一緒に寝る
「おはよう」
太陽の光と誰かに見つめられているような感覚で目を覚ますと隣から声をかけられる。
声の聞こえた方に視線を向けると優しい顔をしたゼインがいた。
そうだった。
昨日も一緒に寝たんだった。
起きたばかりで上手く頭が回らない。
「んー、おはよう」
ゼインの首元にグリグリと頭を押し付ける。
暫くそうしているとハッと我に返り自分が今何をしているのか気づくと物凄い勢いで「ごめん」と言いながら離れる。
バンッ。
勢いよく離れたせいでベットから落ちてしまう。
自分がベットの上にいたことを落ちてから気づく。
「ーーーーッ」
頭を押さえながら痛みに耐える。
「大丈夫か?」
「大丈夫だ。大したことじゃない」
「だが、すごい音がしたぞ」
怪我の具合を見ようと手を伸ばすが、それより先に立ち上がる。
「本当に大丈夫だ。気にしないでくれ。顔を洗ってくるよ」
ゼインの顔を見ず早口でそう言うとその場を逃げるように外へ出る。
「一体どうしたんだ?」
レオンの態度が急におかしく、どうしたんだと不思議そうに首を傾げながら出て行った方を見つめる。
「朝から心臓に悪すぎる」
川に頭から突っ込んで熱を冷まそうとする。
さっきのゼインの顔を思い出したら、また顔に熱が集まってくる。
もう一度頭を川に突っ込んで熱を冷ます。
何度かそれを繰り返して漸く落ち着きを取り戻す。
「(やっぱり、今日ベットを買いに行こう。うん、それがいい。毎回朝がこれでは身がもたない)」
ゼインの顔はレオンが今まで出会った人達の中で群を抜いて顔が整っている。
初めてゼインを見たとき顔だけなら、女性と間違われても仕方ないくらい美しい顔立ちだった。
正直レオンは人の顔に興味などないが、ゼインのことは美しいと思った。
そんな顔が毎朝自分にあんな優しい目をして微笑まれたら心臓に悪い。
悪すぎる。
あんな風に微笑まれたら勘違いする者は大勢いるだろう。
レオンはゼインのことをそんな風には見ていないが、このままでは自分も勘違いしてそんな目で見てしまうかもしれない。
「やっぱり、寝る場所は別にしよう」
ゼインのことは友として好きだし、一緒にいて居心地が良かったし、失いたくないと思った。
こんなことで折角できた縁を切りたくなかった。
一瞬でもゼインのことをそう思ってしまった自分が怖く、絶対今日中にベットを買いに行こう、と決意する。
「ゼン!今日はベットを買いに行こう!」
急いで家に戻り、扉を勢いよく開けて叫ぶように言う。
「どうしたんだ、急に?何かあったのか?」
レオンの髪が濡れていることに気づきタオルを取りにいく。
昨日レオンが拭いてくれたみたいに、レオンの頭を拭く。
「いや、あの狭いベットに二人で寝るのはきついだろ。ゼインだって一人で寝る方が楽でいいだろう」
いろんな意味で、と心の中で付け足す。
「だから、ゼン用のベットを買いに行こうと思ってな」
その方がいいだろう、と苦笑いしなから提案するが断られる。
「必要ない。私は問題ない」
首を横に振って、わざわざ買う必要はないと言う。
「迷惑なら私は床で寝るよ。気を遣わせてすまなかった」
ゼインはレオンと寝るのが好きだった。
あの日以来寝るのが怖く寝ることができなかったが、レオンが隣にいると何故か安心できいつの間にか眠れていた。
たった二回しか寝ていないが、体が軽くなり、頭がすっきりし、体の調子が良くなった。
人間界での生活はここ数百年、ゼインには苦痛でしかなかったがレオンが傍にいると何故かそれが消える。
寧ろ幸せを感じる。
もし、自分の我がままでレオンに迷惑をかけたなら申し訳ないと思った。
こんなこと今まで思ったことないのに、レオンといると知らない自分が現れる。
「いや、そんなことはない。ゼンが床で寝るくらいなら俺が床で寝るよ」
友を床で寝させることなど許せない。
それなら自分が床で寝た方が何倍もいい、と。
「レオン。君が床で寝る必要などない。ここは君の家だ。床で寝るのは私だ」
「いや、俺だ」
「いや、私だ」
どっちが床で寝るか言い合うが、急に馬鹿馬鹿しくなりぷっと同時に笑い出す。
「一緒にベットで寝ないか」
ゼインがそう提案すると「ああ、そうしよう」と。
馬鹿らしくなってどこで寝るかなんてどうでもよくなる。
騎士団が設立されたばかりの頃はやることが多くて家に帰れずよく団に泊まった。
団は小さく仮眠室は二部屋だけ。
ぎゅうぎゅう詰になりながら寝たこともある。
それに比べたら大したことない。
大の大人が一つのベットに寝るのには抵抗はあるが、ゼインがどこか嬉しそうなのでいいかと思えてきた。
別にレオンもゼインと寝るのが嫌なわけでもないし。
ただ、恥ずかしかっただけ。
自分の我がままで朝からゼインに迷惑をかけたと申し訳なく感じる。
結局、一緒に寝ることは変わらないならこんなこと言わなければよかったと後悔する。
自分の決意がこうもあっさり崩れ落ちたことに驚きを隠せない。
心のどこかでレオン自身ももしかしたら望んでいたのかもしれない。
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