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3.異世界に転生します

魔力を増やすには、戦闘が一番手っ取り早い方法だと思うんだけど、そうなるとやっぱり魔獣の討伐だよね。

討伐といえば冒険者。ということは、転生したら冒険者になれば良いんじゃない? 魔力も上がるしお金も稼げて一石二鳥だし!

ふふ、まさか私が冒険者って、漫画みたいでちょっとワクワクしてきた。


「女神様、私頑張ります! 女神様の希望に応えられるかわからないけど、きっと浄化魔法を使えるようになって、弟さんを助けます!」


女神様の金色の瞳から涙が溢れ出す。

まるで夜風に揺れる泉に映る満月のよう。


「ありがとう、美月。やっと……やっとこの時が……」


泣く姿まで美しすぎて見惚れちゃうわ。


「ふふ、泣いている場合ではないわね。では、あなたに私の神力を授けます。私の前に立って」


女神様は涙を拭きながら椅子から立ち上がった。

私も立ち上がり、女神様の前に移動する。


「目を閉じて。ちょっと失礼するわね」


言われた通り目を閉じると、少しして私の額に何か柔らかいものが触れた。

ふんわりと花の香りがする。


その瞬間、体の中に熱い何かが駆け巡った。目を閉じているのにそれが金色の光を帯びているのがわかる。


「できた……これであなたは満月の神力を持つ者となったわ。魔法属性は月属性よ」


「月属性……」


私は自分の身体を眺めた。金色に光っている。


「上手くいったようだな」


何もないところからいきなり現れたのは、豊かな金髪にオパールのような様々な色彩の瞳をもつ、精悍(せいかん)な体つきのどえらいイケオジだった。


この人も神様だ。だってオーラが半端ないもの。


「オルベリアン……ええ、本当に良かった」


オルベリアンていうんだ。何の神様だろ。


女神様が安心した表情を浮かべる。弟さんをすごく大切に思っていることがわかった。

でもなんで弟さんは人間界にいるのかな。


イケオジ神様が女神様の隣に立つ。


「人間よ、私の力も授けよう。ノヴァがああなったのは私の責任でもある」


「ノヴァ?」


「弟の名前よ」


ノヴァという名前の黒竜……なにそれ益々かっこいい。


「私は創造の神オルベリアン。そなたに便利なスキルをあげよう」


にこりと微笑んでイケオジ神様は私の頭に手を置いた。


「ルナみたいに私が口づけるとセクハラになるからな」と言うと、手から虹色の光が溢れ出た。


さっきのやっぱり口づけだったんだ。今更ちょっとドキドキしてきたわ。ていうかイケオジ神様、セクハラなんて言葉よく知っているわね。そっちの方に驚いたわ。


「これでよし。ついでに四大属性全てに適性をもつようにしといた。月属性を含めたら全部で五つだな。ふははは」


「まぁ! ありがとうございます、オルベリアン! 良かったわね、美月」


二人共はしゃいでいるけど、私の顔は引きつっていた。


四大属性って……漫画やアニメの知識でちょっとは知ってるけど、きっとあれだよね。


「ああ、そなたの世界には魔法がないんだったな。四大属性は火・水・風・土の魔法属性のことだ。そなたはこれら全て使える。そしてスキルは魔法創造と身体強化を与えた。魔法創造は無詠唱で魔法を発動できる上にオリジナルの魔法を創り出すことができる何とも便利なスキルだ」


何だそのスキルは。チートか。さすが異世界転生。


私が呆然絶句していると、イケオジ神様が眉尻を下げ悲しげな顔をした。


「せっかくの好機だからな。ルナヴィアの人間には申し訳ないことをした。ノヴァにも」


女神様が(うつむ)く。


「美月といったか。そなたの元いた世界の創造神は私の姉なのだが、突然『間違えたー!』と言って私に泣きついてきてな。だがそなたには悪いが私にはそれが僥倖(ぎょうこう)だった。界を渡った魂には神々の力を授けやすい。そなたには一国の命運を任せることになってすまないと思っている。我らは見守ることしかできないが、そなたの幸運を常に祈っているぞ」


しみじみとした雰囲気の中でちょっとツッコミたいところがあったけど、元の世界については不思議と何の未練もなかった。孤独だったし、ただ日々を淡々と生きているだけだったから。

こっちの世界に転生すれば確かに国の命運がかかった重大な役目を背負うことになる。正直何で私がって、自分にできるのかって不安でいっぱいだ。

でも何か一つ芯が通るようなことを成し遂げれば、心にぽっかり空いた穴を埋められるのかもしれないと、それが国の命運を背負うことになっても、私は自分を変えるために頑張ろうと思った。

あと単純に異世界に転生するっていうワクワク感もある。


「ありがとございます、イケ……オルベリアン様、ルナ様。私、精一杯頑張ります」


「私達はいつもあなたを見守っているわ。――ウィルゴ、あとはお願いね」


「お任せを、ルナ様」


いつの間にか女神様の後ろにこれまた超絶美人な女性がいた。

麦穂のようなふわふわの長い髪に木漏れ日で輝く新緑色の瞳をしている。


周りを見ると他にも女性や男性がいた。12人いて皆驚く程の美形揃いだ。中には動物を擬人化したような神様もいる。


「ウィルゴはノヴァがいるランデル山脈の近くにある領地を守護しているの。あなたがこれから転生する先がその領地にいるから、ウィルゴに案内してもらってね」


「ちぇー、ずるいよなぁ。俺んとこもノヴァ様のとこから近いってのによぉ」


「それを言うなら私のところもそうですよ」


ライオンの(たてがみ)みたいな髪型に橙色の猫目をした神様と、紫色の艷やかな長髪と同色の瞳をしたインテリ風な神様が何やら文句を言っている。


「うるさいわよレオ、リブラ」


「騒がしくてごめんなさいね、美月。ここにいる12柱は私の眷属神なの」


そうなんだ。でもなんかどこかで見覚えがあるような……


「美月、準備は良いか。これからそなたを転生させる」


「あ、はい。よろしくお願いします」


「行ってらっしゃい、美月」


「あ、ルナ様! その……お茶、ご馳走様でした! 行ってきます!」


女神様が優しく微笑んだ。


「さぁ、目を閉じなさい」


イケオジ神様はそう言って私に向かって手をかざした。


私は目を閉じた。

これから始まる私の第2の人生に胸を踊らせて。

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