ひまわり畑 3
「えっ、嘘だろ」
そう呟くと全力疾走で逃げる。
まさか、見つかるとは思わず変な声が出てしまう。
何故ここに?
どうやってここにいるとわかった?
というかよくこんな広い範囲内で自分を見つけられたなと感心してしまう。
ひまわりの中を軽々と走り続けたが、暫くして冷静さを取り戻したレオンは少し大人げなかったかと反省し走るスピードを落とし後ろを振り向こうとした瞬間パシッと腕を掴まれる。
「レオン」
ただ一言ゼインはレオンの目を見て名を呼ぶ。
レオンが急に走り出したので、何か自分はしてしまったのかと焦り急いで後を追う。
神力はつかわなくとも神であるので足は早いが、レオンも相当早い。
それにひまわりの花を颯爽と走るので追いつくのに少し時間がかかってしまった。
「ゼ……ン」
俺の負けだ、と言おうとしたがゼインの目が酷く悲しげで何も言えなくなる。
何か言わなければと思うも、急に手を掴まれ体のバランスを崩したレオンはそのまま地面にぶつかりそうになる。
「危ない」
ゼインのその声でレオンはハッとするも、気付くのが遅すぎ、衝撃に備える。
ドンッ。
地面にぶつかる音がする。
「……痛くない」
何が起きたのか把握しようとゆっくりと目を開けると何故かゼインが下にいた。
すぐにゼインが自分を助けてくれたのだと気づいた。
「すまない、ゼン。大丈夫か?」
そう言って顔を上に上げるとすぐ近くにゼインの顔があって固まってしまう。
たった数秒だが、お互い金縛りにあったみたいに二人共動けなかった。
我に返ったレオンが「すまない」ともう一度言ってパッと離れる。
「私は大丈夫だ。レオンの方こそ大丈夫か?」
ゼインも体を起こす。
「ああ、お陰でどこも怪我していない。ありがとう」
さっきはあまりの近さに驚いて失礼な態度をとってしまうが、すぐにいつも通りに戻る。
「なら良かった」
花が咲くような時の愛らしい笑みを浮かべる。
レオンに怪我がなく安心する。
自分は神だからこれくらいのことでは怪我をしないが、人間はちょっとした怪我で死んだりするかもしれない。
レオンが倒れるとわかった瞬間体が勝手に動いてレオンを抱きしめ守るように倒れた。
自分の行動に驚き戸惑っていた。
「立てるか?」
ずっと座って動かないゼインを心配して手を伸ばす。
「ああ」
レオンの手を掴み立ち上がる。
妙な空気が二人の間に流れる。
どちらともなく歩き出すが会話はない。
レオンは何か言おうとして口を開いたり閉じたりを繰り返している。
別にさっきのはちょっと事故みたいなものだし、男同士だし、大したことじゃない。
そう思うも妙にそわそわして落ち着かなかった。
「ん?あれは何だ?」
ゼインのその一言で漸く長い沈黙が終わりをむかえる。
レオンはゼインの少し後ろを歩いていたので急に立ち止まったゼインを不思議に思いながら「どうした?」と声をかける。
「あれは?」
ゼインの指差す方をに目を向けると白い物体があった。
「ああ、あれはブランコだよ」
「ブランコ?」
ゼインの知るブランコとはあまりにも違うのでつい首を傾げてレオンを見る。
天界にあるブランコは椅子が木ではなく雲でできている。
それに乗ったことはないが、子供の神達が遊んでいるのを見たことがある。
ブランコとは雲の上に神を乗せるとクルクル回って飛んだり、星を周りに降らせたりして遊ぶものだと思っていた。
人間界にもブランコという乗り物があることにも驚いたが、これでどうやって遊ぶのか謎だった。
「気になるなら乗ってみるか?」
「ああ」
二人はブランコのところまでさっきより少し早足で近づいた。
「二人で乗るのか?」
ブランコにしては二人の背よりも小さい。
座るところは大人二人が余裕で座れるくらいある。
「まあ乗れるけど、とりあえず座ってくれ」
レオンはブランコの後ろにいき、ゼインに座るよう促す。
「これでいいのか?」
「ああ。とりあえず、足を地面から離してくれ」
「わかった?」
レオンに言われた通り足を地面から離す。
これに何の意味があるのか、と尋ねようと口を開く前にレオンが背もたれのところを持ち後ろに引っ張る。
「では、いくぞ」
「ああ?」
何が始まるのか全くわからないがとりあえず返事をする。
ゼインが返事すると、思いっきり背もたれを押しブランコを動かす。
それを何度か繰り返す。
「気持ちいいか」
太陽のような眩しい笑顔ですそう尋ねる。
「ああ」
ブランコが揺れるたび気持ちいい風が頬をかすめる。
暫くするとレオンはブランコを押すのをやめて隣に座る。
「楽しかったか?」
「ああ。初めてやったがブランコとはいいものだな」
こんなに楽しいものならもっと早くやればよかった。
「そうか」
嬉しそうにするゼインを見て今度は座ったままブランコを漕ぐ。
ゼインもレオンみたいに地面を蹴ってブランコを漕ぐ。
ゼインが満足するまで結構な時間ブランコを漕ぎながらたわいもない話しをした。
自分の立場を忘れ、ただ幸せに笑い合った。




