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第3話:公爵令嬢と婚約破棄

 ――かに見えたが。


「ヘレン、ただ今をもって、君との婚約を破棄する!」

「「「――!!」」」


 私がサイラス様に婚約破棄されてしまったことで、その日常はあっけなく崩れ去ってしまった。

 久しぶりに東棟から出られたと思ったら、まさかこんな仕打ちが待ってるなんて――。


『クハハハハ! よかったではないかヘレン! これでやっと、子守から解放されるな』

『オレたちのお陰ケル!』

『感謝してもいいベロ~』

『スッスッス!』


 クッ、人の気も知らないで……!

 これでは『王太子の婚約者』という、私の役目が果たせなくなってしまうわ――!


「サイラス様! どうかお考え直しください! この通り、ヴァルダートは無害です! 私が二週間も無事なことが、その証左です!」

「フ、フザけたことをヌかすな!? 相手は伝説の魔神だぞ!? そうやって油断させたところで、お前の身体を乗っ取って、この国を滅ぼすつもりに違いないッ!」

「そ、そんな……」


 そこまで警戒しているなら、何故二週間前は、あんな不用意に開かずの間に入ってしまったのですかという言葉が喉まで出たが、すんでで飲み込む。

 あれはサイラス様をちゃんと止められなかった、私にも責任はあるから……。


『クハハハハ! なるほど、この国を滅ぼすというのも、悪くないかもしれんなぁ』


 ヴァルダート……!?

 本当にあなたは、この国を滅ぼすつもりなの……?

 この二週間ずっとあなたと一緒にいて、どうしてもあなたはそんな悪い人には思えなかったのだけれど……。


「ホラ見ろ!? 僕の言った通りじゃないかッ! この国の平和のために、今すぐ君にはこの国から出て行ってもらう! それでいいですよね、父上!」

「うむ、お前の好きにせよ、サイラス」

「……なっ」


 国王陛下が、私にゴミを見るような目を向けられる。

 あ、あぁ……。


「そういうことでしたら陛下、ヘレンの代わりに、ジャスティーンを新たな婚約者として推薦いたします」

「――!」


 その時だった。

 私のお父様が、お父様の再婚相手の連れ子であるジャスティーンの背中に手を当てながら、サイラス様の前に出た。

 お、お父様……!?


「おお、ジャスティーンか! うんうん! ジャスティーンならヘレンと違って愛嬌もあるし、僕の婚約者に相応しいな! これからよろしくな、ジャスティーン!」

「うふふ、光栄ですわ」


 ジャスティーンが勝ち誇ったような顔を私に向ける。

 ……くっ。


「まったく、ここまで育ててやった恩を仇で返すような真似をしよって。貴様とはもう、親子でも何でもない。さっさとこの国から出て行くがいい」

「……お父様」


 お父様も先ほどの陛下同様、ゴミを見るような目を私に向ける。

 嗚呼、そうか……。

 私はもう、用済みということなのですね……。


 ――この瞬間、目の前の風景から色が失われ、音も遠くなっていくような感覚がした。

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