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王命 3

嘘を言っているようにはみえないが、本当のことを言っているようにもみえない。


まだ、何か隠しているような気がする。


ウィリアムの話がどこまで本当かわからない以上無視するのが一番だが、もし万が一四百年前に起こった呪いがこの国もかけたら全員生き残ることは不可能だ。


ユエルもジョンもその可能性は限りなく低いと思うが、万が一があった場合を考えるとレオンに行ってもらうしかない。


「わかりました。カメリアの森には我々第十一騎士団が向かい対処します」


それ以外いうことなど許されない。


ウィリアムはレオンがそう返事をすると誰にもニヤリと笑う。


ユエルもジョンもレオンを気遣うような視線を向けていたのでウィリアムの笑みに気づかなかった。


「そうか。詳細は後で部下から受け取ってくれ。私はこれで失礼する」


ウィリアムは颯爽とその場から立ち去って行く。


暫く部屋に沈黙が訪れたが第一騎士団団長のリュークが「他に何もなければ今回の会議はこれで終わりということでよろしいですか」

と尋ねる。


誰も何も言わなかったが、それを肯定と捉え「では、これで解散ということにしましょう。お疲れ様です」と言い部屋から出て行く。


それに他の団長達も続いて部屋から出て行く。


「レオン。今回のことは俺の方でも調べておく。何か裏がありそうだしな。お前なら大丈夫だと思うが気を抜くなよ」


「はい。ありがとうございます」


深く頭を下げてお礼を言う。


ユエルが部屋から出て行くと一気に体の力が抜け机に倒れ込む。


「大丈夫か、レオン」


先程の王命の件の事を心配する。


「うーん、何とか」


今更決まった事をどうこう言っても仕方ないが、王や貴族のことを信用できず何かありそうで不安になる。


「今回はいつもの三倍濃い内容だったからな」


敢えて王命のことには触れずに言うジョンの優しさに感謝する。


今回の会議は過去一疲れる内容ばかりだった。


レオンの件をのければ、一番最悪なのは隣国と戦争することになるかもしれないということ。


ユエルがいる間は他国との戦争はありえないと皆思っていたが、どうやら隣国のヘデラに何か不穏な動きがあるらしい。


詳しいことはまだ何もわかっていないが、ヘデラの貴族達が戦争をほのめかすことを言っていたらしい。


ジョンはそのヘデラを調べるよう言われている。レオンほどでは無いがジョンも相当な嫌がらせを受けている。


お互い深いため息を吐き顔を見合わせぷっと吹き出す。


しけた顔をしても仕方ない。


「いつか誰にも文句を言わせないくらいの大物になればいい。そうすれば、大切なものを守ることができる」


二人は声には出さなかったが同じことを思っていた。


「そろそろ行くか」


「あぁ、待たせてすまない。ありがとう」


急にジョンはレオンを甘やかしたくなり、レオンの頭がボサボサになるくらい撫でる。


「(可愛い奴め)」


普段は頼れる男なのに自分の前では少し子供じみて弟みたいな甘えん坊になる時がある。それが、嬉しくて可愛がってしまう。


二人で遅い昼飯でも食べようと都市部に向かおうとする途中で王都を守る団員達に会い言い合いをしてしまう。


レオンがそろそろまずいなと思い始めた頃ユエルが助けてくれた。


いつもユエルに助けられてばかりで申し訳ないと思い、お礼をさせて欲しいと願い出て昼食を共にしたが何故か奢られてしまった。


二人は自分達がだすと言ったが「ここは年長者の自分に格好つけさせてくれ」とはにかまれては何も言えなくなる。


二人はこんな大人になりたいとユエルの背中を見て思った。




「俺もユエル団長みたいになれるだろうか」


レオンの率いる十一団はユエルが率いる七団の次に強い。ユエルとジョン以外の団長はその事を認めようとを認めようとはしないが、レオンの実力はユエルの次に強い。


この国で二番目に強い人間だ。


人間相手なら一人で千人を余裕で倒せるくらい強い。ユエルは隣国との戦争で一個師団を一人で倒せるくらい強い。


だが、これは相手が人間だった場合だ。妖魔が相手では話が変わってくる。


妖魔には等級があり、魔、絶、凶、悪の四つにわけられている。


その内上の二つは人間では倒すのは難しいと言われており神でなければ倒せないと。


だが、絶の等級の妖魔をレオンとユエルは一人で倒したことがある。


本来なら絶を人間が倒すことなど不可能だが、この二人は見事に倒し英雄として崇められている。


魔に関しては流石の二人でも倒すことはできない。


魔の等級の妖魔は世界を破壊できるほどの力を持っていると言われている。


例え二人がかりで立ち向かうと一瞬で殺されるだろう。


この世界に魔は現在三体確認されているがこの国では確認されていないので、今回の王命は一応大丈夫だろうと無理矢理自分を納得させる。


それにもし魔だったらどれだけ足掻いても最後は全員殺されてしまう。


死。


その言葉が頭に過り墨で頭の中を真っ黒に塗り潰していく。


ウィリアムの部下から貰った資料を確認すると等級は悪となっているがこの情報を信じる訳にはいかない。


悪程度なら九師団で対処できたはずだ。


それに、ほとんど王都からきた依頼の情報は間違っている。


凶か絶のどちらかだろう。魔の可能性は限りなく低い。


一体なのか複数体なのかすらわからない状況では、団員をどれだけつれていけばいいか決められない。


それに、もし等級が絶だったらレオン一人で対処しなければならない。


あの時より強くはなったが、もし妖魔があの時のよりも強かったら自分は勝てるのだろうかと不安が頭に過ぎる。


自分の力で皆を守ることができる。そう自信をまって言えず手が震える。最悪な未来を想像してしまい怖くなる。


どうするべきか考えれば考えるほどわからなくなり、底無し沼に嵌ったように身動き一つ出来なくなる。


パリン。


「おい!大丈夫か」


「怪我はないか」


外から声が聞こえ急いで窓を開けて何があったか確認する。


「おーい、どうした。大丈夫か」


レオンは上から声をかける。


「団長。すみません。窓を割ってしまいました」


団員の一人が真っ青な顔で謝罪をする。


「怪我はしていないか」


団員はコクリと頷く。


「ならいい。ちゃんと掃除しとくんだぞ」


「「はい」」


数人の団員が返事する。


レオンは窓を閉め自分の席に戻る。


パチン。


思いっきり自分の頬を叩く。


「(うじうじするな。俺は第十一騎士団団長レオン・バーデンベルギア。俺がやらないと誰がやるんだ。あの時皆を守ると誓っただろう。今の自分で倒すことができないのなら強くなるしかない。もっと、もっと、強くなって俺が皆を守るんだ)」


今のレオンにとって町を皆を守ることが生きる理由。それで命が尽き果てたとしても後悔はない。




「あ!しまった!ゼンを待たせていたんだった」


勢いよく立ち上がりゼインのところに走って向かう。


結構な時間ゼインを待たせてしまった。お詫びをしなければ。


レオンはゼインが何が好きか知らないので後で聞こうと走りながら考える。


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