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71.アンリとダンス

あけましておめでとうございます!

本年もどうぞよろしくお願い致します(^^)

戻りが早いわね。お手洗いだったのかしら。


殿下を目で追っていると、一人の令嬢に声をかけていた。艶やかな金色の髪と少し吊り目気味の目元に蜂蜜色の瞳をもつ華やかな顔立ちをした美少女が、喜色満面の顔で殿下のダンスの申し出に応えていた。


蜂蜜色の瞳……彼女がレリア・シュツェ侯爵令嬢のようね。なるほど、確かに殿下大好きオーラが全身から溢れ出ているわ。


「ほら、お兄さま」


リリアがアンリをせっつく。いつの間にかリリアたちも内緒話を終えていた。


演奏が終わると、アンリが少し緊張した様子で私に右腕を差し出した。


私はさっきの「アンリは除外される」というお兄様の言葉がまだ耳にこびりついていて、一瞬躊躇ってしまった。


「……ディアナ?」


不安そうなアンリの声に、はっとして思い直す。


婚姻関係になれないからって、今までの関係が崩れるわけじゃない。これからも今まで通り、友人として、もう一人の兄として接していけば良いわよね。


私は「何でもありませんわ」と微笑んでから、またお兄様に扇を預けてからアンリの腕に手を添えた。


アンリは私を空いている端の方にエスコートをした。ホールの中央にはユアン殿下とレリア嬢が向かっている。


そして新たな演奏と共に私達はステップを踏み出した。


ダンスって性格が出るわね。殿下は少し強引にリードするところがあったけど、自信に満ちていた。アンリは結構かっこつけな感じかと思っていたら意外にも慎重で丁寧だ。でも表情がいつもと違ってどことなく固い。


ふふ、普段は取り澄ました色気オバケのくせに、緊張しているのがわかるとなんだか可愛く見えるわ。


そう思ったのが顔に出ていたみたいで、アンリは恥ずかしいのか顔をほんのり赤く染めた。


おお、アンリが照れている。貴重な瞬間だわ。でもこういう顔を余裕をもって見れるということは、今までの心持ちに戻れたってことよね。


アンリが小さく咳払いをした。


「……ディアナ」


「? はい」


「……少し先にはなるが、今度の月祭、一緒に行かないか」


「月祭ですか」


月祭は前世でいうところの十五夜のお祭りのことだ。ウィルゴの月に満月の日を含めた3日間開催される。ちなみにその中日の満月の日は私の13歳の誕生日だ。毎年身内だけでパーティーをしている。


お兄様とリリアとアンリの3人で何度かお忍びで遊びに行ったことがあるけど、そういえばここ数年はなかったわね。真剣な眼差しで何を言うかと思えば、皆で遊びに行くお誘いだったとは。


「ええ、久しぶりに行きましょう。お兄様にもお伝えしておきますね」


私が微笑んで応えると、アンリが数秒の後はっとした顔をした。


「……言い方を間違えた。俺は、ディアナと2人で行きたい」


「え……?」


2人でって……


思わずアンリから目を逸らしてしまった。


いや、きっと他意はないはずよ。ただ友人としてのお誘いなんだから……あれ、でもたとえ友人でも相手は男性だわ。殿下の婚約者候補の1人である私は他の男性と2人で出かけても良いのかしら。


「……あの、それは2人で行っても大丈夫なのでしょうか。私は一応ですが殿下の婚約者候補なのですが……」


「候補なだけで婚約者ではないから問題ない。満月の日はディアナの誕生パーティーがあるだろう? だから初日か最終日にしようかと思っているんだが、どうだろうか……」


青藤の瞳が揺れている。


アンリがそう言うなら一緒に行っても大丈夫よね? 友人同士、お祭りに行くだけだし。私も気分転換になるし。さっきのお兄様に言われたことはもう気にしていないし……


「では変装して行かないとですね」


また気持ちを切り替えてそう言うと、アンリの頬が緩んだ。


「ありがとう。楽しみにしている」


アンリとのダンスが終わり、お兄様とリリアのところに戻ろうとすると、お兄様がリリアの他に2人の令嬢と何やら話をしていた。


誰かしら。お兄様のファン? あら、あの方は確か……


「素敵なダンスだったよ。はい、扇」


「ありがとうございます」


お兄様から扇を受け取ったとき、横からリリアが「ディアナさま、少しお兄さまをお借りするわね」と言って、ささっとアンリを少し離れた場所に連れ出した。仲が良いわね。


私はお兄様の前にいる令嬢2人に目を向けた。


1人は水色の瞳に栗色の髪をハーフアップにした、小柄で可愛らしいおっとりとした印象の令嬢で、もう1人は肩までおろした柔らかな金色の髪に青灰色の瞳をした賢そうな令嬢だ。背が高く、私と同じくらいある。


「フィリア嬢とは以前王妃様のお茶会の場で会ったことがあると思うけど、セシリア嬢は初めてだよね」


やっぱり小柄な方はフィリア嬢だった。お茶会でお兄様に見惚れていた子だわ。そしてもう1人が殿下の婚約者候補の1人のセシリア嬢か。王妃様のお茶会にはいなかったわね。


「初めまして、ヴィエルジュ辺境伯家のディアナと申します」


「初めまして、セシリア・フィシェです」


「フィリア様もお久しぶりです」


「お久しぶりですね」


「2人とは学院で同じクラスなんだ」


「そうでしたか」


お喋りしに来たって感じなのかな。そういえば2人共、ここにいて良いのかしら。婚約者候補だから殿下とのダンス、次はどちらかの番じゃない?


殿下を探すと、殿下はいろんな人に取り囲まれていた。


殿下ったらお2人をほっといて何をしているのかしら。


「……あの、失礼ですが、お2人ともこの後殿下とのダンスがあるのでは……」


出過ぎたことかなと思っていたので口調がしりすぼみになる。


フィリア嬢がクスリと笑った。


「私達は殿下の婚約者候補を既に辞退しておりますわ」


え、辞退……?

次回は1/6(月)に投稿致します。

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