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88.闘技大会(5)―剣術―

お昼休憩が終わり、会場にはぞくぞくと観客が戻ってきていた。


いよいよ決勝戦だ。


はぁぁ、緊張する。ディーノさんの戦いぶりを見たらお兄様でも苦戦しそうだわ。


でもこういう対戦って滅多にないことだと思うから、お兄様にはプレッシャーとかそういうのは一旦忘れて楽しんでほしいと思う。


時間になったので、モニターに『ノア・ヴィエルジュ対Sランク剣士ディーノ』の文字が表示された。


黄色い声援と野太い歓声とともに、お兄様とディーノさんが入場する。


闘技場の真ん中で王族に向かって一礼した後、お互いに礼をする。そして所定の位置に移動して向かい合い、静かに剣を構えた。


場内が張り詰めた空気に包まれる。


そしてファビウス団長の天高く上げた右腕が会場を真っ二つにするような勢いで振り下ろされた。


ディーノさんは間合いを保っている。前の試合のように果敢に攻めようとはしなかった。お兄様も相手の動作を見ながら攻撃のタイミングをはかっている。


すると、お兄様がディーノさんを誘うようにわずかに隙を見せた。ディーノさんはそれにわざと乗り、身体強化で一気に間合いを詰め斬りかかった。


ディーノさんは身体強化ばかり使うけど、1つだけなのかしら。それだけで土竜倒すって凄すぎるわ。


重そうな一撃がお兄様に迫った。でもお兄様は威力の大きな攻撃が来るというのにそれを迎え撃つ姿勢だ。


甲高い金属音が鳴る。


ディーノさんの目が見開かれた。


お兄様はディーノさんの剣を受け止めると、すかさず技を次々と繰り出しカウンターを仕掛ける。ディーノさんはお兄様の剣を受け流したり打ち払ったりするけど、お兄様にはさっき斬りかかった時のようにあまり思ったように効いていないようで怪訝な表情を浮かべている。


あれは物理攻撃耐性スキル……! 今大会で初めて使ったわ。身体強化スキルは使えなくなるけど、お父様やヴィエルジュ騎士団の皆に叩き込まれた体術があるし、攻撃の威力が強いディーノさんに対してこっちのスキルで防御し続ければ、体力値が化け物級のディーノさんでも消耗が激しいはず。お兄様の体力値は既に3万を超えているらしいから、なんとか持ち堪えられるかもしれない。


ディーノさんもお兄様が物理攻撃耐性のスキルを使っていることがわかったらしい。でもわかっても攻撃の手を止めなかった。余程自分の体力値に自信があるようだ。


お兄様もスキルで防御をしつつ攻撃を重ねる。


会場中に剣戟の音が激しく響き渡る。



戦いは拮抗した。両者のスキルを駆使した熾烈(しれつ)な戦いは一向に終わりを見せない。気づくと試合開始から既に13分が経過していた。


あと少しで制限時間が……! お兄様、頑張って!


観客が固唾をのんで戦いを見守る。


闘技場で戦う2人は共に大量の汗を流し、お互いの顔に疲労の色が現れている。


すると、ディーノさんの目に額から流れる汗が入ったのか一瞬動きが鈍くなった。お兄様はその隙を見逃さず、至近距離で剣圧を放った。


ディーノさんは間一髪その剣圧を剣で受け止めたけど、踏ん張れず後方に飛ばされる。でも身体強化で剣圧を流し場外ギリギリで止まった。もうちょっとで場外だったのに。


「――そこまで!」


制限時間が来て、審判のファビウス団長が試合終了の声を張り上げた。


ああ、時間が来ちゃった……


「だぁっ、終わってしまったー!」


ハインが頭を抱えて叫ぶ。


観客席からも嘆く声が上がる。


お兄様とディーノさんは息を切らしながら、お互いに見つめ合っていた。


「え、で、どうなるんでしたっけ」


「残った魔力値と体力値の総合を魔道具で測り、多かった方の勝ちだ」


団長が険しい顔で腕を組んで応える。


「まじすか。ええ、どっちだ……ノア様ずっとスキル使ってましたし、相手も使ってましたけど体力値無尽蔵ですし……」


ホントどっちだろう……体力値は負けててもお兄様は元々の魔力値が割と高いし……でもディーノさんも魔力値が高い場合もあるし……どうかお兄様の方が多く残ってますように……!


観客席からもざわざわと「どっちだ」の声が聞こえる。


そんな中、闘技場の中心に高さが1m程の木製の四角い柱のような台が係員によって設置された。


そして入場口から黒いローブを羽織った男性が現れる。


「魔塔主様だ!」


観客から驚きの声が上がる。


モニターを見ると、黒髪に青のメッシュをいれた魔法師団長が、設置された台に近づき、持っていた何かをその上に置いた。


それは白い立方体で天頂部分には透明な魔石がはめ込まれていた。立方体の側面には「0」とデジタルな数字が青く光っている。


魔法師団長が拡声の魔道具で話し出す。


「えー、お2人共お疲れ様でした。制限時間が来てしまったので、これからは残った総合値で優勝を決めたいと思います。これは魔力値と体力値の総合値を測る魔道具です。この日のために寝る間を惜しんで作りました。お2人には申し訳ないですが、今日出番があって良かったです」


どっと会場から笑いが起きる。本当にこの人は引きこもりなのかってくらい陽気だ。


「ではさっそく始めましょうか」

次回は2/20(木)に投稿致します。

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― 新着の感想 ―
お兄様ステキ!判定が数値ってのが納得いかない、どうか試合内容で勝ってて欲しいなぁ。 あと主人公は少ないバラエティの大技を連発も悪くないけど、自己にバフとかトリッキーな小技もぜひ憶えてほしい… でなきゃ…
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