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幕間(19)

はぁ、まさか主がお嬢の魔塔行きを許すなんてな……


闘技大会に魔塔主に勝って褒美としてもらった防御魔法のペンダントのメンテナンスに行くらしいんだけど、わざわざ魔塔に行かなくても良くね?


まぁお嬢の魔力は特殊だから、ペンダントの魔石に魔力を補充しようとすると金に変わっちまうから仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。俺がこっそり補充しようにも収納魔法とやらでしまわれているからできないし。魔塔主を王都のどっかに呼びつけちゃダメなんか? ……まぁ無理だよな。


なんでこんなに俺がお嬢の魔塔行きを渋っているかというと……俺は魔塔に入れないからだ。


なんで入れないかって? いつものように隠密スキルで入ればいいじゃんて?


できたらやってるよ。でもできないんだよ魔塔は。


知らないだろうから教えてやる。魔塔の外壁にはな、魔力感知とスキル感知と生体感知の魔道具が設置されているんだ。俺みたいな影とか諜報員とか侵入者とかを排除するためにな。


その数なんと52個。正気の沙汰じゃねぇ。無害そうな顔しといてあの魔塔主はえげつない。


ちなみに生体感知ってのは、魔力を遮断してスキルも使用していない侵入者に対する処置だ。それなら死体を操って侵入する手があるが、魔力かスキルを使うことになるからその時点でアウトだ。


今まではあんなもんなかったのにあの魔塔主が魔塔に入って何年かしてから設置され始めた。今じゃ52個だ。どんどん増えてやがる。ちなみに王宮にある王族の居住区域にも設置されている。設置されてから一度も内外からの侵入者を許していないらしい。


俺は魔力は遮断しているが隠密スキルを使っているため魔塔に足を踏み入れた瞬間スキル感知にひっかかる。ひっかかるとどうなるかっていうと……電気ビリビリがお見舞いされる。


おいおい、電気ビリビリ程度かよ(笑)って思っただろ。甘い! あの魔塔主はえげつないんだ。食らったら即気絶するレベルだぞ。それが52個もあるんだぞ。


気絶したら最後、捕まって尋問、悪くて魔塔の者たちに実験体にされる。以前引っかかったヤツがいたんだ。同僚じゃないからどうでも良いけど、だがそいつの末路は……くっ……


だから俺達は絶対魔塔には近づきたくない。


入口からお嬢と一緒に入れば大丈夫じゃね? って思ってるだろ。その場合も俺だけ電気ビリビリだ。何故かと言うと、お嬢は魔塔の入館証を持っているからだ。あれは単なる入塔許可証ではない。あれが電気ビリビリを回避する代物で、魔塔の団員たちも皆それと同じ効果がある身分証明証を必ず持ち歩いている。でも首から下げているわけじゃない。パッと見どれが身分証明証なのかわからないくらいわかりづらいらしい。主はどんなものか知っているけど教えてくれない。俺達はヴィエルジュ家の影だからって。主って律儀だよな。


それならと主にお嬢と同じ入館証を用意して欲しいって頼んでみたけど、やめた方が良いって言われた。あれは魔塔主しか作れない特殊なもので用意するにも魔塔主に依頼しなければならず、もしあれこれ理由つけて魔塔主に頼んで用意できたとしても、入館証はスキルの対象外になるため俺が透明化しても入館証は透明にならず入館証だけが宙に浮いている形になり逆に怪しまれるということらしい。なんだそりゃ、だ。


くっそ、なんでお嬢の魔塔行きを許可したんだよぉぉぉ……主、あの魔塔主のこと信頼しすぎじゃね? そんなんじゃまた陛下に誤解されるぞ。そしたらまた陛下は魔塔主にちょっかいかけるぞ。


グチグチと心の中で文句を垂れながら、いつものようにお嬢の肩を掴んで一緒に王都に転移して魔塔に向かう。


お嬢は馬車の中で主に言われた通りいろんな魔法が付与された装飾品を外していく。あれらは魔力を帯びているからな。お嬢には入館証があるとはいえ、お嬢はたまにうっかりさんなところがあるからな。主の好きな「念の為」だ。


はい、そうそう、入館証を首にかけて(団員以外の入館証は首につけるネックレスタイプで、盗まれて他人に使用された場合入館証の効果がなくなる)……よし、これでお嬢は電気ビリビリ回避だ。しょうがないから入館証のない俺は大人しく魔塔から離れた林の中でお嬢を待っているとしよう。何事もなく出てくるのを祈るぜ。


お嬢が魔塔に入って3時間弱。そろそろ日が暮れる頃だ。こんなに長居するか? たかがペンダントのメンテナンス、もとい魔力補充だろう?


まさかお嬢の本来の力が魔塔主にバレて実験体にされてないよな? 大丈夫だよな? な?


……あ、出てきた。


お嬢の様子を窺う。


……まぁ、いつも通り……だな。特に変わったところはなさそうに見える。魔法談義に花を咲かせていただけか? お嬢は魔法が好きだからな。


迎えの馬車にお嬢が乗り込んだところでその場を離れる。馬車に付いて行き、音を立てないように馬車の上に飛び乗った。


貴族門を抜けたところでお嬢が馬車から降りる。セレーネ通りの人気のない路地を選び、転移しようとするところを俺は滑り込んでお嬢の肩に手を置いた。ギリギリセーフ。


お嬢は領地の屋敷に着くと変身を解き、主の執務室に向かった。


執務をしている主に魔塔であったことを話していく中で、お嬢は自分の力を魔塔主に話したと伝えた。


目玉が飛び出た。


いや話したんかい!


って主、俺を睨んでも俺は魔塔に入れないんだから止めようがないだろう! 理不尽!


うわ、主のお嬢を見る目……真意を探ろうとする目だ。話した理由聞いただろ? これはもうしょうがないって。あのえげつない魔塔主だぜ? 探究心と称して色々探られて周りを巻き込んでバレるのがオチだ。内密に話しておいて正解だと俺は思うぞ。


けど不安が残る。ならあの魔塔主を四六時中見張るしかない。


……ん? だがあの年中引きこもりの魔塔主をどうやって見張ればいいんだ? 影が電気ビリビリをお見舞いされちゃうじゃん。


主が「念の為釘を刺しておく」と言った。


そうだな、もうどんどん刺しちゃってくれ。魔塔主がエメンタールチーズみたいになるまでたくさん刺してくれ主。

次回は9/8(月)に投稿致します。

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