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45.Aランク魔獣の討伐

森の中に入って10分。


不意に魔力を感じた。禍々しくて、それも大きな。この辺りはまだCランク区域のはずなのに、それ以上のランクの魔獣の魔力だ。やっぱり結界が綻び始めて、尚且つ黒竜も現れた影響で入口に近い低ランク区域に高ランクの魔獣が集まって来ているのは確かなようだ。


私は魔力感知をして魔獣がいる方向に足を向けた。魔力を遮断した状態で近づく。


茂みからそっと顔を出すと、50m程先に魔獣がいた。


あれは……! ブルーホーンディア! やったラッキー!


キョロキョロと顔を動かしているけどこちらには気づいていない。A ランクの魔獣で鹿のようなトナカイのような姿をしていて、大きさは高さで言うと優に3mは超えている。巨体を支える足は太く、枝分かれした角は魔石でできていて神秘的な青色をしており、その特性から水属性魔法を使う。赤い魔石だと属性は火になり、名前もレッドホーンディアと、魔石の色によって属性と名前が変わる。


この国には魔石が採れる鉱山はないけど、魔獣から採れることもある。ただ突然変異のため魔石を持つ魔獣は極稀で、希少性が高い。だから素材も高く売れる。でも魔石を持たないノーマルホーンディアは属性もないのでC ランクと下がり、素材の価値も下がる。他にも普通のゴブリンだとEランクだけど、稀に魔石の角を生やしたゴブリンもいたりして、それだと2つランクが上がり素材の値段も上がる。


なんで私がこんな詳しいかというと、お父様とローレンの森に行ったからというのもあるけど、それとは別に屋敷の書庫にある魔獣図鑑で勉強したからだ。特性が書いてあるから討伐の参考になるしね。


それにしても初っ端で魔石持ちに出会うなんて、私ったらツイてるわ。


私は音を立てないようにそぉっとその場を離れ、戦いやすい場所を探した。


近くに開けた場所を見つけ、私はそこのやや中央に立って遮断していた魔力を解放した。


するとまもなく木々の向こうからドスドスと地面を駆ける音が聞こえた。さっきブルーホーンディアを見つけた方向からだ。


魔獣は魔力に敏感だから、魔力の遮断ができると、こうやって自分が戦いやすい場所におびき寄せることができるから楽だわ。この方法はお父様から教わったのよね。遮断ができない人用に魔力遮断の魔道具も売っているみたいだけど。


程なくして木々をなぎ倒しながらドーンっと勢いよくブルーホーンディアが現れた。耳が痛くなるような甲高い鳴き声。興奮した状態だ。


ブルーホーンディアが獰猛な赤い目で私を見つけるとすぐに突進してきた。地響きがすごい。私は身体強化で避けると、巨木の枝のような青い角から無数の氷の(つぶて)を噴射した。


Aランクを相手にするのは初めてだけど、お父様との戦闘訓練のおかげかだいぶ自分に自信がついている。


私は走りながら身体強化で避け続け、攻撃の隙を探る。なるべく魔力は温存したいからね。


誰が見ているかわからないので、私が使えるのは登録した火属性と水属性だけだ。


攻撃の元となる角を真っ先に切り落としたいところだけど、こんなに連射されたら近づけないわね。


攻めあぐねていると、ブルーホーンディアが連射の速度を上げてきた。


このまま避け続けてたら体力が先になくなっちゃうか。


氷の壁(グラキエス)


5m級の分厚い氷の壁を出し、向かってきた無数の氷の礫を遮る。


地獄炎(インフェルノ)


氷の礫が壁に当たっている隙にブルーホーンディアに上級火属性魔法を放つ。


ブルーホーンディアが氷魔法で灼熱の炎を防いでいる内に、私はもう片方の手で別の魔法を出した。


蒼焔(アスール)


蒼い炎がブルーホーンディアの体を焼く。魔法抵抗がある種の割に効いているらしく、甲高い声を上げてもがき苦しんでいる。氷魔法の防御が弱くなった。


威力を上げればいけるかもしれない。


とどめで威力を上げ、両手で2種類の火魔法を繰り出す。


そして2色の炎で焼かれたブルーホーンディアが、ドシンっと音を立てて倒れた。


わずかな痙攣(けいれん)のあと赤い目が濁ったのを確かめると、私はふう、と緊張を解いた。魔獣は絶命すると赤い目に光がなくなり濁るようになるのだ。


私は自分の右の手のひらを見つめた。


私、着実に強くなってる……Aランクを一人で倒せたわ。


この調子で目標に向けて頑張ろうと、右手を握り締めた。


さて、素材素材っと。


私は魔石の角だけを回収しようと空間から剣を出し、角を支えながら角の付け根部分を斬る。


う、ちょっと焦げ臭いけど我慢我慢……


オリハルコン製の剣で難なく2本の角を斬り、2本とも収納魔法でしまった。あと素材となるものは皮だけど、魔法でほとんど焼けているので売り物にならないし、無事な部分もあるけど皮をはぐとかあまりやりたくないからそのまま残しておこう。通りすがりの冒険者がもしかしたらラッキーと思って皮を持っていくかも。でも魔獣の死体はある程度時間が経てば黒い粒子となって消えていく。ランクごとでその時間は違うけど、この魔獣はAランクで大きいから消えるまでだいたい30分くらいかな。


私はMPポーションとHPポーションを1本ずつ飲み、次の魔獣を探しにその場を後にした。

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