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112.銀月草(1)

ミヅキ用の剣を新調した翌朝、再び依頼を受けにミネラウヴァギルドに行った。


Sランク用の依頼ボードにはSランク魔獣とドラゴンの討伐と銀月草の依頼しかない。私はその中でまだ依頼を受けていない銀月草を選んだ。銀月草は山脈の中腹にあるようだし、もしかしたらその過程でドラゴンに遭遇するかもしれないとも思って。


1度に受けられる依頼は指名依頼を除いて1つだけなんだけど、ドラゴンの討伐依頼を受けなくても遭遇すれば討伐しても問題ないし、報酬はちゃんともらえるから今日は銀月草にしよう。どんな風に生えているのか気になるし。


私は銀月草の依頼を受けた後、ギルドを出て路地からランデル山脈へピアスで転移をした。


目を開けると先日火竜を倒した場所に変わっていた。幸いドラゴンの魔力は感じないので近くにいないのはわかったけど、空気が重たくて毒々しい感じがする。瘴気が濃いということだ。いきなり中腹に転移したから余計にそう感じる。


両肩にかかる奇妙な重さから解放されると、肩を回しながら状態異常の回復魔法と探知魔法を発動させた。


えーっと、銀月草は……


探知魔法の分布図は地図っぽくなっているので、木や草がある場所は緑色に、水辺がある場所は水色で示されているのでわかりやすい。私が今いる辺りは岩や石が地面にゴロゴロ転がっているので地図上だと薄茶色みたいな色になっていた。


確か前にレイヴン団長が銀月草はヴァーゲ領寄りの中腹に群生しているって言っていたわね。ならここからさらに西に行けばあるかもしれない。


私は魔力隠蔽の魔法をかけ、『浮遊(フラタール)』で地面から少し浮いた状態で西の方角へ進んでいった。時々地面に降りて魔力の消費を少なくしながら。もうグアンナの角に魔力がなくなってしまったからね。


警戒しながら10分程飛んでいると、後方から先日火竜で感じたあの絶望的な魔力を感知した。


「……っ!」


私は振り返って立ち止まった。


来る……!


私は地面に降り、MPポーションを飲んで魔力を回復させた。


1km先にいて尚且つ魔力隠蔽をしているのにまっすぐこっちに向かってくるということは、やっぱりドラゴンは物凄く目が良く、魔力が見えているのかもしれない。隠蔽しても無駄ということね。


私は隠蔽を解き、迎え撃つ姿勢をとる。


魔法耐性が強すぎるドラゴンには上級魔法程度じゃ倒せない。初っ端から超級魔法で仕留めないと。


そして山際から火竜よりも大きな翼をもつ翠色のドラゴンが姿を現した。


「グアァァァァァッッ!!」


風竜! うっ……


目眩が起きた。でもすぐに回復魔法で自動的に治る。


気づけばもう目前に風竜が迫っていた。


速い!


鋭い爪が襲いかかる。


私は新しいオリハルコンの剣を収納魔法で出し、風竜の爪を受け止めた。


キンッと甲高い音が鳴る。受け止めた反動で後ろにふっ飛ばされた。


くっ……!


花びらの舞(フロスアーダ)』!


飛ばされるスピードが緩やかになり、身体強化スキルを駆使して地面に着地した。


そしてさらに青白い稲妻が何本も上から降ってくる。


ドーンッ! ドーンッ!


防御魔法のペンダントが発動し、雷の衝撃で地面が抉られる音を聞きながら回避していく。


連続攻撃……このままじゃ埒が明かないわね。


私は魔力を思い切り込め、金色の魔法陣を出した。


月属性超級魔法——『月読(ツクヨミ)


ピタリと風竜が止まった。


ズドーーーーーーンッ!!


翼を広げた状態で風竜が地面に落下した。巨体で地面が大きく穿たれ、岩や石が破壊されている。


『月読』は対象の時間を2分間止めるという魔法で、魔法創造スキルで事前に創っていたものだ。創る過程で最初は時間制限なしにしようとしたんだけど、時間を止めるのは自然の摂理に反するのか2分が限界だった。チートスキルでも制限があるみたいだ。


時間を止めている隙に私はオリハルコンの剣身に魔力を纏わせ、風竜の首元に身体強化で飛び上がった。


その勢いで上から振り下ろす。


天叢雲(アメノムラクモ)(つるぎ)


剣身が金色に光り、神剣と化したオリハルコンの剣が風竜の首を難なく斬り落とした。


『月読』を使って魔力が大幅に減って腕に力があまり入らなかったのに、さっきこの剣が風竜の爪の攻撃を受けたため、剣身に装着された逆鱗の効力によって攻撃力が2倍に上昇していることから、まるでコンニャクを切ったみたいに簡単に斬り落とせた。


お、おお……! 2倍の威力って凄いわ。火竜の時よりも結構さっくり刃が通ったわ。


地面に轟音を立てて風竜の首が落ちる。


私はそのまま地面に着地するも、超級魔法連発で足に力が入らずよろけて倒れてしまった。


「ああ、しんど……」


荒い呼吸をしながらMPポーションとHPポーションを飲んで少し回復させた後、前と同じ要領でオリハルコンと逆鱗、爪、角、牙、鱗、翼を回収した。


しかもとてもラッキーなことに、風竜の額に楕円形の魔石が埋め込まれているのを見つけ、私は嬉々としてそれを回収した。結構大きくて、ダチョウの卵くらいある気がする。まさか魔石持ちだったなんて戦闘中全然気づかなかったわ。


風属性の魔石なので、グアンナの角に代わってこれでまた風属性魔法を活用できる。


ウキウキ気分で全ての素材の回収を済ませると風竜の魔石を使って飛び、再び西に向かった。


うわ、はやっ!


性能が全然違うのか、飛ぶスピードがめちゃくちゃ速かった。顔が引きつりそうだったので使う魔力を調節して馬の駆け足ぐらいの速さで進んだ。


20分ぐらい飛んでてもドラゴンにはもう遭遇しなかった。たぶんだけど、この魔石が風竜の魔力を有しているからかもしれない。二重の意味でカモフラージュできる代物に私は嬉しくて思わずくるりと一回転した。いやっほーい!


その時視界に銀色に光る何かが映った。


? 何かしら……


気になって目を凝らすと、この先に銀色に光るものがあった。


もしかしてと思い、光っている方向へ飛んで行く。ゴツゴツした岩や石ばかりの地面がなくなり、木々が乱立する景色に変わった。しかも木が黒くない。街中でよく見る緑の葉と茶色っぽい幹だった。


その中にぽっかり浮かぶように銀色に光る鏡のような池が見えた。


あれは……!


真上まで来てそれが何かわかった。誰もが知っている、王族の紋章にもなっている花――


銀月草だわ!

次回は5/1(木)に投稿致します。

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