ひまわり畑
「かくれおに?」
人間の子供達が好んでする遊びだと昔シグレから聞いたことがある。
ゼインは神なので人間がするような遊びをしたことが、生まれてから一度もないのでどういうものか知らない。
たまに天界で人間の遊びをしている者達もいたが、誰もゼインを誘うことはなかった。
当然だ。
ゼインは神々の中で二番目に高貴な位をもつ四季の神の一神。
誰が誘うことなどできようか。
そもそもゼインは人間の遊びに興味などなかった。
だが、楽しそうに遊ぶ者達を少し羨ましく思っていた。
もし自分もやりたいと言えば気を遣って一緒に遊んでくれるだろうが、それどころではなくなるのは目に見えている。
レオンが自分の正体を知らないとはいえ、一緒に遊ぼうと誘ってくれるのが堪らなく嬉しかった。
「嫌か?」
何も言わないゼインに気を悪くさせたかと申し訳なくなる。
大の大人が子供のする遊びをするのは嫌だと少し考えればわかることを、ゼインといるのが楽しくてついはしゃいでしまった。
「気にしないでくれ」
そうレオンが言う前にゼインが口を開く。
「やろう」
「本当か?」
「ああ。だが、私はかくれおにをしたことがないから遊び方を知らないんだ。教えてくれるか?」
その言葉でゼインが困った顔をした理由が、遊んだことがないから自分が遊んでも大丈夫なのだろうか、と心配していたのだと勘違いした。
「勿論だ。かくれおには難しい遊びじゃない。至って簡単な遊びだ」
「そうなのか?」
「ああ。本来は大人数で遊ぶ遊びだが、二人でもできる遊びだ。二人の内どちらかが鬼になって、もう一人が隠れて鬼から逃げる遊びだ。見つけて捕まえたら鬼の勝ち。逃げられたら鬼の負け。な、簡単だろ」
ざっくりと遊び方を説明する。
「うん。どっちがどっちをやるか?」
「んー?これで決めよう」
コインを見せる。
ゼインはコインでどうやって決めるのかわからず首を傾げる。
「今から俺がこれを高く放って手の平で掴むからコインが表と裏どっちが上か当ててくれ。もしゼンがどちらが上か当てられたら鬼で外したら隠れる側。それでいいか」
コインの表と裏を見せながら説明する。
「わかった」
「よし、じゃあ投げるぞ」
そう言うと親指でコインを高く放る。
コインが落ちてくると手元が見えないようゼインから見えないよう背中で隠しながら掴む。
「どっちだ」
「じゃあ裏で」
裏の絵柄は蓮の絵柄、表は数字の百。
蓮の絵柄が上ならゼインは鬼。
「了解、なら見てみよう」
レオンはコインを隠していた手をどけどっちが上か確認する。
「蓮、裏だ。凄いな、ゼン。よくわかったな」
「たまたまだよ」
人間が当てたら目がいいとか褒められるかもしれないが、ゼインは神なのでこれくらい大したことではない。
レオンが指でコインを弾いた瞬間にどっちが上になるか簡単にわかった。
「ということはゼンが鬼で俺が隠れる側か。じゃあ、ここで百数えてくれ。百数え終えたら俺を探し始めてくれ。あっ、でもその前に、数え終わったらもういいかいって言ってくれ」
「何故だ?」
不思議そうな表情でレオンに尋ねる。
「そういう決まりだからだ」
そう言われれば何もいえないので「わかった」と頷く。
「範囲はひまわり畑でいいか?いや、結構広いしもう少し狭くするか」
ひまわり畑全部を範囲にしたら鬼の方が不利になる。
「いや、大丈夫だ。ひまわり畑が範囲でいい」
「本当に?」
「ああ」
レオンが本当に大丈夫か、という目で見てくるが見つける自信があるので問題ないという。
自分が負けるとは一ミリも思っていない。
「じゃあ、俺は行くよ。俺がもういいよっていたら捜しはじめてくれ」
そう言いながら、レオンはひまわりの中に入っていく。
レオンの姿が見えなくなると、ゼインは数をゆっくり数えはじめた。
「一、ニ、三……………、九十六、九十七、九十八、九十九、百。もういいかい」
レオンに言われた通り尋ねたが、こんな広い範囲で自分の声がレオンに聞こえるのだろうかと心配になる。
「もういいよ」
レオンの声が聞こえる。
「あっちだな」
余計な心配だったな、とレオンの声がした方に足を進める。
今気づいたが、これ二人でやったら声出した時点で位置がバレるのでは、と。
大勢なら問題ないかもしれないが、二人だと……。
うん、まあ、レオンが言ったしいいか、と考えるのをやめひまわりの花の中を歩いていく。
「もういいよ…………、あっ、しまった。これじゃあ、居場所がバレる」
叫んでから二人でやると自分の居場所をただ教えているようなものだと気づく。
急いで居場所を変えなければと走り出す。
「ここなら、問題ないだろう」
寝っ転がり、ひまわりと空をぼっーと眺める。
時々風が吹く。
暫く気持ちよさそうに目を閉じて休んだ。
ゼインは今頃、自分が最初にいたところにいてその辺りを捜しているはず。
レオンはその場から右に走り出しある程度離れたら、元いた場所の近くに戻るため進路変更してまた走り出した。
勝ちを確信してので、ゼインが降参するのをここで待つ。
初めての相手に少し大人がなかったと反省する。
ガサガサ。
何かが近づいてくる音がして目を開けその場からすぐ動けるよう立ち上がる。
「あっ、いた」
少し離れたところにいるゼインと目が合う。
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