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同居




 

自分がどうしてここにいるのか、さっきの男が誰なのか思い出し項垂れるゼイン。


自分の記憶にない出来事までも見てしまい、後悔やら恥ずかしさで消えてしまいたい気持ちになる。


「(私は四季の神の一神。夏の王ゼイン。こんな失態を犯してしまうなんて。他の三神に申し訳なさすぎる)」


恥ずかしさでうずくまる。


神の力を使って思い出したので自分の目からではなく起きたことを第三者として見るので自分が寝た後のことも知ってしまう。


忘れたくても忘れることなどできない。


恥ずかしさと申し訳なさでレオンに合わす顔などないと思っていると「朝食できたぞ、食べれそうか」いきなり扉を開けて入ってくるレオン。急いで頭からシーツに包まるゼイン。


「まだ、体調が悪いのか」


シーツに包まっているゼインを見て声をかけるレオン。


ベットの縁に腰掛けシーツの上からゼインの背中を優しく撫でる。

 

しばらく背中を撫でられていたゼインがシーツから顔をだす。その瞬間二人の視線が交わる。


「体調はよくなったか。朝食は食べれるか」


ゼインのおでこに手を置き熱はないかと念のため確認するレオン。


ゆっくりと頷き「お陰で楽になったありがとう」とお礼を言うがシーツで鼻まで隠すゼイン。


「一緒に食べよう」


レオンが手を伸ばす。その手を掴み起き上がるゼイン。




「いつまでこの町にいるんだ」


ご飯を食べていたらいきなりそうレオンが尋ねた。


「夏の間はいるつもりだ」


ゼインの城はこの町から見える山を越えた森の中にある。


四季の神として地上に降り立ち城を建ててからはそこからでたことはない。もう何百年もの間ゼリョルデ国で過ごしていた。


「そうか。なら、夏の間はウチにいるか?」


レオンの言葉に口に入れていた料理を喉に詰まらせるゼイン。


「おい、大丈夫か。水だ」


咳き込むゼインの背を撫でながらコップを渡すレオン。


まさかの提案に驚いたが、これ以上人間の町にいるつもりはないと思い断ろとするが「本当にいいのか」と気付いたらそう口にしていた。


自分の言葉に驚き訂正しようとしたが「もちろん。これからよろしくな、ゼイン」と手を差し出す。


「こちらこそ、よろしく。レオン」


レオンの手を握る。


少しして「(しまった。また、違うことを言った)」と後悔するがゼインは夏の間レオンと一緒に過ごせることに心を弾ませていた。





「ベル」


レオンが出掛ける準備をしているときにその名を呼ぶ。


「はい、ゼイン様」


レオンの部屋に現れるベル。


「夏の間、この家で過ごすこたにした。何かあったらまた呼ぶ」


「かしこまりました」


「城のことは任せたぞ」


ベルを信頼しているからこそ頼むゼイン。


「お任せください。では、失礼します」


そう言って姿を消すベル。


「お待たせ、ゼイン。行こう」


「あぁ、今日はよろしく」


「任せてくれ」





「ゼイン様にもようやく春がきたのですね」


先程のゼインの表情を思い出しそう呟くゼイン。どうか、上手くいきますようにと祈る。


何百年ぶりの楽しそうな顔のゼインを見て嬉しくて泣きそうになるベル。  


ゼインの幸せをあの日の出来事から誰よりも心から願っていた。

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