12.冒険者になりたい
「まぁ良い。それは魔塔に任せているしな。最後に一つ、この魔法創造スキルだが、オリジナルの魔法が創れるのか?」
「はい、そうです。ステータスの隠蔽もこのスキルで創りました」
「わかっていると思うが、こんなスキルがあることはおそらく誰も聞いたことがない。別の大陸には持っている者がいるかもしれないが、それでも露見しないように十分注意してくれ。魔塔に一生こき使われるぞ」
ひえぇぇっ!!
私は人前でスキルで創った魔法は使わないと心に決めた。
「このスキルを使ってディアナの瞳の色を変えられるか? それができれば外出もできるようになる」
「え!」
目からウロコが落ちた。
そうか、その手があるじゃん!
髪色はお父様と同じだけど瞳が金色だから「女神の化身」て思われてしまうなら変えれば良いのよ!
「やってみます! 色はお父様と同じで良いですか? お兄様はお母様と同じですし」
「ああ」
ではさっそく!
私はお父様の瞳の色をじっと見てから目を閉じた。
夜明けの空、暁の色を頭に思い浮かべ、瞳がその色に変わるイメージをする。
両目に魔力を込めると、眼裏に金色の魔法陣が現れ、それが光った後、両目をゆっくりと開けた。
「どうですか?」
「……」
お父様が何か苦い物を食べたような表情をしている。物静かで厳格なグラエムは見たことのない面白い顔をしていた。
「あれ? 変わってなかったですか?」
「……いや、私と同じ色だ」
「では成功ですね! これなら洗礼式にフードを被って行かなくても良いですよね。あ、でもお母様とお兄様になんて言えば……?」
お父様が小さくため息をつく。
「二人には瞳の色を変える魔法薬を私にもらったと言えば良い。グラエム、使用人たちにも聞かれたらそう応えてくれ」
「かしこまりました」
「ディアナ、魔力に支障がないなら常にその瞳の色でいてくれ。外出の時、うっかり変えるのを忘れたらまずい」
とても大事なことなので、私はこくこくと頷いた。
「もう隠していることはないな? ないならこれで話は以上だ。自室に戻って休みなさい」
「あ、待ってお父様!」
まだ何か隠していることが? 的な瞳で私の言葉を待つ。
「私、冒険者になりたいのです」
「は?」
お父様が目を丸くした。今日はお父様の珍しい表情のオンパレードだ。主にそうさせているのは私だけど。
「ダメですか? あれ、もしかして冒険者がいないとか……?」
「いやいるが、何故なりたい? 一般人の職業だぞ」
「魔法を常に使う環境にいれば魔力も上がりやすいからです」
「それはそうだが、冒険者登録ができるのは15歳からだ」
「え!」
なら間に合わないじゃん! せっかく外出の許可がもらえたのに!……て、あ!
「この瞳を変えたように、15歳に姿を変えればできます!」
お父様は青い瞳を伏せ、思案顔になった。
「……ディアナの能力を隠す上では魔法師団よりも冒険者の方が安全だ。だがソロで活動しないと意味がない。そしてその分危険が増す。だから冒険者になるのは、私と一戦して冒険者になっても良いと判断してからだ」
私は固まった。
な、なんですとー!??
この国最強のお父様と戦ってOKもらえたらってこと? 一体何年かかるのよ!
でもお父様の瞳は真剣だ。
うぅぅ……やるしかない! 私は絶対冒険者になる! 洗礼式が終わったら死物狂いで鍛錬するんだから!
決意を固めた私は執務室を出て足早に自室に向かう。魔法で変えた青い瞳が気になったからだ。
途中、廊下ですれ違う使用人たちに二度見されたり、驚愕の目を向けられたり、頬を染められたりした。
部屋に戻り、鏡台の鏡を覗き込む。
「うおぉっ!!」
廊下まで私の叫び声が響き渡った。




