町の案内
「すまない、ゼン。待たせてしまった」
長い時間ゼイン待たせた事を謝罪する。
ゼインはゆっくりと後ろを向き「もう用は済んだのか」と優しく微笑む。
ゼインはレオンが来るまでの間ユーリの話を黙って聞いていた。
レオンから見ても二人は仲良くなっていて嬉しくなる。
「ああ、もう終わったよ」
ゼインに笑いかける。
「団長お疲れ様です」
「ユーリ、ゼンの相手をしてくれてありがとう。お陰で助かったよ。今度何かご馳走するよ」
ユーリのお陰でゼインを一人にしないで済んだ。
「本当ですか。約束ですよ、団長」
少年のように目を輝かせ喜ぶ。
「ああ、約束だ」
「絶対ですからね」
ユーリにとって憧れのレオンと食事をするのは何よりも最高の贈り物だ。
「勿論だ。俺は今から街に行くから、いつなら大丈夫かわかったら教えてくれ。また明日な」
「はい」
ユーリはレオンとゼインを見送る。
「結構待たせてしまったよな。本当に済まない」
町を案内をするため馬車ではなく歩いていく。
「気にしてない。それに、結構楽しかったから問題ない。だから、そう気にするな」
「そうか。ユーリとは一体何の話をしてたんだ」
会ってすぐユーリと仲良くなったので何の話をしてたのか気になり尋ねた。
好きな女の話か。ユーリは年頃だしゼインは年上だから相談にのっていたのかもしれない。
一人うんうんとそうだろうなと頷く。
「レオンのことだ」
本人を前に何でもないように答える。
「そうか」
何も考えずそう返事をするが、すぐに「(ん?俺のこと!?)」と目を見開き心の中で叫ぶ。
自分の話しをしていたと言うので余計に何を話していたのか気になる。
ゴホン。
レオンは気持ちを落ち着かせようと咳払いする。
「えっと、ちなみにどんな話をしてたんだ」
レオンは昔の自分の失態の数々思い出しぎこちない笑みを浮かべた。
団長になった頃の自分は上手く団員達を指揮できず町の人達に迷惑をかけたことか、団長就任の祝い酒だと言われ代わる代わる酒を浴びるほど飲まされ醜態を晒してしまったことか、初めての団長会議で嫌な仕事を押し付けられ団員達に迷惑をかけたことか。
思い出せば出すほど過去の自分の駄目駄目さにはずかしくなる。
一体ユーリとどんな話をしたのか、知りたいような知りたくないような何とも言えない複雑な気分になる。
ゼインが口を開くとゴクッと喉が鳴る。
「レオンが物凄く頼りになって格好いいって話だよ」
「えっ」
まさかの返事に戸惑いゼインの顔を見る。
ゼインはレオンと目が合うと花のように可憐で愛らしく微笑む。
「レオンは沢山の人に愛されている。それはレオンが皆の為にその身を捧げて守ったからだ。当然だ」
会って二日目だがレオンの人柄の良さにすっかり絆される。
「私とは違う」
ゼインの顔が一瞬曇るもレオンは真っ赤な顔を隠していて気づかない。
「えっ、いや、そんなことはない」
これまで散々団員達や町の人達に褒められてもここまで顔を真っ赤にして照れたことはない。
寧ろ今までなら「ありがとうございます。俺一人の力ではきっと何もなし得ることはできませんでした。皆さんの協力のお陰です」と太陽のような眩しい笑顔を向けお礼を言う。
でも、ゼインに言われるといつものように言葉が出てこず何も言えない。ただ、顔を真っ赤にして照れる。
「私には彼らのその気持ちがなんとなくわかるよ。私も昨日会ったばかりなのに、もうレオンのことが好きだから」
好き。
その言葉でレオンの顔は先程よりも顔を真っ赤に染まる。まるで苺のようだ。
「ゼン。君って人はよくそんなことを恥ずかしげもなく言えるな」
レオンも結構恥ずかしことを知らず知らずに言っているが、流石に今のをあんな笑みで言うことはできない。
「そうか。私は思ったことを言っただけだよ」
恥ずかしいことを言ったかな、と自分の言ったことを思い返すもどの言葉を指しているのかわからず首を傾げる。
人間界で言うと恥ずかしい言葉でも、天界では当たり前に言われている。逆も勿論ある。
そもそも神と人間の価値観は違う。
二人の価値観が違うのは仕方ないことだ。
「(無自覚とはたちが悪い)」
これは知らず知らずの内に女を結構泣かせているな、とレオンは思う。
あんなことをあんな顔で言われたら勘違いする女は大勢いる。
陰で鈍感と呼ばれるレオンですら不覚にもドキッとした。剣一筋のレオンでさえこれなのだから、女だったら即落ちている。
レオンははぁ、とため息を吐き手で顔を覆う。
これ以上聞いていたら身がもたないので話しを変える。
「そうか。これから何処へ行きたいとか決まっているか。食べたいもの、見たてみたいところとか、したいことがあれば何でも言ってくれ」
ゼインは気にしなくていいと言ったが、長時間待たせてしまったお詫びで何でも言うことを聞くつもりでいる。
「では、昨日レオンが言っていたひまわり畑に行ってみたい」
昨日の夜、レオンはこの町の良いところの話を沢山した。その中でもひまわり畑の話しを熱く語った。
ゼリョルデ国シルェス市のひまわり畑は他とは違い、六月から八月いっぱい咲く。約三ヶ月間咲き誇るひまわりはまるで神の恩恵をうけているのではと疑いたくなるほど美しい。
一度このひまわり畑を目にすると他の所で咲くひまわりでは物足りなくなる。
夏にしか咲かない花なのでレオンは毎年いちどは訪れた。
時間帯や天気によって美しさは変わるがいつ来ても素敵だ。
この町に来たのなら絶対にみた方がいいと酔っ払いながら力説した。
ゼインはひまわり畑がどんな所か知っているし見たことはあるが、それは本当に自分が知っている場所ではなく違う場所か疑問に感じこの目で確かめたくてそこに行きたいと言う。
それに、ひまわりを最後に見たのは四百年前。レオンがあれほど見た方がいいと言ったので久しぶりに見てみたくなった。
「ひまわり畑か。いいよ、そこに行こう。でも、その前に昼食にしよう。ひまわり畑は町から少し離れているからな。先にご飯を食べて行かないと途中で腹が空いてしまう」
時間帯的にもちょうどいいから、先に食べた方がいいだろう。
「わかった。そうしよう。なら、レオンの好きなところに連れていってくれ」
ゼインは神だから食べなくても問題はないが、人間のレオンは違う。食事は生きることに必要不可欠。
忘れていたわけではないが、次からもっと気を付けようと心がける。
「気持ちは嬉しいが、せっかくだからゼインの食べたいところに行こう」
レオンもゼインもお互いに気を遣いお互いの好きなところに行こうとする。
「私は何が美味しいのかよくわからない。昨日レオンがくれた食事は初めて食べたものばかりだったが、どれも美味しかった。レオンはずっとここにいるから何が美味しいか知っているだろう。だから、レオンの好きな店なら美味しいと思った。それに、何となくだがレオンとは好みが似ている気がしたんだ」
だから、レオンの好きなところでいい、と伝える。
「わかった。とびっきり美味しい店に連れていくよ」
レオンは自分の胸を叩き自信ありげに言う。
「それは楽しみだ」
レオンはこっちだと今から行く店の方角を指し歩きはじめる。ゼインもレオンの横を歩きついていく。
レオンは店に着くまで色んな話しをゼインに聞かせた。初めて聞く話や元々知っている話、昨日酔っ払って話したことも。
レオンの話しを聞くのは楽しくて時間があっという間に過ぎ去っていく。
町の中にレオンが歩いているとほとんどの人がレオンに話しかける。話しは何度も途切れだがゼインは嫌な顔一つせず幸せな顔をずっとしていた。
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