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100.神殿巡り(2)

へミニス領の南の海沿いを馬で駆ける。海に面しているため潮風がひんやりと心地良い。小さな港には何艘か漁船が停泊していて、その内の1つの漁船から積荷を下ろしている人が何人かいた。


4日後の午後、隣のベリエ領に到着した。


ベリエ領はアンリとリリアの領地だ。王都にある公爵家のタウンハウスには何度かお邪魔したことはあるけど、領地に行くのは今回が初めてだ。


国の最南に位置するベリエ領とフィシェ領とシュタインボック領では漁業が盛んだ。なので新鮮で美味しい魚料理が堪能できることに私はとてもワクワクした。


この世界の魚介って前世でよく食べていたのと結構似ていたりするのよね。見た目はちょっと違うけど味はマグロとかサーモンとかホタテとか。でもこの国では魚を生で食べる習慣がない。必ず火が通っているので、こういう港に来ると無性にお刺身が食べたくなる。


けれど国の西側にあるシュツェ領もエスコルピオ領も海に面しているのに捕れる魚介はほとんど奇怪な種類で、毒があるため食べられない。ローレンの森もラヴァナの森も近くにあるし、たぶん瘴気が関係しているんだと思う。


港を有するハマルという街にアリエス神殿があるので、先に神像に魔力を込めてから夕食を食べようと決め、そこに向かった。


大通りはまるでお祭りみたいに大勢の人々で賑わっていた。


ハマルは大きな港街なので人口が多い。加えて結界崩壊に向けて王都以北から避難してきた人がハマルに集まっていることも影響している。


すれ違う人々に「蒼焔のミヅキだ」「なんでここに?」と言われながらアリエス神殿に向かう。


いつものように人気のない路地で自分に隠蔽をかけてから礼拝堂に入った。


祭壇に鎮座するアリエス像は羊に似た風貌で、瞳孔は横長、白い髪はふわふわで頭にくるりと曲がった角がついている。なんだか執事みたいに姿勢が良くピシっと直立している。ひつじだけに。


自分で言ってちょっと恥ずかしくなりながら神像に魔力を込める。金色に光ったのを確認して、ざわつく礼拝堂から出た。


決めていた通り夕食に魚料理を食べ新鮮さに幸せを感じた後、海を一望できる宿に泊まった。


ちなみに私はSランクなので黒いギルドカード特典で高級宿も半額の値段で宿泊できる。私はこの旅でそれを大いに活用した。


翌朝宿を出発し、お隣の領のフィシェ領に向かった。


その途中でふと思い立ち、ユーレリアの森に立ち寄る。


ベリエ領、フィシェ領、シュティア領、ヴェルソー領の4つをまたぐ広大なユーレリアの森は唯一魔獣のいない森で、動植物が平和に暮らし、薬草も鉱物も豊富な森だ。


周辺のギルドの依頼も採取や狩りが主で、DやEランクの冒険者が多い。しかも他の3つの森で高ランク魔獣が低ランク区域に現れている今、そこで依頼をこなせなくなった低ランク冒険者がこっちに流れているらしい。


ユーレリアの森には結界が張られていない。それはこの森には魔獣がいないから。


転生する時、月の女神ルナ様は魔獣が生まれた原因は魔素が毒化したことにあるって言っていた。


そもそもどうして瘴気なんか出たのかしら。というかどこから? 女神様はそこは言及していなかったし、魔塔が研究しているけど未だ解明されていないみたいなのよね。


3日後の早朝、フィシェ領のアルフェルグの街にあるピスケス神殿に到着した。


この頃には、近頃神殿の神像が金色に輝くという話題が人々の間で持ちきりになっていた。


なので朝の礼拝堂には、金色に光る瞬間をひと目見ようと大勢の人が集まっていた。私がいつ魔力を込めに来るかわからないのに。


神官たちも慌ただしそうにしていて、礼拝堂の厳かな雰囲気もこの時は全くなく、しかも通路まで人がいるので祭壇までたどり着くのに時間がかかりそうだった。


困ったわ。これじゃ神像に近づけない……あ、そうだ!


私は一度礼拝堂を出て、近くの路地に身を隠し——隠蔽魔法をかけているので身を隠す必要はないけど念の為——魔法創造スキルで「瞬間移動の魔法」を創った。視界に入る場所へ瞬間的に移動ができる魔法だ。転移魔法と違って消費魔力も少なく、中級魔法くらいだ。


これで神像のところに直接移動できるわ。


私は再度礼拝堂に入り、人魚のピスケス像を視界に入れ瞬間移動をし、神像に触れ2万の魔力を注いだ。


金色に光るピスケス像を見ることができた人たちは、まるで宝くじにでも当たったかのように喜び、そして敬虔な眼差しで拝み始めた。


無事に任務を達成できた気分でその様子を眺めた後、私は瞬間移動で礼拝堂の外に移動し、今日も魚料理を堪能すべく港に向かった。


こうも魚料理ばかり食べてると、お味噌汁が恋しくなってくる。


ああ、大豆が欲しいなぁ。誰か大豆を作ってくれないかしら。そうすれば味噌も醤油も豆腐も色々生まれて和食が食べられるのに。考えたら余計に和食が食べたくなってきた。はぁ、お刺身が食べたい。茶色い料理が食べたい……


はっ……待てよ。大豆って日本だと北海道が生産量1位だったわよね。ならこの国の最北にあるうちの領だったら土壌的にもしかしたら作れるんじゃない? 私は将来婿養子と領地経営をする予定だから、大豆の生産をしたら和食を再現することができるかも!


すごく前向きになり、昼食後ヴェルソー領を目指すべく、北へ向かった。

ピスケス神殿がある街の名前がなかったので追記しました。


次回は4/1(火)に投稿致します。

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