昔の記憶
「なぁ、レオン。これは町にもあるのか?」
相当ブランコが気に入ったのか椅子を揺らしながら尋ねる。
「いや、町にはないな」
ゼインにそう尋ねられ、町には子供が遊ぶ場所や遊具がない事に気づく。
そしてふと、子供達の遊び場を作ったら喜ぶのではないか、とその光景を想像する。
明日、皆に聞いてどうするか決めよう。
「そうなのか…………、もし遊びたくなったらここに来るしかないのか」
しょぼん、とさっきまでの楽しそうな表情から一変して悲しそうな顔をする。
「レオン」
「どうした?」
「どうして、ここにブランコを作ったんだ?あまり人が来ないのだろう」
町から遠いし、人はあまり来ないし、ひまわりの中にあってわかりにくい。
何でここに作ったのか疑問に思う。
「ああ、それは、たしか…………なんだったっけ?」
昔、ヴァイオレットに教えてもらった記憶を必死に思い出す。
たしか、あの頃のレオンはサルビアとヴァイオレットに引き取られて三年目くらい経ったとき。
引き取られて一年目の頃と違い本当の家族のように仲良く暮らしていた。
ある時サルビアが「レオン、明日晴れだったらひまわり畑に行かないか?」と言われた。
よくヴァイオレットが話していた場所のことで行ってみたいと思っていたので「行きたいです!」と元気よく返事をした。
「そうか。なら、明日は朝早くに家を出るから今日は寝ような」
「はい!」
元気よく、おやすみなさい!と挨拶をして布団に入るが念願のひまわり畑に行けるのが楽しみすぎて中々寝られなかった。
「レオン、そろそろ起きろ」
サルビアが寝ているレオンに声をかける。
「おはよう、サルビアさん」
ふわぁ、と大きな欠伸をしながら挨拶する。
あれだけ楽しみで中々眠れなかったのに、気づいたら寝ていた自分に起きて早々感心する。
「おはよう、レオン。今日はいい天気だ。顔を洗っておいで」
「はい」
部屋から出て台所で料理しているヴァイオレットに挨拶をしてから外に顔を洗いに出る。
井戸から水を汲んでその水を桶に入れ直してから顔を洗う。
「ふー、すっきりした」
タオルで顔を拭く。
「サルビアさん、俺も手伝います」
早くひまわり畑に行きたくて仕方ない。
サルビアに言われたことをいつもの五倍の速さでどんどん片付けていく。
「あとは、馬だな。レオン、悪いが馬の準備をしてきてくれ。その間に俺はこれをまとめておく」
「はーい」
元気よく外に出て馬小屋に向かう。
「マーサー、フィリップ。おはよう。今日はよろしくな」
首を撫でながら二頭に挨拶する。
二頭はレオンに撫でられるのが嬉しいのか気持ちよさそうな顔をする。
二頭が満足すると玄関まで連れていき柵に手綱を括りここまで待つよう言ってから家に戻る。
「サルビアさん。終わったよ。次は何をすればいい?」
「もうないよ。レオンはこれを持ってくれ」
まとめた荷物を持つよう頼む。
「わかった」
こっちの準備は終わった。
後は、ヴァイオレットの料理が終わるのを待つだけ。
「ヴァイオレットさん。何か手伝うことはある?」
「そうね、なら料理をテーブルまで運んでくれる?」
「わかった」
皿の上に盛り付けられている出来立ての料理をテーブルの上にどんどん置いていく。
ヴァイオレットは昼食用のご飯をバスケットに入れていく。
サルビアが飲み水を汲んで戻ってくると、揃って食材に感謝して朝食を取る。
「レオン。今日はいつもより遠いところに行くから疲れたら迷惑をかけるとか思わずすぐに言うのだぞ」
よく二人で馬に乗って散歩をしたりするが、ひまわり畑までの道のりは散歩する距離の三倍。
慣れたといってもこれほど長い距離を走るのは初めてなので心配してしまう。
「うん、わかった。でも、きっと大丈夫だ。そんな気がする」
根拠のないことを自信満々に言う。
「そうか。なら、いい。だが、そうなったときは必ず言うのだぞ」
もう一度念を押してから「では、行こうか」
バスケットを持ったヴァイオレットを前に座らせ、馬を走らせる。
その後ろについていくレオン。
ーーすごいな。
ヴァイオレットを乗せたままいつもよりスピードがあるのに余裕で山道を走るサルビアをかっこいいな、と後ろから尊敬の眼差しでみつめる。
サルビアの後ろ姿がレオンにはこの世の誰よりも格好よく頼もしく見えた。
将来自分も誰かにこんな風に思ってもらえるような立派な男になりたい。
なってみせる。
そう自分自身に誓う。
「綺麗」
ひまわり畑を丘の上から眺めそう呟く。
太陽の光に照らされ、ひまわりが輝いているの光景が上から見るとまるで黄金の海みたいに幻想的な美しさを放っていた。
今漸く理解した。
ヴァイオレットが何故あんなにひまわり畑の話をしたのか。
何故自分にもみて欲しいと言ったのか。
この光景を見て漸くあの言葉の意味を理解できた。
あの日、二人に引き取られ初めてヴァイオレットと星空を眺めながら人生に絶望していた自分に励ますでもなく、ただ事実だけを言ったであろう、その言葉はあの頃のレオンには理解できないものだった。
ーーレオン。貴方もあの光景をみたらきっとこう思うわ。この世界は捨てたもんでもないって。あらゆる角度から世界をみた貴方にはこの世界はとても残酷に映っているかもしれない。でもね、それだけではないの。本当にこの世界も美しいのよ。いつか、きっとそらがわかる日がくるわ。
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