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91.闘技大会(8)―魔法―

「あ、ギルマス! こっちこっちー! ……ってなんか多くない?」


「よお。良い場所とってんじゃねぇか」


「あら〜ミヅキくんじゃなぁい」


「えっ、お前なんでこんなとこいんの!? て、えっ、ディーノさん!? うわ、初めて間近で見た……てか現役Sランクが2人も揃ってんのって、なんかやべぇな!」


北側1階中央の前から5列目に陣取っていたのは5人の『ゲイルのパーティー』だった。


私は目を瞬いた。


「ゲイルさんのパーティーって、『疾風怒濤』って名前だったのか?」


「そうだぜ! かっけぇだろう!」


ゲイルさんが誇らしげにキラーンと歯を見せる。


「ちょっと! この3人が勝手に決めただけだから!」


イリスさんがゲイルさんたち3人の剣士を指差す。


「そうよ〜、だからミヅキくん、前にも言ったと思うけど、私達のことは『ゲイルのパーティー』って呼んでね〜」


メアリーさんが笑顔で凄むので、気圧されて私は「わかった」と頷くしかなかった。


「んなことより早く座れって」


席はまだ私達が座れる分が残っていた。というより、空けてもらった。なにせギルマスとディーノさんと私と、元Sランクと現役Sランクが揃い踏みだからか座っていた冒険者たちが慄いて引いていった。なんか申し訳ない。


私はメアリーさんに腕を引っ張られて隣に座らされ、ギルマスとディーノさんと子どもたちは私達の後ろの列に座った。


少し騒いでいたからか、周りにいる冒険者たちが「蒼焔のミヅキと剛剣のディーノだ」と口々に騒ぎ始める。


後ろでギルマスの「俺も現役の頃は『双獅子のランバート』って呼ばれていたんだぜ」と、ディーノさんの「へー」という会話を聞きながら、私は東側の2階席に目を向けた。


よし、ちゃんと2号いるわね。お父様とお母様だけでなく、今日は(2号)の横にはお兄様がいるわ。


しばらくして貴族たちの入場も揃ったところで管楽器による開会の合図が鳴った。


しんと静まった中で陛下、王妃、ユアン王子殿下、ローラ王女殿下が王族の席に着席する。そしてファンファーレと共に魔法師8人が闘技場に入場した。


一気に場内が熱気に包まれた。後ろの子供たちも興奮している。


整列した8人の魔法師の中に1人、見知った顔の人がいた。


あ、あの人……初めてブラックフェンリルを倒した時にいた上級魔法師だ。MPポーションをくれた親切な人。


知っている人の戦闘を観られることにワクワクが募った。


魔法師8人の内、学院生が3人と青いローブの上級魔法師3人、緑のローブの中級魔法師2人が出場する。


学院生は運営から支給されたベージュ色のローブを身に纏っている。魔法師たちが羽織っている階級を表すローブと同じくそれにも安全のため軽めの防御魔法が付与されている。軽めなので完全に防御されるわけではなく、当たった瞬間魔法の効果が軽減されるだけで、それなりの威力の魔法が当たれば普通に痛いし怪我もする。完全な防御にしないのは魔法師たちの回避能力向上と慢心を防ぐためだそうだ。


あとは試合中魔道具の使用は禁止だ。純粋に己の魔法と1つのスキルだけで戦う。勝負が決まるときは場外になるか魔力切れか、続行不能と審判が判断した時だ。ちなみに審判は魔法師団の副団長であるアシュレイ・リード子爵が務める。


そして闘技の舞台にも魔道具によって防御魔法が張られてある。うちの魔法訓練場にあるのと同じで、魔法が周囲に影響しても防御壁によって防がれるため、観客席の方まで魔法が飛んでいかないようになっている。


モニターにトーナメント表が発表された。あの親切な上級魔法師は3試合目だった。


そうして魔法師による大会が幕を上げた。



試合は白熱した。


様々な魔法が闘技場を飛び交い、観る者を興奮させた。時折魔法が観客席の方に向かって来るけど魔道具のおかげで防御される。それがわかっていても観客たちが「うわっ」と回避行動をとってしまうのがちょっと面白かった。前世で幼い頃に遊園地の3Dアトラクションに乗った時のことを思い出した。


詠唱を短くできる者程、攻撃のタイムラグが少ない。それは上級魔法師に多く見られた。そのため決勝戦は私にポーションをくれた上級魔法師――名前は目録によるとニール・ウェストンと他の上級魔法師の戦いになった。


上級魔法師同士の戦いは熾烈を極めた。魔法を放ちながら違う魔法の詠唱をしての連続攻撃。そしてニールさんは自身に魔法攻撃力上昇のスキルを使い、対戦相手は相手の攻撃力を下げるスキルを使った。そのためほぼ互角の戦いで、どちらかが魔力切れを起こすまで続いた。


結果は持ち堪えたニールさんの勝ちで優勝。2人とも息も絶え絶えで運営から渡されたMPポーションを飲んだ後、表彰式が行われた。


褒美は防御魔法が付与された魔石が付いたペンダントだった。防御魔法は魔法解析スキルを持つ魔法師団長が考案した魔法で、長年森の結界を解析してきた結果できた魔法なんだそうだ。それが付与された魔道具はかなり高価で、闘技場の四隅に設置されている防御壁の魔道具なんか下級貴族の屋敷が1棟買えるくらいの値段だ。ペンダントはもちろん非売品。いいな、あれ私も欲しい。


私ははたと重要なことに気づいた。


魔法師団長、防御魔法使ってくるじゃん……! 私みたいにスキルの存在を秘密にしているわけじゃないからあり得るわ。え、じゃあ私が全力で攻撃しても防がれるってことよね。私も防御魔法をスキルで創ったからあるにはあるけど、魔法陣が金色になる。使いたいけど、属性外の魔法陣の色は魔力の色が反映されるから、(ミヅキ)の魔力の色が金色だとここにいる全員に周知されてしまう。ここに来る前、バレるわけにはいかないから魔法創造スキルで創った魔法は使わないって決めているし、魔力が金色だなんてそうそういないし、ここには王族も領主貴族も揃い踏みだ。


うん、危ない橋は渡らない。それにスキルで創った防御魔法を使わなくても、土属性魔法でなんとか防御できるはず。


魔法師団長はお父様と同じ火、水、風の3属性。そして防御魔法もおそらく使ってくる。そんな中私は普通に火、水、土の属性魔法を無詠唱で戦うだけになる。勝てるのかな。気合い入れて来たけど、一気に不安になってきた……

ルールの内容を追加しました。

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