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97.闘技大会(14)ー閉会ー

閉会式が始まった。


午前中のトーナメント戦に出場していた魔法師や学院生たちも再度入場して整列する。


彼ら8人の前で、私は向かい合う魔法師団長から褒美を受け取った。


拍手と大歓声の中贈られたのは、ギルマスの言った通り防御魔法が付与されたペンダントだった。直径3cm程の透明の魔石には白い魔法陣が刻まれている。ペンダントの鎖はミスリルでできているらしく特別感満載だった。


うっふっふ、防御魔法(ペンダント)、ゲットだぜ!


喜びを噛み締めながら、ペンダントを首にかけ魔石を手に取り白い線で描かれた魔法陣を眺めた。


褒美はもう1つあった。


驚くべきことに、それはエリクサーだった。


まさか貴重なエリクサーを1本くれるなんて。ディーノさんは10本とか言っていたけど、1本でももらえるだけ有り難い。エリクサーは国が管理しているため売り物ではないからね。治癒魔法を使えるから私にはあまり必要ないけど、何かのために持っておいても良いかと思った。


これで終わりかと思ったら、魔法師団長に人の良い顔で渡されたのが、魔塔への入館証だった。


私は目を丸くして絶句した。


「そのペンダントのメンテナンスのためにいちいち色んな所で許可取りをするのは面倒だろう。入館証を見せればすぐに魔塔に入れる」


なんだそういうことか。てかこれ、メンテナンス必要なのね。


内心の焦りが消え、私は胸を撫で下ろした。


でも、今まで魔塔を敬遠していたけど、魔法師団長の人柄に触れて、鬼畜なところ以外はまぁ悪い人ではなさそうだし、同郷(仮)だし、頑として遠ざけるっていうのはあまりしなくても大丈夫な気がした。もちろん、他の魔法師とは今まで通り距離をおくけど。あくまで魔法師団長に対してだけ。


そして、陛下からお褒めの言葉を頂き、大盛況だった2日間の闘技大会が幕を閉じた。


はぁ、終わったわ……さてと、疲れたし、今日はもう家でゆっくり休もう。


しっかり休んだ後は神殿巡りだ。それが終わればラヴァナの森での魔獣討伐。ふふ、この防御魔法があればレベルの高いラヴァナの森での討伐もサクサクこなせるわ。はっ、もしかしたらこれがカモフラージュになって自分の防御魔法も使えちゃったりするかも。 ふふ、楽しみ。


これからのことに胸を高鳴らせて控室の方に向かおうとしたら、「ミヅキ」と、呼び止められた。振り向くと、魔法師団長だった。


さっきまで「君」だったのに急に名前で呼ばれたから驚いた。


「裏口から出た方が良い。表は帰宅する者たちで溢れかえっているだろうから」


あれ、私が入ってきたところは裏口じゃないの? また別のところがあるのかしら。


「そこまで送るから付いてきてくれ」


とっとと控室とは別の出口に向かった魔法師団長に私は慌てて付いて行った。


少し暗めの通路を奥に奥にと進む。


階段に差し掛かったところで、コツコツと石畳の階段を誰かが降りてきた。


40代前半くらいの、中肉中背で綺麗に整った銀髪に群青の瞳をもった、服装からどう見ても貴族の男性が笑顔の仮面を被って私達に近づいてきた。


「やあ、ヴェルソー小公爵じゃないか。試合、残念だったね。まさか君が負けるとは思いもしなかったのか、君のお父上が蒼白な顔でうなだれていたよ」


心地の良いバリトンボイスで私達の前に立ち塞がる。


魔法師団長越しに見る人物に、私は目を瞠った。


この人ってまさか……


小公爵である魔法師団長に尊大な態度が取れるのは、王族の他には同じ公爵家の者だけだ。ベリエ公爵は顔見知りだから違う。なら必然的に……


「これはシュタインボック公爵。お忙しい貴殿がこのような所で一体何を?」


魔法師団長は臆することなくよそ行きの笑みを浮かべて言う。


やっぱりシュタインボック公爵……! この人が執事を使って(ミヅキ)に黒竜討伐の依頼をしてきた張本人! 


「ちょうど良い。これを渡しておこう」


公爵が懐から陶器の小瓶を取り出した。


あれは……髪染めの魔法薬かしら。私もフリで使ったことが何回かあるから見覚えがあるわ。


「頂けるのですか?」


「もちろん」


「ありがとうございます。落ち着かなかったので助かりました」


「ふ、そうだろうと思っていたよ。この国には侵略派が多数だ。ほとんどの者がその色を見たくないだろうからね」


「……そうですね」


ここからだと魔法師団長がどんな顔をしているのかわからない。


「ところで、ランデル山脈の結界の解析は順調か?」


「ええ。ただあそこまで行くのは骨が折れるので、あまり毎回急かさないで頂けると有り難いのですが」


「あとどのくらいで解けるんだ」


「……何とも言えないですね。なにせ魔獣の森の結界とは全く違う、むしろ魔法の根源が対局なので難しいですし時間がかかるんですよ。属性もわからないですし」


森の結界とランデル山脈の結界は、その魔法の根源が対局……? 


森の結界は「女神の化身」によって張られたものだから私のもつ月属性による結界と同じだ。


以前月属性の結界と治癒と浄化は、よく光魔法に分類されると考えたことがあった。その考え方でいくと、光魔法の対は闇魔法だ。となると、ランデル山脈の中腹に張られた結界は闇属性の結界魔法によって張られたということ……黒竜自ら張った結界なら、黒竜は闇属性の可能性が高い。つまり月の女神様の弟神は闇属性の持ち主、ということになる。ランデル山脈の結界を確かめたわけではないからまだ憶測の段階だけど。


でも待って。ブラックフェンリルも闇属性だわ。これはつまり、どういうことになるのかしら……

次回は3/17(月)に投稿致します。

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