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5.全属性はいないようです

朝食をお終えた後、お父様は仕事に出かけて行った。

私は今お母様とお兄様と1階の談話室にいる。


柔らかな座り心地の良い高級感漂うソファに、私を真ん中にして3人並んで座っている。

侍女がテーブルに食後のお茶を用意して退出した。


「これがお母様のステータス……」


お母様が「ステータス」と唱えたら、青い画面が空中に浮かんでお母様の目の前に現れた。

摩訶不思議な現象にさっきまでの不安はどこか行き、私はテンションが上った。


ステータスを覗き込むと、そこには名前、生年月日、属性、スキルが書かれ、魔力値と体力値が数字で表されていた。

文字はたぶんこの国の言語。読めるのはきっと異世界あるあるの転生チートってやつね。


でもお母様は私がまだ十分に読めないだろうからと、内容を読んでくれる。


お母様の名前はエレアーナ。結婚してヴィエルジュになっているけど、その前はヴァーゲっていう名字が書いてある。年齢は28歳。アラサーに全然見えない若々しいお母様は社交界一の才色兼備と言われている。

私と同じゆるふわの髪型でモデルのように背が高くスタイルも良い。気品に満ちて優しい眼差しは女神様のようだ。窓から差し込む陽光が後光に見えるのは気の所為ではない。


お母様の属性、水と土なんだ。なんか、ぽいわ。豊穣の女神っぽいもん。スキルは調合。……何か薬とか作れるのかしら。

てかこの15000ていう魔力値は多いのかな、少ないのかな。


「この魔力値って多いのですか?」


「普通より多いくらいかしら。魔法師だともっと多いわよ。魔塔主である魔法師団長様なんて10万はあるって噂よ」


まじか。それはすごいな。


次はお兄様のステータスを見せてもらった。

お兄様の属性は、水、風、土の三属性だ。スキルは身体強化と物理攻撃耐性。え、めっちゃいいじゃん!

魔力値は7500、体力値は8300? 体力値、お母様より多いんだけど。まだ7歳だよね?


お兄様が私の疑問を読み取って教えてくれた。


「洗礼式の後からうちの騎士団に混じって鍛錬をしているからね。最初は4000もなかったよ。でも父上からは成人までに騎士の平均の体力値の倍は持てって言われているから全然まだまだだよ」


「倍ってどれくらい?」


「3万くらい」


げっ! お父様、鬼畜……


「毎日の頑張りがちゃんと数字に表れているのね。すごいわ、ノア」


「……」


お兄様がそっぽを向いた。

よく見ると、お兄様の耳が少し赤くなっていた。お兄様かわいい。


「ではお母様もお兄様も魔法が使えるのですか?」


私は金色の瞳をキラキラさせた。


「ええ」


「使えるよ。僕は剣術の方が好きだから魔法はまだ初級魔法しか使えないけど。魔力値も洗礼式からまだそんなに増えてないんだ」


お兄様はそう言った後、左の手の平を上に向けて何やら詠唱した。

すると、手の平の上に青い魔法陣が現れ、野球ボールくらいの水の球が出てきた。


おお! 魔法だ! すごい、本当にあるんだ!


私の顔がより一層輝く。


「はは、ディアナは魔法が好きみたいだね」


そりゃそうよ! ハ◯ー・◯ッター何回観たことか!


「お兄様、どうやって出してるの?」


「簡単に言うと、魔力を手の平に込めながら出したい魔法の詠唱をすればできるよ」


私は自分の手の平を見つめた。


魔力……女神様に与えられた神力があるはずなんだけど、もらった時に感じたあの熱い金色の光が今は全然感じられないな。


私が困った顔をしていたからか、お母様が、「洗礼式で魔力が感じられるようになるから大丈夫よ」と言って、私の髪を()でた。


「そうなのですか?」


「なかには、洗礼式前に自分の中に流れる魔力を感知して魔法を使用した子供もいるわ。極稀だけど、あなたたちのお父様がそうよ」


まじかお父様、やば。

でもなるほど、魔力感知ができるようになれば、自分の属性の魔法が使えるということね。


「ちなみにお父様の属性はなんですか?」


「火と水と風よ。詳しい内容を知りたければ後でお父様に見せてもらって。ステータスは秘されるのが普通だから漏らさないように気をつけてね」


意外にもお父様、三属性なんだ。軍の総長だからてっきり全属性くらいあるのかと。


「わかりました。あともう一つ聞きたいんですけど、この国の人は二属性とか三属性が多いのですか?全属性の人は誰がいるんですか?」


「王家と公爵家は三属性もちがほとんどだけど、それ以外の貴族と一般人は一属性と二属性が多いわね。全属性は過去に一人もいなかったと思うわ。もしいたら絶対に有名になっているでしょうし、魔塔主になるか、王家と婚姻を結ぶかするもの」


私は聞いているうちにだんだんと冷や汗が出てきた。


「どうかした? ディアナ」


隣に座るお兄様に頬をつつかれる。

頭の中がパニックを引き起こしている。


……私全属性なんだけど。しかも月属性まであるし。なんならスキルもチート級のやつなんだけど……


食事の時に感じた不安が一気に膨れ上がった。


全属性が過去に一人もいないって、え、それじゃあ私が最初の人になるの? 全属性すらいないなら月属性ってもっとやばいよね?

しかもこんな見た目でさらにチートスキル持ち……洗礼式で明るみになったら魔力を増やすどころじゃなくなるのでは? えっ、それじゃあ冒険者への道が遠くならない? ただでさえ貴族に転生して遠のいているのに。……いや、それよりもまず物珍しさで誘拐される可能性も! 私が敷地内を散歩する時必ず護衛が二人付いてるからあまり心配いらないかもしれないけど、もし誘拐されたら家族に迷惑がかかっちゃう! 絶対にバレるわけにはいかない! でもどうすれば……


私は色々と悟られないよう平常心をなんとか取り戻し、蒼白の顔を引っ込めにこりと微笑んだ。


「大丈夫よ、お兄様。お話が難しいから考え込んでいたの」


「やっぱり難しかったわよね。でもディアナはとても理解力があると思うわ。私とノアの説明にしっかり受け答えできているから、お母様びっくりしちゃった」


「僕もびっくりしたよ」


やばっ、私今4歳児ってこと忘れてた!


「ノアも賢いし、二人共さすがね。洗礼式が終わったらディアナにも家庭教師がつくから、魔法のことをちゃんと学べるようになるわよ」


魔法が学べる!? わーい、やっほーい!


能力バレは色々とまずいと思うものの、その問題は一旦置いて、私は憧れの魔法が学べることに狂喜した。

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