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183.お兄様の婚約パーティー(1)

ピスケスの月の半ば。いよいよお兄様の婚約披露パーティーの日がやってきた。


開始は日が沈み出す夕方。


今私は支度のため、私室の鏡台に座ってシェリーにメイクと髪を整えてもらっているところだ。


本当はこの日までにローレンの森の魔獣を浄化しておきたかったんだけど、転移の魔法陣の解説を書き写しに魔塔に行ったり、ノヴァ様と完成した魔道具を使って工程を教えながら大豆を醤油や味噌、豆腐などの食品に加工していったり、加工した食品を使って様々な和食を試作してみたりと、ここ2週間とにかく忙しかったから申し訳ないけど浄化どころじゃなかった。あとちょっとこの間のヘレネのこともあってしばらく浄化の日取りの間を空けておきたかったていうのもある。


試作の過程で色々と味見をしていた際、味に感動した我が家のシェフのベネットが1枠だけと言わずに2枠出そうとノリノリで提案してくれた。革新的な料理だから本当は3も4も出したいところだけど時間と労力がさすがに足りないということだったため、2枠分和の料理を出せることになったわ。


試行錯誤して最終的に決まったのは、一つは豆腐の味噌汁。これは私がただ飲みたいだけで押し通したやつ。もちろんおにぎりのセットだ。


おにぎりは具を3種類用意し、おかか(カツオに似たボニットという魚で作った)と昆布(この国ではラミネールという)、ツナマヨ(マグロに似たトンノという魚で作った)で日本では代表的な具だ。お刺身が食べた過ぎて南部の漁港からいろんな魚を取り寄せたんだけど、生魚はやっぱり抵抗があるようで急遽おにぎりの具に活用したのだ。あれね、転移の魔道具が完成したら新鮮な魚をいつでも届けられるようになるから、その時に生魚の普及に専念すれば良い。


お味噌汁はボニットで出汁をとった。その出汁に作った味噌を混ぜて試作を食べた時は13、4年ぶりのお味噌汁にもう滂沱の涙を流したよね。ハルトさんも絶対泣くと思う。


お父様は一口飲んでしばらく固まっていたわ。それで「朝食は明日からこれを出すように」ってベネットに言ってて、家族皆がそれに賛同した。やっほーい!


もう一つは万が一味噌汁がルナヴィアの貴族のお口に合わなかった場合に備え、茸の醤油バターパスタにした。


パスタはこの国では主要の料理なので貴族にも馴染みがある。それにエルガファルで穫れた小麦を使っているのと、そこに新戦力として大豆加工調味料も加わることでエルガファルの知名度、大豆の宣伝にもなる和洋、いや和ルナとなる一品だ。これも我が家では絶賛の嵐だった。ふふふん。


エルガファルの大豆の生産地の近くに建設中の加工工場がもうすぐ完成するらしい。また、ノヴァ様はエルガファルの中心部に大豆調味料のお店を開くことも進めており、王都でもお店を構えようと物件を探しているところだそうだ。着実に和食の土台が出来上がってきていると実感した。あとはお兄様の婚約パーティーで評価を得るだけ。我が家で好評価なら自信がある。


お兄様の婚約パーティー、もとい大豆加工食品の品評会にユアン王太子殿下が出席するから殿下から高評価を頂ければ一気に大豆がエルガファルブランドとしてのし上がる。そうなれば、エルガファルを治めるノヴァ様の地位も上がり、マクファーレン家に負けない家格に押し上げられるという算段だ。


ただ、家格が上がったところでノヴァ様が「結婚しない」を条件にリュトヴィッツ家の養子になっている以上私の婚約者候補にすることは不可能に近い。でも何もしないで妥協して諦めるよりかは、何かをして少しでも可能性を見出したかった。たとえ何も起きなかったとしても領地の活性化にも繋がるならやって損はない。強がりだけど。


それともう一つ。


なんとびっくり、今夜のパーティーにSランク魔法使いであるミヅキも招待されたのだ。しかもユアン王太子殿下の依頼で。


……いや、は? 「ミヅキ」って、私じゃん。どうしてそうなった?


お兄様曰く。事の発端は、私の好きな人が「ミヅキ」なんじゃないかというアンリの発言から殿下が真相を確かめるためにミヅキを招待しようというのが始まりだ。なんじゃそれは。


どういう解釈をしたら私の好きな人が冒険者ミヅキになるのかしら。匂わせたことなんて一度もないんですけど? というか私に好きな人がいることをアンリはお兄様や殿下の前で話したのね。


お兄様は「優秀なことに違いないのに、好きな相手が絡むと思考がとんでもない方向へ行くことを初めて知ったよ」と可笑しそうに言っていたわ。


そして殿下が絡んできたので、お父様とお兄様の3人で話し合った結果、私のいつもの分身魔法で「ミヅキ」に変身して招待に応じることになった。殿下は冗談ではなく本気でミヅキに依頼をするから、ということで。お父様は珍しく困惑を表に出していたわね。


なので既に分身して「ディアナ」と「ミヅキ」に分かれている。いつもは2号が「ディアナ」をやっているんだけど、今回は2号が「ミヅキ」に変身している。


なんでかっていうと、「ミヅキ」は殿下の依頼で今夜のパーティーに出席するから殿下のお供として一緒にここに来るからだ。あの何を考えているのかよくわからない殿下と一緒だなんて私には無理ということで2号にお任せした形だ。あとは、まぁ、大豆の加工料理の営業的なことでパーティーの間はノヴァ様と一緒にいることが多くなるから、それを2号に任せたくなかったっていうのもある。完全な私情です。


「ミヅキ」に完璧に変身させた2号は今王宮に行っている。もちろんちゃんと城下から貴族門に入ってという手順を踏んで。


「ディアナ」と「ミヅキ」は会ったこともない関係なのでパーティーでは初対面を装わなければならない。でもアンリが私が「ミヅキ」を好きなのではと疑っているのなら、好きな人がバレたくない私にとってはカモフラージュになる。だからそれらしい素振りをしたほうが良いかもしれない。


でもノヴァ様に誤解されたくな……いや、ノヴァ様は「ミヅキ」も私だと知っているから何の茶番かと思われるわね。まぁ、会うのは初めてでも「ミヅキ」は闘技大会で貴族の間でも有名になっているからただのミーハーとして振る舞うくらいなら別におかしくないわよね。

アリエスの月をピスケスに修正しました。

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