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184.お兄様の婚約パーティー(2)

大変遅くなり申し訳ありませんm(_ _)m

「さて、できましたよ」


「ありがとう、シェリー」


鏡の前で自身の顔と髪型をよく見るため首を左右に振る。鏡越しのシェリーはとても満足げだ。


私はお父様に顔が似ているため実年齢より大人っぽく見えるから普段のメイクは薄くしてもらっているんだけど、今回はバッチリメイクしているので、なんかもう本当に13歳?っていう雰囲気が顔に出ていた。アルバローザの妖精姫が成熟した感じ。


16,7歳くらいに見えるかしら。これならノヴァ様と並んでも釣り合いが取れる……?


ドレス全体を見ようと鏡台の椅子から立ち上がり、姿見の前に立ってくるりと回る。侍女たちからほう、というため息が漏れた。


今日の私の衣装は濃紺のフィッシュテールドレスでシフォンのドレープが幾重も重なっている大人可愛いデザインだ。小さなダイヤが満天の星のようにドレス全体に散りばめられていて動く度に輝きが増す。イメージとしては「夜の星空」だ。


フィッシュテールは前の世界ではよくあったけれど、この国では結構斬新なデザインみたいで、(2号が)提案した時はお母様も馴染みの服飾デザイナーさんも驚いていた。でも脚は見えるけど膝は隠れているし、私が着れば流行間違いなしということで2人ともノリノリで他にも色々アイディアを出してくれた。


上半身は体のラインが出るようにぴったりとしていてシアー素材がデコルテと腕を覆っている。脚を出す分、胸元と腕は隠すことでバランスを取った形だ。髪型はいつもよりもふわふわウェーブにしてもらって、ドレスと同じ色と素材の太めのカチューシャを頭につけている。カチューシャ全体にも小さなダイヤが星みたいに散りばめられ、片側にはアルバローザをモチーフにしたアウロラの宝石が1つ付き、ヴィエルジュ家のシンボルとして輝きを放っている。


首元にはラウンドカットされたアウロラの宝石と金色の魔石をあしらったチョーカー。耳にも同型のピアスをつけている。前日に用意されたチョーカーとピアスの一部の宝石を外して、浮遊魔法を解除した風竜の魔石を砕いて欠片を取り付け、魔力隠蔽とスキル無効の魔法を付与していたのだ。もちろん私に宝石加工技術の腕はないので魔法創造スキルを使って宝石加工の魔法を創り実行した。安心してパーティーに出るためにはやれることはやるわ。


――コンコン


扉が鳴る。


フィシェ侯爵家が見えたから使用人が呼びに来たのかな。


シェリーが開けに行くと、声を聞いて私は驚いた。


「失礼。夫人にディアナ嬢を呼びに行って欲しいと言われて来たんだが、まだ支度中だろうか」


なんとノヴァ様が私を迎えに来た。


「支度は終えておりますわ。――ディアナ様、リュトヴィッツ卿がお見えですよ」


少し弾んだ声で言うシェリーに言われる前に、自然と脚が扉の方に向かっていた。


そしてノヴァ様と向かい合うと、息を呑んだ。


全身黒に包まれた美貌の貴公子がそこにいた。首元には瞳の色と合わせた瑠璃紺のシルクのタイ。その結び目に金色の魔石とブラックプラチナの細工のブローチ。ブローチの金が浮かないようにかジャケットの襟や袖口には金糸でさりげなくあしらわれた刺繍が施してある。貴族の正装がだいぶ板についていて悶絶する程素晴らしいと思うと同時に、大勢の貴族の中で一人異質な輝きを放って皆の注目を集めてしまうのを恐れた。


「……」


「……」


お互い無言で見つめ合う。いつもよりヒールの高い靴を履いているので顔がいつもより近い高さにある。


そして何故かノヴァ様も目を見開いて固まっていた。


シェリーが空気を読んだのか、そっとこの場を離れたのが気配でわかった。


「星月夜の……」


ノヴァ様が何かをぼそりと呟いた。聞き取れなかったので「え?」と聞き返す。


「……いや」


手で口元を覆い、目線を逸らす。その仕草で何を言いかけたのか少し気になった。


もしかして、あまり似合っていなくて言葉を失った、とか?  それとも脚が出ているのが衝撃的だった?


咄嗟に脚を隠したくなり、膝辺りのドレスの裾を撫でた。そんなことしても全然意味ないのに。


私は恐る恐る尋ねた。


「あの……どうでしょうか」


「……ん?」


自信なさげに手を前で組む。


私が何を言わんとしているのか雰囲気で悟ったノヴァ様は私をしばし眺め、そして目を合わせた。


「とても似合っている。思わず見惚れてしまった程に……」


「っ……! ありがとう、ございます……」


語尾がしりすぼみになり、顔が俯く。


見惚れてしまったって……ホントに……? どうしよう、めちゃくちゃ嬉しい……!


しかも少し微笑んで言うものだから、私は心臓が押し潰されそうだった。今まで色んな人に容姿のことを称賛されてきたけど、好きな人に褒めてもらうのはこんなにも破壊力があるのかと、改めて知った。


やばい、顔が熱いわ……今顔を上げたら絶対顔が赤いのがバレてしまう……


すると、気を利かせていて退いていたはずのシェリーがそっと近づいて私に扇を渡してくれた。さすがシェリー。


さっと扇を開いて赤くなっているだろう顔を半分程隠し、やっとのことで顔を上げることができた。


と思ったら、ノヴァ様がもの凄く柔らかな表情で私を見ていたので、私は再び心臓を撃ち抜かれるハメになった。


しばらくモジモジしていてふと我に返り気付く。お母様がノヴァ様を遣って呼びに来たということは、侯爵家がそろそろ到着するからだと。


あとこの心臓が痛い状況にもう耐えられなくなったので、「も、もう、お見えになりましたか?」と正常とは言い難い声音で尋ねた。


「ん? ああ、そうだった。フィシェ侯爵家がもうすぐ到着するそうだ」


「そうですか。では……行きましょうか」


私はうふふ顔のシェリーと侍女たちに見送られてノヴァ様の後に続いて部屋の扉を出た。


すると、ノヴァ様が廊下を進む途中で不意に立ち止まる。


「……? どうしました?」


訝しんでいると、ノヴァ様が後ろにいる私を少し振り返って右腕を差し出した。


その動作に驚く。


「エスコートする」


「え……あ、ありがとうございます……」


私は緊張による震えを抑えながら、ノヴァ様の腕に左手を添えた。


そして再び階下に向かって歩き出す。


うぅぅ、また心臓が……


熱くなっていく顔を見られたくなくて再び扇で顔を隠す。


階段に差し掛かり、ゆっくりと降りていく。3階から1階に降りる間、このバレバレな顔を抑えるのに私は必死だった。

次回は1/16(金)に投稿致します。

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