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104.婿養子

1ヶ月ぶりに会うお母様と一緒に昼食を摂る。


国内を旅してきたのでその感想や出来事をお母様に話したい衝動に駆られたけど、お母様はミヅキの存在はもちろん、私の秘密のことさえ知らないので、ぐっと堪えた。


食事が終わる頃、お母様が飲んでいたグラスを置きながら唐突に尋ねてきた。


「この前のお見合い、良さそうな人はいたかしら」


「えっ……いえ、えっと、まだよくわからないです……」


「そう……私てっきりディアナの相手はベリエ家のアンリ様だと思っていたのだけれど……ジュード様からディアナにお見合いをさせろって言われたときは驚いたわ。しかも領内のうちの傘下の貴族から婿養子を選ぶだなんて」


そうなのだ。先に領地に帰っていた2号は領内の子息とお見合いをしていたのだ。それも3人。婿養子は勝手に決められると思っていたのにお見合いをしていたなんてびっくりよ。でも私にも選ぶ権利があるということにちょっと安堵した。


1人はメレディス伯爵家の次男で名前はクライヴ。13歳。メレディス家は冒険者ギルドがある街、ミネラウヴァを治めている家で剣士の家系だ。確かこの家の長女がヴィエルジュ騎士団に所属している。


2人目はユージン・マクファーレン伯爵子息。16歳。マクファーレン家が治めるヘゼという街は青薔薇のアルバローザの産地で、うちのメインであるアルバローザの化粧品事業を支えている。マクファーレン家は長女が継ぐらしく、長男のユージンが婿養子候補になった。


3人目はシリル・リンフォード。伯爵家の三男で14歳。リンフォード家はシュルマという街を治めていて、暁色の宝石アウロラが採れる地だ。私もパーティーとかでアウロラをよく身につけるから馴染みがある。


それぞれ(2号が)お見合いをしてみて正直に思ったことは、皆ちょっと子供っぽいというかなんというか……ほら、私って見た目は13歳だけど精神年齢は(転生時から年月を足せば)30超えの大人というわけで……見た目の年齢だったらすごく釣り合いが取れているし領内では有力な家だし皆美形だしで文句はないんだけど……どぉしても全員子供に思えてしまう……!


「あの、お母様」


「なぁに?」


「その、もっと年上の方って候補にはいらっしゃらないのですか……?」


「あら、年上がタイプなの? ジュード様が選んできた候補にはマクファーレン家の方しかいなかったけれど、他にも探してみるわね。年上ってどのくらいの年齢が良いのかしら?」


優しい笑みで問われ、私はダメ元でも言ってみようかなと思って勇気をだした。


「えっと……30歳以上、かな」


そう言うとお母様は笑みを浮かべたまま固まった。私とお母様のグラスに飲み物を足そうとした侍従2人も固まっている。


「そ、そう……一応、念の為、探してみるわ。でも、あまり期待しないでちょうだいね……」


お母様が笑顔のまま困惑している。13歳の娘が一回り以上年上の男性がタイプとは寝耳に水だろう。


でも考えたら30歳以上で未だに独身って、この世界ではちょっと怖いかな? 後妻とかもありえそう。お父様が選んだ候補者から決めるしかないのかもしれない。


「……とりあえず、3人には少しずつ会って決めていきたいと思います」


お母様が安心したように微笑んだ。お母様の中ではこの3人がベストらしい。


「そうそう。年の瀬にノアの婚約発表をするのだけど、来年また社交シーズンが始まったら王都で婚約パーティーを開く予定なの」


「えっ、婚約!?」


「あら、知らなかったかしら、王都では結構噂になっているのだけど。ディアナも衣装とか色々手配しないといけないからそのつもりでね。……ディアナ、お口が開いたままよ。閉じなさい」


私ははっとして口を結んだ。


貴族関係のことは今までサボってきたため色々と疎い。夏の殿下の誕生パーティーでお兄様の婚約者はもう決まっているってお父様が言っていたけど、相手は誰かしら。私の知っている人?


「お兄様のお相手は誰なのですか?」


「フィシェ侯爵家のセシリアさんよ」


あ、あの知的美人の……


肩まで下ろした柔らかそうな金色の髪と、青灰色の瞳をもつ背の高い才色兼備の女性が脳裏に浮かんだ。可愛い系というより綺麗系で、お母様と違って少しキリッとした顔立ちをしている。


でも確かフィシェ侯爵家って擁護派じゃなかった? 中立派同士じゃなくても良いのかな。


「お相手の家は擁護派ですけど、よろしいのですか?」


「ええ。政略的に擁護派と組む必要があるのよ」


そうなんだ。あ、あれかな。侵略派筆頭のシュタインボック公爵が黒竜討伐の動きを見せているから、軍を有するヴィエルジュ家が擁護派に傾けば牽制になる、とか……ありえるわ。


王都でお兄様とセシリア嬢との婚約が噂になっているなら、学院でも話題になってそうよね。令嬢たちの阿鼻叫喚が想像できるわ。ご愁傷さまです。


そんなことより私にお姉さんができることに心が踊った。


ふふ、家族が増えて嬉しいな。姉妹で買い物とかちょっと憧れていたからいつかセシリア嬢とやってみたい。年の瀬が楽しみ。

マクファーレン家の治める街の名前を変更しました。

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