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02

私たちが向かったのは、渋谷のとある路地にあるカフェ。

ここを初めて発見したのは、10年前、ミオと一緒に渋谷に遊びに来た時だった。

路地の入り口から都心とは全く違う雰囲気に変わり、何か魔法のようなハプニングが起こりそうな風景に魅了され、初めて足を踏み入れました。

恋愛を始めてから訪れる機会が減り、2年近くここには来ませんでしたが、その間に有名になったのか、今では昔はほとんど見かけなかった外国人の姿をよく見かけます。

観光客が多くなり、かつてのような静けさを期待するのは難しいですが、変化こそ世の中が生きている証拠だと思うので、嫌いではありません。


「でも、これは多すぎるんじゃないの...!!?」

「びっくりした!」


私の突然のイライラを吐き出したことに驚いて身を縮こまらせたミオは、頭にかぶったサングラスを直しながら戸惑いを隠せない様子だった。

ボブカットですっきりとした髪型だが、目鼻立ちがはっきりした彼女の美貌を生かした彼女のスタイリングは、おとなしくもタフな雰囲気に生まれ変わった。

さらに洗練されたスタイルのファッションセンス。

ある程度自分の体型を際立たせつつも、やり過ぎない範囲で止まる控えめなコーディネート。

今も昔も、ミオは輝いている。

私は今でもなぜ彼女が彼氏を作らないのか理解できない。


「やっぱり··· 何があるんだろう ?」


ミオは心配そうな顔で私に尋ねた。


「あ、そういうことじゃないよ··· ただ人が多すぎてイライラしたというか.......」

「まあ、以前より人が多くはなったね。 それよりさっき通りでは何のためにイライラすると言ったの? 汗びっしょりでは....」


ミオの質問に私は答えるのをためらった。

夫が何か怪しいことを簡単に口に出せるはずがないのだ。


「夫にあげるプレゼントを買えなくなったことで、ちょっとイライラしたというか...。」

「あ...だから秋葉原にいたのね......、まさかそこで会えるとは思わなかったから、俺もびっくりしたよ。」

「なんで?」

「だって、ひまり君って...漫画とかゲームとかあまり...好きじゃないでしょう?」


違う。

私はファンタジージャンルのファンで、かなりこの分野のゲームをたくさんプレイしていた。

特に中世的な雰囲気のファンタジーが一番好きで、オープンなファンタジーの世界を探索するようなゲームは私の好きなジャンルです。

このような趣味のおかげで、今の夫と出会ったのもこの趣味のおかげです。

しかし、私の親友であるミオがこのような私の趣味を知らないのは、私がこの趣味を他人に徹底的に隠していたからだ。

学生時代に自分の趣味のせいでからかわれた経験が強烈なトラウマとして残っていて、なるべく自分の趣味は自分一人で楽しむと自分自身と約束していた。

他のことはともかく、この約束だけはまだ破っていない。


「あ、まあ、小説のために少し調べたりもするから...あはは....」

「最近小説をあまりアップしないのは、勉強してたからか?」

「えっ、見てたの?」

「もちろんだよ!だって、ひまりちゃんの書く小説は好きなんだもん。」

「そんなこと言ったら恥ずかしいじゃん...。」

「いつも見てるファンタジーとはちょっと違う感じって言うか、タフなエルフが出てきたり...優しいゴブリンが出てきたり...そういうの好きだよ...。」

「そうなの? そんなに気に入ってくれるなんて照れくさいわね...えへへ...。」

「ふふっ、いつも応援してるから頑張ってね。いつか有名になったら、私のこと忘れないでね?」

「え? 誰ですか、あなた!?」

「えっ、早くも無視するの!?」


暖かい日差しのようなミオの応援。

その分、冷たい罪悪感が私の胸を締め付けた。

ミオにだけは嘘をつきたくなかったが、夫のことを隠すためには仕方ない判断だ。

もし本当に夫が危険な人だったら、ミオまで巻き込んでしまうかもしれないから、今は夫のことはすべて隠すのが彼女のためだと思う。

このまま夫の話は避けつつ、近況の話をするのが一番....。


「それで、結婚生活はどうなの?」

「まさにその話!!!?」

「新婚だからまだラブラブ~!みたいな感じでしょ?」ひなみちゃんはいいよねー!?」


ミオは満面の笑みを浮かべながら、私をじっと見つめながら質問してきた。

俺が男だったら、きっと惚れただろう。


「ラブラブ...かな...。」

「......?何かあったの?」

「あ、いや! ただ、新婚生活についてちょっと考えていたんだ。 思ったより、恋愛の時とそんなに特別なことはないような気がして。」

(夫がちょっと怪しいような気がするけど...。)

「これ...自慢してるんでしょ?」

「えっ!そんなことないよ!?」

「お前ら...付き合ってるときからピンク色すぎて近寄りがたいって...でも、それ以外何もないってことは、...... お前らめっちゃ幸せってことじゃん...。」

「その、その程度だったの?」

「君たちだけ知らなかったんじゃない?」

「ああ...。」


確かに恋愛時代、私と夫は後悔のない恋愛をしていた。

お互いに対する感情に嘘がないことを確信したきっかけがあった以来、私たちはお互いに対する愛情を込めた気持ちを表現することに躊躇がなくなった。


「君たちは相変わらず変わってないね、羨ましいというか羨ましいというか......。」

「ミオが嫉妬することなんてあるわけないだろ? 心さえあればいつでも恋愛できるのに....」

「皆が皆、あんたのような幸運な子じゃないんだよ?」

「綺麗に生まれたミオも十分ラッキーだと思うよ!」

「うっ...!?」


ミオの顔に淡い紅潮が咲いた。


「そ、そんなに褒めてもらっても、全然嬉しくないよ!?」

「ふふ~、褒めてもらっていいんでしょう?」

「私、ひまりちゃん...結婚してドヤ顔になっちゃったよ......、完全におばさんじゃん?」

「おばさん...!?ミオ...美人って言ったのは取り消すわよ!」。


冗談で終わった会話だったが、結局、ご飯代はミオが払うことになった。

冗談とはいえ、おばさんと呼ぶのはやりすぎだったと、謝罪の意味を込めて。

いつも大人っぽく振る舞うミオ。

そして、逆にいつも子供のように振る舞う私。

私にとって、ミオはいつも憧れの存在であり、これからもこの事実は変わらないだろう。



私は帰りの電車に乗るために駅に向かった。

少しずつ沈みゆく空は昼の終わりを告げ、結局今日も夫の職業を明かすことに失敗した。

相次ぐ失敗を振り返ってため息をついたその時、見覚えのある後ろ姿が私の視線を捉えた。

慌ただしく走り去るのは、確かに夫だった。

きっと他の人かもしれない。

しかし、今日夫が着ていた服と同じ服を着て、同じ身長、同じ髪型の男を見る確率はどれくらいだろうか。

私は自分の考えに確信を持ち、そのまま彼の後を追った。

夫かもしれない人物の足跡が導いてくれたのは、あるショッピングモール。

あるアイスクリーム屋の前で立ち止まった男は、幸いにも夫だった。

夫はそこで誰かを待っているように見えた。

何度も時計を確認する彼は、どこか不安そうな表情を浮かべていた。

まるで獲物を狙う猛獣のように、私はじっと隠れて彼を見守った。


(今日こそは絶対に明かしてやるぞ!覚悟しろよ、お前!!)


その時、黒いスーツを着た男が夫に近づいてきた。

二人は会話を交わしたようだが、何かがおかしいのか、スーツ姿の男は首を横に振った。

夫はどうしようもなく、相手の肩を叩いた。

それは夫が謝るときのジェスチャー。

夫が何か間違いを犯したことは明らかだ。


(何間違えたんだ、危ないんじゃないの!?)


夫を疑っているくせに、彼が間違っているのではないかと心配で心臓がドキドキし始めた。

幸い、大したことはなく、大きな声は出なかった。

しかし、次の瞬間、男がカバンに手を入れた瞬間、私の不安感はまた垂直に上昇した。


(銃、銃でも取り出すの? それとも毒ガスか? 逃げなきゃいけないんじゃないの!? 危ないよ、あなた!!)


私の心配とは裏腹に、スーツ姿の男がカバンから取り出したのは、本くらいの大きさの紙袋だった。

それを受け取った夫の顔は、何故か顔色を変えていた。

私は状況が理解できなかったが、とりあえず彼らの反応を見守り続けた。

夫が封筒を封印していた紐をほどき、中身を確認するために封筒の中の何かを取り出そうとしたその時、相手の男性が夫の行動を阻止した。

首をかしげるスーツ姿の男性。

明らかに公共の場で公開するには極秘文書のようなものであるに違いない。


(私、何か危ないものを見たような気がする...とりあえず、後で言い訳できないように写真でも撮っておかないと...。)


私が懐から携帯電話を取り出そうとしたその瞬間、後ろから誰かが声をかけてきた。


「あの、すみません...。」


突然聞こえてきた見知らぬ男の声に驚いた私は悲鳴を上げてしまう。


「キャーあああああああ!!!!!!」


ショッピングモールに響き渡る私の悲鳴。

その瞬間、みんなの視線が私に集中した。

望まないスポットライトに恥ずかしさの極みに達した私は、素早く男に頭を下げて謝り、その場を立ち去った。

ショッピングモールから逃げるように走って出てきた今、私が何を謝ったのか思い出せない。

ただ覚えているのは、私が悲鳴を上げてしまったので、どうしようもなく困惑している店員の姿...。

そして急いで席を立つ夫とスーツ姿の男だった。


「ふぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 私は本当にバカだよ!!」


私は暗闇に包まれた渋谷の街を疾走しながら絶叫した。


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