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005 割れた人形

 エゼクは、口の端に触れた柔らかい物の正体に気が付いて、心臓が口から飛び出そうなくらい鼓動が高鳴るのを感じていた。

 

 そして、去り際にリアムから渡されていた木彫りの人形を無意識に握りしめていた。

 気を抜くとニヤけそうになるのを抑えるように、表情を引き締めようとしたが無駄だった。

 

 自然に口元が緩んでしまっていた。

 それを隠そうとするように、手で顔を隠そうとしたが、手に持っていた木彫りの人形を見て独りでに笑ってしまっていた。

 

 そして、先程の柔らかい感触をもう一度味わいたいと言う衝動を抑えるために、人形をリアムの身代わりだとでも言うように手の中にある木彫りの人形にそっと口付けていた。

 

 

 その瞬間、いつかのように木彫りの人形が強い光を放っていた。

 光が治まった時、不思議なことに木彫りの人形が真っ二つに割れてしまっていた。

 それに驚いたエゼクは焦っていた。

 

「しまった……。リアムの物を壊してしまった。直ぐに謝らなければ……、しかし大切なものだったらどうすればいいんだ……」



 そう言って、面頬を着けることも忘れて、慌ててリアムを追いかけていたのだ。

 

 走って追いかけると、庭園を丁度出ようとするリアムの背中が見えたエゼクは、声を上げていた。

 

「リアム!!待ってくれ!!すまない、君から渡された人形を壊してしまった!!」


 そう言って、リアムの手を掴んで引き止めていた。

 手を掴まれてリアムは、振り返ってから目を丸くしていた。

 

「えっ?エゼクさん?」


「すまない。人形を割ってしまった……」


 エゼクから割れて2つになった木彫りの人形を差し出されたリアムは、声を上げていた。

 

「えっ!これって……。えっ?当たり?!」


 そう言って、木彫りの人形とエゼクを交互に見て驚くリアムに首を傾げたエゼクだったが、リアムの次の行動でさらに驚くこととなった。

 

「アンリ姉様は、やっぱり女神様です!!エゼクさん!!傷が!!」


 そう言って、エゼクに抱きついてきたのだ。

 

 混乱するエゼクは、抱きつくリアムの背を優しく叩いて宥めて言った。

 

「リアム?すまない……、状況がよく分からないのだが?」


 そう言われたリアムは、勢いよくエゼクから身を離して、その手を取って歩き出していた。

 

「エゼクさん!こっちです!!早く早く!!」


 そう言われて、急かすリアムに引っ張られたエセクは屋敷の中に入っていた。 

 

 そして、連れて行かれた先はリビングで、そこにはのんびりと本を読むアンリエットと、その膝枕で眠るガウェインの姿があった。

 二人の気配に気が付いたガウェインは、片目を開けてエセクとリアムを見たかと思うと、ガバリと身を起こしてアンリエットに抱きついていたのだ。

 

「エティ!!見てくれ!!エセクの傷が!!」


 そう言われたアンリエットは、のほほんとした様子で入り口に立つエセクとリアムを見て言ったのだ。

 

「あら?当たりだったみたい。ふふふ。よかったわ。これで、リアムちゃんの悩みも、ゼク君の悩みも解決ね」


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