表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/227

143.メンテナンス

2階、3階、4階とエスカレーターで登っていく度にリード副団長から階の説明をされる。いつの間にか魔塔見学ツアーになっていた。


2階は団員たちの室内魔法訓練場、3階は瘴気の研究室、4階には魔道具の発案・魔法陣構築・組み立て・改良それぞれの研究室や倉庫があった。ちなみに団員たちの宿舎は魔塔の裏手にあるらしく、家からの通いが難しい者が主にそこで寝泊まりしているようだ。


「ここが5階。団長の研究室兼私室と、あちらには実験室があります」


副団長に付いて行く形で円を描くように廊下を進むと、副団長は何の変哲もない木製扉の前で立ち止まった。


よく見ると、玄関扉と同じようなボタンが扉に付いている。


副団長が慣れたように押すと、ピンポーンと懐かしい響きの電子音が鳴った。


「団長、私です。Sランク魔法使いのミヅキさんを連れてきましたよ」


部屋の中から微かな物音が聞こえる。すぐに返事があったので、副団長が「失礼します」と言って扉を開けた。


促され、ドキドキしながら中に入る。


部屋の中の第1印象は(きたな)……物がいっぱいだった。机やソファ、棚のあちこちに魔道具らしき物や本や紙類が乱雑に置いてあり、壁に取り付けられた木製ボードはメモだらけだ。こんな部屋の様子に私は既視感を覚えた。


大学の時の教授の研究室みたいだわ。いや、あれよりもちょっとマシな方かな。床に埃とかゴミはなさそうだし。


その時、足元をスイスイ走る円形の何かが床に落ちていた小さなゴミを吸い取っているのに気づいた。


ル、ル◯バ……!?


「ああ、これは床を掃除してくれる魔道具だよ。これも団長が開発してくれて、各階にあるんだ。おかげで掃除の下働きを雇わなくて済んでて。ここは機密も多いからね」


……さっきまで私に見学ツアーされてましたけど。それは良いのかしら。


「久しぶり。大会以来だな」


ハルトさんはメモだらけの木製ボード近くのひとり掛けソファに座って私をじっと見ていた。


私もハルトさんに釘付けだ。いや、ハルトさんというよりハルトさんの髪色に。だって分け目の半分が黒髪でもう半分が金髪って斬新じゃない? すれ違ったら絶対二度見する自信があるわ。


「ペンダントのメンテナンスだろう?」


「はい。ですが……」


あまり顔色が良くないように見える。


「気にするな。いつもこうだからな。まぁ、メンテナンスというのは口実だったりもする」


口実?


「とりあえず座ってくれ」


……どこに?


私は機能していないだろう2人掛けのソファ2つとテーブルに置かれた書物や魔道具、服などを見やった。


「まったく団長は。いつも適度に片付けてって言ってるじゃないですか」


リード副団長が呆れたように言いながらソファとテーブルに置かれた物をどかしていき、少々埃っぽいソファとテーブルに魔法をかけ綺麗にした。まるで片付けができない子供を(たしな)める母親みたいで、リード副団長のイメージが変わっていく。


「さぁミヅキさん、こちらにどうぞ。今お茶を用意するので」


「え、あの、お構い無く……」


なんだろう、私今冒険者で庶民のはずなのに。リード副団長って確か子爵だったよね? 


恐縮しながらスペースが空いたソファに座る。対面にハルトさんがよっこいしょと言わんばかりの緩慢な動作で座った。


「また寝てないのですか?」


リード副団長が用意したお茶をテーブルに並べる。私はそれに対し頭を下げた。


「いや……」


「もう少しちゃんと寝ないと倒れますよ」


「わかっている」


副団長はわかりやすくため息をついた。


「では私はこれで。帰るときは教えてください」


そう言ってリード副団長はささっと部屋を出て行った。


私はその後ろ姿を目で追っていたら、向かいからさっと手が差し出された。


? 何かしら……


きょとんと差し出された手をただ見ていると、「ペンダントを」と言われた。


あ、そうだった。


私は首にかけていたペンダントを外し、ハルトさんに渡した。


「ふむ……使用中は特に問題はなかったか?」


ペンダントを検分しながら言う。


「はい。たくさん助けてもらいました」


「それは良かった」


ハルトさんは笑みを浮かべる。そして石に刻まれた魔法陣を確認したり、魔石に自身の魔力を入れ、防御魔法が作動するかも確かめた。それが終わると、「このまま俺の魔力を入れておく」と言ったので、私はお礼を言った後内心でほっと胸を撫で下ろした。


「魔力を充填している間部屋の中を見て回って構わない。見られて困るようなものはないから」


「……ではお言葉に甘えて」


私は立ち上がり、棚に並んだ魔道具の試作っぽいものを眺めたりした。


これは何の魔道具かしら。


装飾が施された箱の蓋部分に透明な魔石が埋め込まれている。保存容器か何かかと適当に想像した。


部屋に入った時にハルトさんが座っていたひとり掛けソファの近くの机に移動すると、たくさんの書き物や魔石、本が机の上に置かれていた。


その中からなぐり書きされた紙がふと目に入る。


え……これって、日本語……?

次回は8/14(木)に投稿致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ