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幕間(5)―1

僕とディアナが王都の屋敷に移ってから、父上の時間がある時に模擬戦闘を行なうようになった。


ディアナと父上の魔法の打ち合いは、二人共無詠唱でやるからスピード感もあって、魔力が多い者同士威力も凄まじかった。その迫力見たさに模擬戦闘がある日はいつも屋敷の裏にある訓練場に騎士や使用人たちが集まっていた。


ディアナの模擬戦闘が終われば、父上は僕の相手もしてくれた。でも僕はいつも父上に手加減されている。


僕は剣術が好きだ。母上に似ているため幼い頃から天使のようだと周りからちやほやされる見た目でも、体を動かすのが好きだったから自ずと魔法よりも剣技を身につける方が性に合っていた。


それに、僕は早々に悟ってもいた。父上のようにはなれないのだと。


父上はこの国の軍を率いる総長だ。重責が肩にのしかかっているというのに、常に冷静沈着で泰然としていて焦ったり慌てた様子など見たこともない。そしてSランク魔獣も難なく討伐してしまう強者。剣術と魔法両方に秀でた才能の持ち主。類まれな美貌も相まって大陸中に父上の名が知れ渡っているほど、ルナヴィア王国最強の男。だからこそ国軍の総長の地位に相応しい。誰もが羨む存在が自分の父親であることはもの凄く自慢に思えたし、偉大な父上のことを尊敬もしている。


でも父上のいる場所が高すぎる。父上はヴィエルジュ家歴代最強の当主だ。この国は実力主義だからたとえ第一子であっても次期当主にふさわしくないと当主が判断すれば当主になれない。もしかしたらディアナの方がふさわしければ当主になるかもしれないし、そうでないなら他の家から優秀な者を養子にして当主に据える可能性だってある。


だから僕は人一倍努力しなければならない。もちろん当主になりたいというのもあるけど一番は父上に認められたいから。父上のようになれなくても、最強の父上に認められたらもう何だって大丈夫な気さえすると思ったから。


父上は剣術だけでなく、魔法も秀でている。でも僕は平均的に見れば魔力は多いけど、詠唱をする暇があったら魔力を纏わせた剣で対応できると思ってしまうから中々魔法を使おうとは思わなかった。父上は無詠唱だから戦闘時に両方できるのであって、父上と魔法師団長以外は剣か魔法かどちらかしか選べないのだ。


ディアナは昔から魔力が途轍もなく多かった。洗礼式もまだなのに、ある日突然ディアナから膨大な魔力を感じて驚いた。


魔力感知は自分の洗礼式の後から自ずとできるようになっていた。その時父上の魔力を感知して、その莫大さに茫然としたことを覚えている。父上のようにはなれないと悟ったきっかけだ。


でもディアナの魔力を感知したとき、驚きと同時に父上に感じたような途方もなさも感じていた。認めたくなくて誰にも言わなかった。


ディアナは生まれたときから異質だった。家族の誰とも違う金色の瞳がそう思わせた。月の女神への信仰が厚いこの国で最も重要な祭事である月祭の満月の日に、月の女神と同じ髪色と瞳を持ってディアナは生まれた。その当時はとても神秘的で天使のようだとただ思っていたけど、成長して物事の理解が備わってきた時に母上から「ディアナの容姿について決して誰にも話してはいけない」と教えられた。


理由はディアナが「女神の化身」に間違われないようにするためだと。「女神の化身」のことは絵本で知っていたし、母上が「誰かに話したらディアナがどこか遠くへ行ってしまうかもしれない」と悲しい顔をしていたから、僕は約束を守って誰にもディアナのことを話さなかった。それに屋敷の誰もがディアナを表に出させない空気を醸し出していたから尚更だった。


甘えん坊のディアナはよく母上や僕にくっついていた。屋敷に籠の鳥のように閉じ込められている妹を哀れに思いながらも、ビスクドールのように美しくて愛らしい妹を兄として何者からも守っていこうと思った。


でもディアナがもうすぐ5歳になろうとする時、雰囲気が変わった。


話し方がいきなり流暢(りゅうちょう)になったし、色々知りたがるし、甘えたがりだったのが急に大人びた感じになった。


でも僕は、女の子は早々にマセるのだと書物で知っていたから、もうすぐ5歳になるディアナもお姉さんぶりたくなったのだと、特に気にしなかった。

長くなるので2つに分けました。

続けて投稿しますね。

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