17-2
結局コンビニに行ってきた私とアカネ。
ホワイトチョコレート以外にもあれこれ買ったせいで両手が重い。
「買いすぎたかな?」
アカネが菓子の山を見て首を横に振った。
大学時代、部活のおやつを買うためによくコンビニに一緒に行った私とアカネ。
昔の思い出について話をしていて気がついた時は、すでに両手には一週間は平気な量のお菓子と飲み物でいっぱいだった。
「大丈夫! アカネが遊びに来るたびに食べればいいから!」
「ふふっ、じゃあ頻繁に遊びに来なくちゃね?」
「アカネならいつでも歓迎だよ~!」
コンビニで買ってきたお菓子を片付けた私たちは、再びホワイトチョコレートを溶かし始めた。
トリュフを作るために丸めておいたチョコレートは、完璧に形を整えた状態。
あとはホワイトチョコレートで飾るトリュフに手を加えるだけだ。
「ひまりは今の旦那さんと大学時代に出会ったんでしょ?」
アカネが溶け始めたホワイトチョコレートをかき混ぜながら、静寂を破った。
「うん、そうだよ。」
「ミオの紹介だったっけ?」
「そうだよ!」
「じゃあ、三人は最近もよく会うの?」
アカネの質問に、デコレーションが必要なチョコレートを食卓に並べていた私は動きを止めた。
確かに結婚前はよく三人で遊んでいた。
でも結婚してからは、3人で集まったことは数えるほどしかない。
私と会うのは問題ないが、夫を呼ぼうと言うと、ミオは拒否した。
最初は二人で喧嘩したと思っていたので、何も質問もしなかった。
でも、夫が時々ミオと会うと言ってくれるので、二人の仲が悪いわけでもない。
疑問だらけの状況だが、質問はしない。
本能的に遠ざけなければならないような気がしたからだ。
「え...... 結婚してからは3人で集まることはないみたいね。あはは...。」
「......。」
「どうやら、ミオはモデルの仕事を始めてから忙しくなっちゃったから~! 仕方ないことだと思うよ!」
「そうだな··· みんな大学生の時とは違って、それぞれの人生を生き始めたから。」
溶けたホワイトチョコレートを2つのパイピングバッグに移したアカネは、そのうちの1つを私に渡した。
「レタリングはしないよね?」
「えぇ、小さすぎて無理だよ!」
「へえ~それはちょっといやらしいかも?」
「え!?何言ってるの!?」
「ふふっ、何でこんなことで恥ずかしがってるんだよ~、一週間に【4回】もするくせに?」
「キャアアア!!!アカネ!! これからはおしゃべり禁止よ!!」
「へえ~ひまり! すごく早いじゃん~! 実はエッチな冗談が原動力なのだろうか?」
「おしゃべり禁止って言ったよね!!?」
「ふふっ、こんなに必死なひまりの姿は久しぶりだな~! よし、私も始めようか!」
私たちはしばらく黙って作業に没頭した。
かなり多くのチョコレートを飾ったと思ったが、まだお寺だけが残っている状況。
やる気が先走って、トレイを20枚もチョコレートで埋めてしまった責任を身をもって受け止めている。
「さあ、ひまりちゃん! 次だよ!」
「まだ残ってるの!?」
「これが最後だから、少しだけ頑張れよ~!」
「ココアパウダーに変更できないの?」
「ダメよ。数量を正確に合わせなきゃ!」
「ううっ··· 出た!アカネのママモード!」
アカネは、決められた目標量があれば、それを必ず達成する性格だ。
これは彼女が部活で部長を務めていた最大の理由だった。
創作活動を行う部活の性質上、部員が怠けたり、雰囲気が悪くなることが多かった。
しかし、そんな部員たちを叱咤激励していたのが、アカネだった。
彼女のリードの下、私たちは様々な作品を作り、いくつかの作品は投稿サイトで人気ランキングに入るほどの輝きを放った。
そんな経験は、ジレンマに陥りやすい芸術家である私たちの自尊心を守ってくれた。
だから皆、厳しいアカネに感謝する気持ちで部活に臨んでいた。
「わかったよ...。」
私は再びパイピングバックをつかんだ。
そして必死に最後に残ったチョコレートの上にホワイトチョコレートの洗礼を下した。
「お疲れ様。」
作業を終えてソファの上に横たわっている私にコンビニで買ってきた車を持ってきてくれるアカネ。
アカネはソファの下に座り、ソファに背を預ける。
「久しぶりだね、この雰囲気。週末に会うと、よくこうやってゲームをしてたんだけど...今でもあの頃が懐かしいよ。」
「私もそうよ。でも、戻りたいとは思わないよ。」
「どうして?」
「だって...試験勉強するのが嫌だから!!!」
「ふふっ、ひまりは試験体質じゃなかったよね~!」
「ううっ··· 今でもあの時の悪夢を見るんだよ!!」
「へえ~どんな内容なの?」
「準備してない試験を受けるとか!!試験範囲を間違えるとか!!カンニングしてたらバレるとか!!!」
「え··· それは全部ひまりのせ···。」
「うるさい!!! 試験は悪いものだよ! だからタイムマシンが開発されても大学の時には絶対に戻らない!!」
「あはは···。」
私の意地に勝てないと思ったのか、アカネは首を横に振った。
子供のように駄々をこねていると思っていい。
それほど大学生活の時は私にとって巨大なトラウマだから!!
楽しかった分、試験も多かった大学生活...
二度と思い出したくない悪夢のような日々だった。
「そうだ、ひまり。 いつか私の作業室に来てみる?」
「作業室?」
「声優として活動している間に出会った人たちとボイスドラマを作る小さなチームを作ったんだ。 その人たちと一緒に使う作業室だよ。」
「へえ···。」
「ひまりなら面白がってくれるかもしれないと思って、いつか誘ってみたかったんだけど...一度来てみる?」
「うん!いいよ!」
「ふふっ、わかった。 近いうちに他のチームと合作をする日があるが、チーム員だけ大丈夫だと言えばその時に呼ぶよ!」
「え? それって忙しい時じゃないの? 大丈夫なの?」
「大丈夫よ~どうせ実際の作業じゃないと自由な雰囲気だから! それに今度はこちらの分野で有名な作家さんもいらっしゃるんだって!」
「へぇ~誰なの?」
「作家名はチーズバーガー。私も本名は知らないよ。」
「チーズバーガー?ははは!なんだそれ!?」
「先輩!!」
ひよりの声に目が覚めた私。
一瞬居眠りをしていたようだ。
「会議中に居眠りしたらどうするんですか!!」
「あ、ごめんなさい!」
「ははは!だいじょうぶです。 夜通し私たちの作業物を検討してくださったので、このように会議に参加してくださったことだけでもありがたいことですから!」
「理解してくださってありがとうございます。」
修平が頭を下げて謝ると、一緒に協業するために私たちのスタジオを訪れた関係者は両手を振って大丈夫だと答えた。
「こちらこそありがとうございます!あの有名な作家さんと一緒に仕事ができる機会はなかなかないんですからね!それではよろしくお願いします!
チーズバーガーさん!」