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王命

「レオン団長。あなた方第十一騎士団にある重要な任務を命じる。これは王直々のものである」


団長会議も終わるかけた頃いきなり男が部屋に入ってきたと思ったら、自分の名を呼び王の命令だと意味のわからない事を言い出した。


レオンはいきなりの事でポカンと口を開けて呆然とする。


「(それって団長会議に乱入してまでいう事なのか。いや、王の命だからすぐ知らせにきたのだろうか)」


男の顔を見てどこかで見たことあるなと思いつつも、どこで見たのか思い出せない。


あと少しで思い出せそうなのにと何とも言えないモヤモヤ感が残る。


レオンが何も言わずにいると男は無視されたのかと思い顔を真っ赤にして怒りをぶつけようとするが、それより先にユエルが口を開いた。


「それは、今すぐ言わないといけないことなのか」


遠回しに邪魔をするなと言うが、男にはユエルの意図など伝わらず「はい。王の命なので」と嬉しそうに答える。


ユエルに声をかけてもらえて心の中でガッツポーズをする。


ユエルは騎士だけでなく王族、貴族、平民、全てに好かれられている。


「レオン団長。この命受けられますよね」


男は何を勘違いしたのかユエルは自分の手助けをしてくれたのだと思う。


そのため、団長会議を邪魔しレオンに強気の態度をしても大丈夫だと勘違いしてしまった。


「王の命なら俺に拒否権はないでしょう。後で詳しく話を伺いに行きます」


どうせ他国の調査か化け物退治に行け、だろうと何となく予想はつく。


今は団長会議中なので自分のせいで他の団長の時間を奪う訳にも行かないので後で男の所に行って詳しく聞きに行こうと思いそう言っのだが、レオンの態度が気に食わなかったのか男はここで詳細を説明すると言い出した。


「これは王命です。私は今すぐ貴方に伝えなければなりません」


たかが平民の団長のくせに出しゃばるな、と心の声が駄々漏れしている。


男にそう言われてしまうばレオンも他の団長達も逆らうことなどできない。


ただ男の話を黙って聞くしかない。


「レオン団長にはカメリアの森に行ってもらう」


カメリアの森と呼ばれる場所は今から四百年前まで人が住んでいたが、ある時から誰もいなくなり呪われた森として誰も足を踏み入らない場所として有名だ。


そんな場所に行けと命じる王もそれを許す家臣達もふざけている。


そもそも、そこはレオン達第十一騎士団の管轄区域ではなく第九騎士団の管轄だ。


「待て。そこはレオン団長の区域ではない筈だ。そこはカルロ団長が率いる第九騎士団の区域。それなのに何故レオン団長に行かさせようとする」


ユエルが意味がわからないと男に説明を求める。


レオンも同じ事を尋ねようとしていたので先に尋ねてくれたユエルに感謝する。


「私には王の考えることなどわかりません。ですが、これは王が直々に決めたことです。王に頼りにされるなどこれ以上ないほど光栄なことです。それだけで充分ではありませんか」


一見ユエルの問いに答えているようで全く答えていない。


男の変な価値観にレオン、ジョン、ユエルの三人は「こいつは馬鹿なのか」と心の中で突っ込む。


「おい。貴様なめているのか。俺は何故カルロ団長ではなくレオン団長がそこに行かなければならないのか尋ねているのだ。王の直々の命?光栄?ふざけているのか。我々は己の管轄区域を守るために団長になっているのであって王の犬になったつもりは毛頭ない。もう一度だけ尋ねてやる。何故カメリアの森にレオン団長を行かせようとする。答えろ」


静かに淡々と話すがユエルからは殺気が漏れている。


男はユエルの殺気に体中が震えだし冷や汗が流れ出す。


ユエルの求める返事など男にはそもそも出来なかったが、恐怖で上手く声が出せず何も話せなかった。


「もういい。お前では話にならない。この件に関わっている奴を連れてこい。今すぐにだ」


「は、はい」


震えた声で返事をする。足が震え上手く歩けないが何とか踏ん張り部屋からでる。部屋から少し離れると男は力が抜けてペタリと床に座り込む。


「ど、ど、どうしよう。お、俺もしかしてユエル団長を怒らせてしまったのか」


何故自分がユエルを怒らせたのかわからない。わかるはずなどなかった。


生まれも育ちも貴族な男には決して自分のどの行動がユエルをあれほどまで怒らしたのか理解できない。




「ユエル団長。何か問題でもありましたか」


宰相のウィリアムが胡散臭い笑みを浮かべながら入ってくる。


「(よりによってこいつか)」


ユエルはウィリアムのことが大嫌いだった。生理的に受け付けないほど、同じ空間にいたくなかった。


今すぐこの部屋から出ていきたかったが、自分が出ていくとレオンとジョンを守れる者がいなくなるので嫌な事を押し付けられてしまう、と何とか我慢をする。


「あれで、問題が無いと思っているのならお前に宰相は務まらないな。今すぐ辞めたらどうだ」


本来政治は王がやるものだが、今の王はただのお飾りに過ぎない。実質今この国を操っているのは目の前にいる男。


馬鹿な王を誑かし自分の都合の良いように使う。


ユエルはウィリアムが何をしているかは気づいていたが、物的証拠を掴むことができず斬り殺す事ができずにいた。


そんな思いが声と態度に出てしまい、この場にいた全員の顔が凍りつく。ウィリアムに至っては何とか笑顔を取り繕っていたが、一目で引きつっているのがわかる。


「ユエル団長。それはあまりにも失礼です。ウィリアム様に謝罪してください」


ウィリアムと一緒についてきた家臣の一人が声を荒げる。


「失礼だと?失礼なのはそっちであろう。謝罪すべきは貴様らの方だ」


「まぁまぁ、落ち着いてください。ユエル団長これは王命です。逆らうことなどできません。そうですよね、レオン団長」


レオンの方を向いて、ニコリた貼り付けた笑みを浮かべる。


「もちろんわかっています。ですが、何故我々十一団なのでしょうか。カメリアの森は九団の管轄です。我々がやらねばならない理由を教えて頂けませんか」


レオンは団長としてこれは受けてはならないた判断する。


例え王命だろうとカメリアの森なら話が変わる。それに、そこは自分達の管轄ではない。


何があったか知らないが他の団の管轄の尻拭いなど御免だった。


今でさえ人手不足なのに人員を割くわけにはいかない。


「貴方が知る必要などありません。何故ならこれは王命だからです。貴方はただ頷けばいいのです」


塵を見るような目でレオンを見る。

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