表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/227

124.ダンジョン

「「ダンジョン?」」


2人の声が重なる。


なんで今まで思いつかなかったのかしら! 異世界ファンタジーといったらダンジョンよ! この国に魔獣がいるせいで失念していたわ!


「ダンジョンとは迷宮のことです。迷宮には魔物がいて倒すと宝物を手に入れられたりできるゲーム、いやアトラクション……も通じないな、あ、娯楽? みたいなものです。ダンジョンにも色々形態があって、洞窟の中だったり森の中だったり建物の中だったり。そこでは冒険者が魔物を倒して報酬を手に入れたり、宝箱を探したりできるんです。宝箱には魔石とか貴重な装備とか魔道具とか鉱石とか入ってたり、あ、ハズレもあったら面白いですね!」


同意を求めようと2人を見ると、2人して固まっていた。


あらやだ私ったら。つい興奮しちゃって2人を置いてけぼりにしていたわ。


「……その、ダンジョンというものは作れるものなのか?」


「ふっふっふ。お父様、私にはあのスキルがあるじゃないですか」


したり顔で言うと、お父様が「……なるほど」と額を押さえた。


私の魔法創造スキルで『ダンジョン生成』みたいな魔法を創ればたぶんできると思う。魔物や宝になるものも創れるのかどうかだけど、魔法創造スキルで創る魔法はイメージできるものだから私の想像力が試されるわね。


「たくさん討伐しているからイメージは大丈夫のはず」


両手で拳を作りひとり意気込む。


「もうダンジョンに決定しているのか」


「え、駄目ですか? 魔物を倒せて報酬も手に入れられるなら今の冒険者業と変わらないと思いますけど」


お父様が息をつきながら額に当てていた手を離した。


「……わかった。とりあえず仕組みや形態などを考えてまとめて私に報告するように。決めるのはそれからだ」


「わかりました!」


ダンジョンの中身を詳しくってことね。ふふ、考えるの楽しみになってきた!


だけど私だけで詰められるかな……でもダンジョンのこと知っているの、漫画とかゲームを知ってる私しか……って、あ!!


脳裏にハルトさんが浮かぶ。


いるじゃん同郷の人が! ハルトさんに聞けばいいんじゃない? 詳しそうだし。だって色んな便利な魔道具とか作ってるもの、その辺の知識が豊富そうだわ。


問題はどうやって接触するかよね。「ディアナ」としては夏のユアン殿下の誕生パーティーで初めて会っただけだし、「ミヅキ」だと闘技大会で戦ったくらいか……


あ、そうだ……防御魔法のペンダントのメンテナンスっていう(てい)で会いに行けるかも。魔塔の入館証もくれたから、メンテナンスのついでにダンジョンについてのアドバイスをもらうのはどうかな。


でもダンジョンのことを聞くってことは私がこの世界の人じゃないってことがわかっちゃうな……それに万が一転移者じゃなかった時のことを考えて、本当に確信できた時に聞くのが良いわよね。魔塔に何かヒントになるものがあれば良いんだけど。いつ行こうかな。


気づけば窓の外から橙の陽の光が差し込んでいた。


「あれ、もうこんな時間……」


時間が経つのが早い。


「長居をしたな。俺は戻ることにする」


ノヴァ様がソファから立ち上がる。


名残惜しい気持ちが思わず顔に出てしまった。


「ディアナ」


お父様に窘められ取り繕うと、ノヴァ様が「しばらく考えさせてくれ」と言った。


「ディアナは彼を送った後、またこの部屋に戻って来なさい」


「え、はい。わかりました」


なんだろう、何かあるのかな。


「では、送っていきますね……ちょっと、失礼します」


「ああ」


テーブルをまわって私はぎこちない動作でノヴァ様の腕を掴んだ。太くも細くもない筋肉質な腕の感触が布越しに伝わって胸がきゅってなる。


同時に、私の両肩にまたあの不可解な重さがかかった。


ノヴァ様の眉がピクリと動く。


「? じゃあ、いきますね」


私は足元に金色の魔法陣を出し、ランデル山脈の中腹、ノヴァ様と出会った場所に転移をした。


着くと同時に肩にかかった重さが消える。


ほんと、一体何なのかしら。


「助かった。ディアナには世話になりっぱなしだな」


「これくらい平気ですよ。それより、普段ここでどう過ごされているのですか?」


「いつもあそこの岩にでも座って夜空を眺めている」


「それは……」


ノヴァ様の空を見上げる深紅の瞳はとても綺麗だ。でもそこには、懐かしさとか寂しさというより、なんだか諦めに似た色が浮かんでいるように見えた。


……うん、よし。


「良かったら、これ使ってください」


私は収納魔法で家テントを出した。外観はまんまテントだけど、中に空間魔法が施されていて1LDKの広い部屋になっているものだ。


「これは?」


「『家テント』っていう魔道具なんですけど、野営にとても便利なんです。快適ですよ」


私はそう言ってテントの入口を開け、ノヴァ様を中に促した。


「あ、靴はここで脱いでください」


「脱ぐのか」


日本式だからね。


戸惑いながらもノヴァ様は言う通りに異国っぽい靴を脱いで部屋に上がった。

次回は6/30(月)に投稿致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ