表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/227

129.年が明けました

2週間が経って、その間に年が明けた。


例年のように街は一気にお祝いムードになるかと思いきや、結界崩壊によるスタンピードが2年後に迫っている影響でここスピカは南への避難が進んでいるために人口が減り、盛り上がりはそこまでだった。


そんな中我が家はいつも通りお祝いをする。領地の屋敷で新年を祝うのはだいぶ久しぶりだったので、使用人たちが張り切って準備してくれてとても楽しく過ごせた。お兄様だけひとり王都にいるから寂しかったけど、お兄様は王宮で殿下たちと一緒に新年を祝ったみたい。そうお父様が教えてくれた。


日本でいう三が日が過ぎた頃に私はミネラウヴァの宝石店に行き、青色の魔石がついたブローチとピアスを受け取った。


ブローチは楕円形の青い魔石を囲むようにブラックプラチナでできたアルバローザの葉をイメージした装飾がされている。ピアスもブローチと統一してブラックプラチナにし、青い魔石はひし形になっている。とても格好良い感じに仕上がっているんだけど、魔石に魔法付与をするから金色に変わってしまう。まぁ、それはそれで格好良いからいっか。


次に装備店へ行く。どんな風に仕上がっているか楽しみだわ。


「いらっしゃ……おお、ミヅキじゃねぇか!」


壮年の店主が私に気づいて筋肉質で太い腕を挙げる。「蒼焔のミヅキ」から普通に名前呼びに変わっていた。


「できてるぞ」


ニヤつきながらそう言って奥の部屋へ引っ込み、戻って来ると手には包を持っていた。


カウンターの上に置き、包をもったいぶるように開けると、「じゃじゃーん!」と蒼色のマントを私に見せるように広げた。


「どうだ。いい出来だろ?」


店主は自信満々だ。


私が今羽織っているお父様が贈ってくれた水竜のマントは藍色だけど、このマントは少し明るめで光沢感もあった。触ってみると素材感もツルツルしている。


「ああ。いくらだ?」


「素材は持ち込みだがドラゴンの鱗を加工するのはちと難しいんだ。ちょっと高くなるが6金貨でいいか?」


オリハルコンの剣でやっと切れるくらい硬いものね。値が張るのも仕方ない。


私はパンツのポケットに手を入れ収納魔法で金貨6枚を出し、店主に渡した。


「まいど。あとものは相談なんだが」


「なんだ」


「余ったこの鱗、売ってくれねぇか? もちろん言い値で買い取るからよ」


包の中には鱗が入ってあった。加工にどれくらい必要なのかわからなかったから余分に渡していたのよね。やっぱり余ったか。


「『蒼焔のミヅキ』がドラゴンのマントを羽織っているからマネしたがるヤツが多いんだ。だがうちはワイバーンの鱗のものしかない。だから俺はこの店にドラゴンのマントを並べたい。できれば全色!」


私は苦笑いを堪らえようとしたため、頬がひきつった。


店内を見回すと確かにワイバーンの素材の装備やバシリスク、グリフォンといったAランク魔獣の素材を扱ったものが目に付く。ここの店で一番高そうなのはベヒーモスの牙や皮の武器とか防具で、確かにドラゴンのものはなさそうだった。


「並べても高価格だから買うやつはあんまいねぇかもしれねぇが、ドラゴンの素材を扱っている店なんて一種のステータスだろ? その装備見たさに客が集まってくるしな」


なるほどね。まぁ、持ってても自分で加工できるわけじゃないからある程度売っても良いかも。ドラゴンて巨大だから鱗なんていくらでもあるし。


「わかった」


「ほ、本当か!?」


私は追加でカウンターの上に火竜の鱗と風竜の鱗の半分程を出した。


店主の目が輝く。


「おお、すげぇ……! ミヅキ、恩に着るぜ!」


「土竜はまだ討伐していないからないが」


「じゃあ土竜を倒したらまたここに持ってきてくれ!」


「わかった」


3色の鱗を36金貨で買い取ってもらい、私は舞い上がって騒がしい店主の店を出た。


マントを脱ぎ、新しい逆鱗マントを羽織る。軽さは変わらないけど新しい装備ということで気持ちが上がった。


今までお世話になったマントを収納魔法でしまい、念話で2号が部屋に1人なのを確かめると人気のない路地に入り自室に転移をした。



『お疲れ』


2号は書き物机に向かって何か書いていた手を止め振り返る。


『あら、良いじゃんそのマント』


「だろ? これで防御力も逆鱗の効果でパワーアップだ」


私は「ミヅキ」の変身を解き、「ディアナ」に戻った。


「ダンジョン、何か思いついた?」


宝石店に行く前、2号にはお父様に報告するためにダンジョンの具体的な案を練るよう頼んでいた。


『うーん、まぁ、ぼちぼち』


「やっぱ難しい?」


私は2号が書いていたノートに目を走らせた。


どれどれ……


魔法創造スキルで『ダンジョン生成の魔法』を創ることが前提として、どこにダンジョンを創るかが書いてあった。


ランデル山脈に2ヶ所、ラヴァナの森とローレンの森とユーレリアの森に2ヶ所ずつ、ヘレネの森に1ヶ所、エスコルピオ領側の海上に1ヶ所、フィシェ領側の海上に1ヶ所、クレブス・へミニス・シュタインボックの領内に1ヶ所ずつ、最後は王都の闘技場の地下……


なるほど、王都と12領全てにダンジョンを創る算段ね。うちとヴァーゲ領はランデル山脈も有しているから2ヶ所ずつダンジョンがあるということになるけど。そうすると全部で15ヶ所……そんなに創れるかしら。


まぁでもこれはまだ希望の段階だ。それぞれ許可もいるしね。まずはうちの領地から試すのが無難か。あとできそうなのはヴァーゲ領かな。ヴァーゲ領はお母様の実家だからうちの領でまず評判を見てから取り掛かれると思う。


私はダンジョン生成予定地として、ヴィエルジュ領内にあるラヴァナの森とランデル山脈の2ヶ所に丸を書いた。

次回は7/10(木)に投稿致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ