなったらもう自棄だ!不自然だろうがお望み通り見てやるよ!
俺は2人の女子の観察を開始する。
ほんと、仲がいいんだな。じゃれあってるようにしか見えない。
ん?
茶髪女子が一瞬こっちを見たような気がしたのだが。
「なぁ、健人・・・」
「見ろ。」
「え?」
「いいから。」
「・・・?」
健人の言動に首を傾げつつ、俺は再び2人の方を見てみる。
茶髪女子が、黒髪女子の前髪をあげて、髪留めで丁寧に止めていく。
「・・・嘘だろ・・・。」
「目の前に映っている光景が全てだ。」
「だって・・・そんな。」
「俺も一ノ瀬さんのことを初めて見たときは気がつかなかったさ。だってあんな女子、千夏に知らされるまではうちの高校に存在していることすら知らなかったからな。」
健人が口にした千夏という名前すら、俺の耳には入っていなかった。
「だって俺ら高校2年だぞ?今までどうやったってだれかが。。。」
気がつくはずだ。だってあんな・・・。
「あることがきっかけで自分に自信がもてなくなり、それから様々なことにコンプレックスを感じるようになったそうだ。たとえば、自分の容姿が普通すぎるって感じにな。そして、額が広すぎるのではという『自己分析』から、前髪を伸ばすことでアレを隠している。」
日本人形のように一直線で長かった前髪がきれいに左右に分けられることで、霧が晴れるように大きな瞳が現れ、どこまでも自然でそれでいて可憐な顔が黒髪女子の正体、一ノ瀬さんであった。
思い返すのはこの言葉。
『智也君ってかっこいいから』
今さらになって思う。
こんなふうに告白してきた女子の大半に対して、俺は今すぐ土下座でもなんでもいいから、謝りたい。
顔が、身体が、汗ばんだように熱い。
「なぁ、健人。」
なぜかニヤニヤしながらこっちを見ている健人に対して俺は。
「一目惚れって言葉を信じるか?」
to be continued.
まだプラス1!の時系列に追いついてません。
もうしわけないです。
見た目判断を否定してきた智也君が、一ノ瀬愛美に一目惚れしたという話でした。
プラス4!では、プラス3!における一ノ瀬愛美視点でお送りします。