表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
177/227

136.眷属神とダンジョン

「ダンジョンを創るとなると、オルベリアン様が適任ですね」


リブラ様の言葉にルナ様が「そうね」と応えた。


「でも、ディアナ。オルベリアンから魔法創造のスキルをもらったと思うのだけど、それで創れるんじゃないかしら」


「ダンジョンはイメージ通りに創れたのですけど、ノヴァ様とダンジョンに入って確かめた時に魔獣が全くいなかったのです。ノヴァ様が自然の摂理に反することは創れないと言っていたのでそのせいだと思うのですが、魔獣がいないとダンジョンを創る意味が……」


私は魔獣を浄化した後の冒険者たちの仕事について話した。「そういうのは国が率先してやることじゃないの?」とスコルピウス様に問われたけど、私が浄化魔法を使えることなど諸々の隠さないといけない事情もついでに話すと、冒険者の仕事の斡旋も私とお父様で秘密裏に進めざるを得ないことにまぁ納得してくれた。


「つぅかノヴァ様、お試しダンジョンに入ったのか。めっちゃ羨ましいぜ」


「案外楽しんでいますね」


「あ〜、人間界に降りられないのがツラすぎる〜」


レオ様が額に手を当て項垂れる。他の眷属神たちも同じ気持ちなのか沈んだ顔をしていた。


この様子だと、天界の神様は人間界に降りることがあるように思えた。


私は疑問に思って「降りることがあるのですか?」と尋ねると、レオ様が不機嫌さを隠さずに応えた。


「昔はな。けどノヴァ様が人間界に追放されると決まった時、ルナ様と俺たち眷属はノヴァ様が人間界にいる間は降りることを禁じられたんだ」


「なるほど……」


会って間もないけど星の神様たちがノヴァ様をとても慕っているのがわかる。ノヴァ様が人間界に行けば皆が付いて行きそうだということも。


「ちょっとオルベリアンを呼んでくるわね」


沈んだ空気を断つようにルナ様が無理矢理出したような明るい声でそう言うと、神殿の中に入っていった。その足取りは軽くなく、華奢な体に重たい荷物でも背負っているかのようにゆっくりとしていて気鬱さが滲み出ていた。


大切な家族と会えなくなって800年だもの。時の流れの感覚は神様と人間では違うかもしれないけど、寂しく思う気持ちは時間も神様も人間も関係ない。それにノヴァ様はその800年の間に大変な目に会っていたのに、助けたくても限られたことしかできない歯痒さともどかしさもずっと抱えて続けていたのは想像に(かた)くない。


私がずっとルナ様の背を目で追っているのを、神殿にオルベリアン様がいるのかと私が疑問に思っているのだろうとウィルゴ様は思ったらしく、「神殿の月の間に鏡があるのだけど、そこで柱神同士会話ができるのよ」と教えてくれた。


私はそれに関心して頷いた。


ビデオ通話みたいなものかな。そういうものを人間界に取り入れたら情報の伝達が途端に早くなるわね。手紙とか伝令とかって日数や時間がかかるもの。ハルトさん、こういうの真っ先に作りそうなのにまだ世にないってことは結構難しいことなのかしら。


「ねぇねぇディアナ♪ ダンジョンのこと詳しく教えてよ♪」


池の中のピスケス様が縁に乗り出して興味深そうな目で私を見上げる。その上目遣いがなんとも可愛い。桃色の瞳だからリリアを思い出す。そういえば最近全然会っていない。毎年冬の時季はリリアは南の領地に帰っているから、約束でもしない限り会うことはない。まぁでも新年の祝賀パーティーで会えるか。


「なぁ、そしたら皆でどんなダンジョンにするか考えようぜ!」


「「お、いいねそれ。レオにしては良いこと言うじゃん」」


ゲミニ様が声を揃えて賛同する。


レオ様がそんなことを言い出したのは、さっき私が協力を得たいと言ったからだ。せっかくだからどんな内容にするか考えてもらうのも良いかもしれない。


「考えるのは説明を聞いてからでしょうよ」


「いいから、ほら座った座った」


ピスケス様のいる池の側の芝生に座り、皆で車座になる。ピスケス様は池から出ることはないのかと疑問に思った。


「じゃ、まずはディアナとリブラからダンジョンのことを詳しく聞いて、どんなものにするか意見出して行こうぜ」


「なんであんたが仕切ってんのよ」


ウィルゴ様とレオ様の漫才のようなやり取りに笑ってしまいそうになる。


それから私とリブラ様でダンジョンのことを皆にわかりやすく説明していると、ルナ様が戻ってきた。隣にはあのイケオジ神様のオルベリアン様もいた。


眷属神たちが最高神の登場に立ち上がったので、私も立ち上がって居住まいを正した。


「ルナに呼ばれて来てみれば、美月が来ているとは」


「オルベリアン様、ご無沙汰しております」


「息災か」


「はい、おかげ様で」


虹色に輝く瞳を和らげて、私の肩にポンと手を置いた。


「よくやってくれた。私も礼を直接言わねばと思っていたのだ。ノヴァを助けてくれて本当にありがとう」


「約束を果たせて良かったです。でもまだ森にいる魔獣を浄化できていないのでこれからが本番ですから」


「うむ、そうだな。ルナ、結界が崩れるのは1年後のピスケスの月に変わりないか?」


オルベリアン様が私の肩から手を離した。


「ええ」


ルナ様は頷いた後、さりげない仕草で私を見た。満月の瞳がわずかに揺れている。


次回は7/28(月)に投稿致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ