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6.ものは試し

談話室から自室に戻り、私は一人ベッドの上に大の字で寝転がっていた。


洗礼式が終わったら魔法が学べることに浮足立っていたけれど、問題があることを思い出し、今猛烈に落ち着かない。


もし洗礼式で能力がバレたら……


脳裏に囚われの宇宙人の絵図が頭に浮かんだ。もちろん宇宙人は私。両サイドの人間は王家と……お母様はなんて言ってたっけ。確か魔塔? まあ、何か得体の知れない組織だ。


私はその絵図を振り落とすように頭を横に何度も振る。


あーもう、何でイケオジ神様ったら私に全属性なんてくれちゃったりしたのー!

はぁ、人間の都合もちょっと考えて欲しかった……


でもどうする? バレない方法何かあるかな……

そもそも洗礼式でどうやって自分の属性がわかるのかしら。ステータスに現れるだけ? こう、神官とかに直接属性を告げられる感じ? それだと確実に詰むわ。


属性を魔法で隠すことができれば一番良いと思うんだけど、私まだ魔法が使えないしなぁ……

てか私って本当に魔力あるのかな。

確かお父様が子供の時自分で魔力感知をしたって話だったよね。私にもできるかな……


ものは試しと私は目を閉じた。

体の力を抜いて雑念を取り払い心を無にする。

体の中に血液が流れているように、魔力が体の中を流れているイメージをする。


しばらくそうしていると、だんだんと体がぽかぽかしてきた。

金色の光が体の中を何度も巡っている感覚がする。


これ、これよ! 女神様にもらったやつ! 意識を向ければちゃんとあるじゃん!


私は目を開けて、ベッドから起き上がった。


まずは本当に全属性なのか確かめてみよう。


さっきお兄様が見せてくれた水の球が頭の中に浮かぶ。体の中で右の手の平にあの金色の光を集める。

すると、青い魔法陣が浮かび上がり、イメージ通り野球ボール程の水の球が出てきた。


できちゃった……


私はしばらく水の球を見つめた。


これ、どうやって止めるのかしら。魔力を引っ込めれば良いのかな。


魔力を引っ込めると水の球は魔法陣ごと消えた。


お、おぉ……! できた……やった、魔法使えた! 記念すべき私の初魔法! いやっふー!!


私は嬉しすぎてベッドの上をのたうち回った。

誰かが来ないように頑張って声は出さないようにした。


一頻(ひとしき)り喜びを噛み締めた後、次は風属性をやってみることにした。


風か。風ね。


ちらりとレースカーテンを見る。シェリーが閉めたのか窓は閉じていた。

私は春の暖かなそよ風をイメージして、レースカーテンの方に右手を向けた。

魔力を込めると、今度は緑色の魔法陣が浮かび上がり、微風がレースカーテンをふわりとなびかせた。


(わず)かに顔がニヤけた。

これで私には水属性と風属性があることがわかった。残りは火と土。

火魔法を室内でやるのは危ないけど、小さければ大丈夫かなと思い、人差し指に微量の魔力を込め、指先に火が灯るイメージをする。


指先にほんの少しの魔力を込めるのは難しくて少し時間がかかった。

しばらくして指先に小さな赤い魔法陣が現れ、ぽっと小さな火が灯った。


はは、火属性も確定、と。ちょっと難しかったから、魔力の強弱と体のどの部分にも素早く魔力を操作する練習もしないと。


さて、最後は土属性だけど、何をイメージしよう。某忍者漫画の土遁的な? それとも植物系? でも確かめるのに庭にでないといけないよね。護衛がいるから一人でこっそりできないし……あ、そうだ!


私は鏡台の引き出しから小さな巾着袋を取り出した。袋を開けて手の平に中身を乗せる。


それは青い薔薇の種だった。


うちの屋敷の庭園には青薔薇園がある。もう見頃は終わってしまって今は咲いてないけど、春には無数の青薔薇が咲き誇り、庭園が青一色になる。まるで花の海の中にいるようでそれはもう幻想的で、清廉(せいれん)な香りが辺り一帯に広がるのだ。

青薔薇はお父様の瞳の色に似ていて、“夜明けの青”という意味で別名アルバローザというそうだ。なんでもお父様のお祖母様が、お父様が生まれた時その瞳の色に感嘆して品種改良をしたんだとか。

春に青薔薇園を散歩していた時、庭師のおじさんがそのことを教えてくれて、その時にこの種をもらったのを思い出したのだ。


ベッドに座り、右の手の平にアルバローザの種を乗せ、芽が出るイメージをする。

葉の形も茎も散歩中よく観察していたからイメージしやすい。


魔力を込めると黄色の魔法陣が現れた。

すると、種からひゅるひゅる、と黄緑色の芽が3センチ程出てきた。


お、成功した! て、あれ……?


ちょっと頭がくらくらしてくる。私は額を押さえ、後ろにぽすっと倒れた。


な、なんかどっと疲れが…… しかもめちゃくちゃ眠い……てかやっぱり、本当に、全属性、あ……る……

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