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仕事を始めてから2ヶ月がたった。だんだんと仕事も慣れてきて、教えてもらったことを書いたメモ帳が一冊出来上がった。何度もめくるせいか、黄ばんで両端がぼろぼろになっているが、私はそこが気に入っていた。
あれから悪魔は、人間の名前を借りて性的暴力で困った人々を助ける活動に参加しているようだった。彼の思いが前向きに社会と繋がるようだった。相変わらず、ダブルスーツは必需品らしく、もっとラフな格好のほうがいいといったが、譲れないらしかった。
私はいつも通り仕事終わりにスーパーに立ち寄り、その日食べる食料を買うと、足早にアパートに向かう。
「ただいま」
「おかえりなさい」
珍しく悪魔が先に帰っていた。私は買ってきたパイナップルを渡す。
「これたべていいよ」
悪魔はそれを受け取ると感謝を述べて、一つ一つ口に運んだ。
「今日はどうだった?」
私が尋ねると悪魔はうーんと低い声で唸るように悩ましげな声を出した。
「DVを受けている子持ちの女性から相談がありました。話を聞くと、シングルマザーで精神疾患持ち、子供は以前結婚した男性の子供だということで。今現在付き合っている男性から生活費を貰っているが、毎日のように言葉の暴力があるそうです」
「深刻な問題だ」
「ええ。僕はその男性と付き合うのをやめて生活保護を受けながら子どもを育てたほうがいいと言ったんですが、借金をしていて審査に通らないらしいんです。それにその肩書きがいやみたいで、抜け出せないのです」
「理由がいろいろあるんだね」
「子供が一番かわいそうで、よく見ていると腕に青いあざがあったりしているんです。父親に八つ当たりされてるんじゃないかと心配で。男の子なんですがね」
「弱者には厳しい世の中だものね」
「僕、明日少年のところに行ってみます」
悪魔はそういうと、再びパイナップルを食べた。
私は、レバニラ炒めを作るために、豚レバーを牛乳に浸す。買ってきたニラともやしを一通り洗って、ニラを切っていく。
「今日はレバニラ炒めだ!安くてうまいぞー」
「レバニラ!健康に良さそうですね」
下準備をおえて、炒める工程にはいる。
ごま油を入れて、牛乳に浸して匂いをとったレバーを水洗いし、水気をとってからフライパンにいれる。