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89.闘技大会(6)―剣術―

係員がお兄様とディーノさんから模造剣を預かり、はけていく。魔法師団長がディーノさんに魔道具の魔石に触れるよう促した。


ディーノさんが魔道具にゆっくりと手を置く。真剣な表情だ。


すると、数字が速いスピードで上がり始めた。その様子がモニターに映し出されており、ディーノさんもお兄様も硬い表情を浮かべている。


そしてピタッと数字が止まった。魔法師団長が確認する。


「Sランク剣士ディーノの総合値は……7873!」


お、おおお〜、と観客が沸き立つ。


「意外と残っているな」


レイヴン団長が顎に手を添えて言う。


「ノア様……」


イヴァンが祈るような目つきで、モニターに映ったお兄様が魔道具に手を置くところを見つめている。


そしてまた「0」から数字が上がり始めた。この結果で優勝が決まるので、観客たちの息を呑む音が聞こえてくる程、会場が静寂に包まれた。


私も祈るようにして数字を見つめた。


そして数字が止まる。


「ノア・ヴィエルジュの総合値は……7882!!」


お? ってことは……


「……優勝者、ノア・ヴィエルジュ!」


ファビウス団長がお兄様の方に腕を向けて言った瞬間、私は歓喜で思わず立ち上がった。


パーンッと花火のような音が鳴り、優勝者を称えるように色とりどりの花吹雪が会場中を舞い、観客も驚喜する。私もこんな演出があったなんてと驚くと同時に嬉しさと喜びで胸がいっぱいになった。


背後のハインたち騎士団も一斉に立ち上がり、「よっしゃーっ!」と喜びを顕にして私は一緒にハイタッチを交わした。どさくさに紛れて強面の団長にもハイタッチを要求したら座ったまま笑みを浮かべて応えてくれた。


ふとお母様を見ると、お母様が誇らしげな顔でモニターに映るお兄様を見ていた。お父様はというと、お兄様が優勝したのにあまり変わらないというか、何故かディーノさんを見ている。ディーノさんはどこか呆然とした表情でお兄様と握手を交わしていた。


歓声と共に2人に惜しみない拍手が送られる中、優勝したお兄様は周りの歓声に応えていた。


笑みを浮かべてはいるけれど、あまり嬉しそうな感じではなかった。きっと、試合で勝ちきれなかったことや総合値も大差ないことに勝った感じがしないのかも。あと悔しさも心の中にあるのだと思う。意外と負けず嫌いだからね、お兄様。


「レイヴン、イヴァン」


「「は」」


お父様が前を見据えたまま背後の2人を呼ぶ。


「ノアと共にヘレネの森へ行け。シュツェ侯爵には伝えておく」


団長が意図を読み、ニヤリと笑った。イヴァンも口元を和らげる。


「「御意」」


ハインが羨ましそうな目と口になっている。きっとお兄様にヘレネの森のSランク魔獣を討伐させるんだと思う。Sランク剣士と渡り合えたのならそうさせようとするのも頷けるわ。


ハインもSランクの討伐をしたいわよね。ごめんね、この姿だと色々支障があるのよ。


徐に陛下が拡声の魔道具を持って立ち上がった。表彰式が始まるみたいだ。その様子がモニターに映し出されると、途端に会場が静まった。


「諸君、試合ご苦労だった。各々良い戦いを見させてもらった。勝者も敗者も、驕らず諦めずこれからも国のため、自身のために精進し続けることを願っている。……さて、ノア・ヴィエルジュ」


「は」


お兄様が陛下の正面で(ひざまず)く。


「優勝おめでとう。ノア殿には後日金品を贈り、そして学院卒業後の王国騎士団入団を今この場で許可を与えよう」


「ありがとうございます。恐悦至極に存じます」


お兄様が文官から書状を恭しく受け取ると、拍手が巻き起こった。歓声と令嬢たちの黄色い声が一斉に轟く。


「Sランク剣士ディーノ」


未だに呆然としていたディーノさんだったけど、ファビウス団長に肩を叩かれ我に返り、慌てて跪いた。


陛下から冒険者に声がかかるとは思っていなかったのか、会場が一瞬ざわついた。


「見事な戦いだった。惜しくも敗れたが、君の戦いぶりは目を瞠るものだった。今後もSランク剣士として魔獣からこの国を守っていってくれ」


「はい……ありがとうございます」


初めて聞くディーノさんの声は抑揚がなく張りもなかった。


それから陛下は閉会の言葉を述べ、闘技大会1日目が終了した。


明日は魔法の大会だ。私の出番なわけだけど、トーナメント戦ではなく魔法師団長とのエキシビションマッチみたいなものだ。


お兄様の戦いぶりを観たら、私も挑む気持ちで頑張らないとって思った。


帰宅後、この日の晩餐はお兄様の優勝祝いということで一際豪華な食事だった。ヴィエルジュ騎士団も騎士団の宿舎で今頃祝杯を上げているところだ。


食事をしながらお父様がお兄様にヘレネの森のSランク魔獣の討伐をするよう伝えた。それを聞いたお兄様は驚きで翡翠の目を丸くしていたけど、すぐに挑戦的な顔つきになった。


私はお兄様にエールを送り、そして明日に備えていつもよりも早く就寝した。

漢字の誤りが多く、読みづらくて申し訳ないです。気をつけますm(_ _;)m

また誤りがあれば、すみませんが教えて頂けると助かります!


次回は2/24(月)に投稿致します。

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