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126.水竜

年の瀬になり、お兄様とセシリア・フィシェ侯爵令嬢との婚約が大々的に発表された。国中の貴族からお祝いの手紙や贈り物がこの屋敷にも王都のタウンハウスにもひっきりなしに来ている。


王都にいるお兄様の周りはきっと騒がしいに違いない。今は学院は冬期休暇に入っているけど、殿下の側近であるお兄様はしょっちゅう王宮に出入りしているからね。


お兄様たちの婚約パーティーは来年のアリエスの月(4月)を予定している。もちろん王都のタウンハウスで。ただ、新年の祝賀パーティーが毎年アクアリウスの月(2月)に王宮で行われるのだけど、来年はユアン殿下が立太子をするというので、新年の祝賀と同時に立太子の儀を執り行うようなのだ。立太子の儀には領主貴族家全ての貴族が集まらないといけない行事であるため、その儀に間に合うように私は王都に戻らないといけない。社交デビューしたから私も来年から出席しなきゃなのだ。


なので1ヶ月以内にドラゴンをあと2体倒す必要がある。ドラゴンはランデル山脈にしか生息していないし、王都に戻ったら色々と令嬢業が忙しくてドラゴンどころじゃなくなる気がするしね。


朝の鍛錬と朝食を済ませた後、いつものように後のことは2号に任せ、冒険者ミヅキに変身する。今日は2号はお母様と一緒にお兄様の婚約パーティーで着るドレスのデザイン決めをするみたい。大変だけど、よろしく頼んだ。


「じゃ、行ってくるね」


『はーい、気をつけてねー』


私はピアスを使ってミネラウヴァギルドの近くの路地に転移をした。


ギルドで1週間程前に採取した銀月草の報酬をもらう。採取後は気絶してギルドに行けなかったし、休息をかねてダンジョンのことを色々考えてたりしていたから依頼完了報告に行ってなかったのよね。銀月草採取の依頼期限は2週間だからセーフだったわ。受付のお姉さんに「ミヅキさんにしては時間がかかりましたね」って、なんか安心したような笑顔で言われた。遅くなった理由を言えるわけもないので苦笑いで済ませたわ。


そのままドラゴン討伐依頼を受けた後、再び路地に入りそこから今度はランデル山脈の中腹に転移をした。本当に転移って便利だわ。


あ、ちなみにお父様とうちの騎士団は数日前に既にドラゴンの討伐に行ってて、見事オリハルコンと逆鱗をゲットしたらしい。土竜だったって。転移ができるわけじゃないから何日もかかるけど、陛下の分以外にも採るつもりみたいだからまだ数日は領地に留まるみたい。


目の前に大きな石がゴロゴロある地面ばかりの景色が広がる。前に火竜を討伐した場所に着いた。


ふむふむ、ドラゴンの魔力や気配は感じない、と。でかいくせにパッと見つけられないのがなぁ。ランデル山脈広すぎるよ。


うーん、探知魔法よりも効率良く見つけられないかな。ずっと出してると地味に魔力使うし。……あ、そうだ。


私は風竜を倒した時に手に入れた魔石で上空に高く飛び上がった。木々や岩がどんどん小さくなっていく。


ノヴァ様の黒い壁も見えた。


……今何しているのかな。


黒い壁をしばらく眺める。でもそれはまるで自分とノヴァ様の間を隔てている高い壁に感じてどうにもならないようなもどかしさが胸を締め付けた。もしかしたら()()なのかもしれないと自覚したから。


はぁ、考えてもしょうがないか。今やるべきことに集中しよう。


気持ちを切り替えると、視力を強化して辺りをキョロキョロと見回した。


お、あれは……


ここから十数キロ離れた場所に大きな滝が崖から流れていた。そこでは蒼い色をしたドラゴンが水浴びをしていた。


水竜発見! しかも2体いるんだけど! え、いっぺんにいけるかな……魔力値は13万以上あるから超級魔法2回は使えるわね。逆鱗付きオリハルコンの剣があるから動きを封じればスパスパっといける気がしてきた。そのためには剣が水竜の攻撃を受けないといけないから……


どう討伐するか考えながら水竜がいる所へ飛びながら向かう。風竜の魔石が大きいおかげでスピードも速い。


近づくにつれ、滝が落ちる轟音が大きくなる。この音と風竜の魔石を持っているおかげで2体の水竜には気づかれていないっぽい。


水竜は蒼い体に水に透けるような翼をもち、翼の形も水の中を泳げるようにヒレに近い形状をしている。長い尾にも魚のようなヒレがいくつか付いていて、獰猛な顔の横にもヒレがある。(わに)みたいな長い口と鋭い牙で噛み砕く力がとても強そうだ。


あ、待って。1体魔石持ちじゃん! 超ラッキー!


滝壺に入水している水竜の頭の上に生えている青みを帯びた独特な色の角は魔石だった。


オリハルコン、逆鱗、魔石……ふふふ、ドラゴンは宝の宝庫ね!


咆哮による状態異常の回復魔法は既にかけてあるけど、魔力遮断はドラゴンには意味ないので解いた。


上空に浮いたまま体のストレッチをする。


さて、やりますか。


まず滝壺にいる魔石持ち水竜に向けて月属性超級魔法を放つ。


月読(ツクヨミ)


水に浮いていた水竜の時間が止まった。


1分で決めなきゃ。

次回は7/3(木)に投稿致します。

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