僕は婚約破棄なんてしませんからね 元ネタ一覧
日間総合一位、ジャンル別異世界転生恋愛 日間、週間、月間、四半期一位ありがとうございます。
読者の皆様になにかお礼を……と思いまして、作品のネタバラシを行います!
興味がありましたらご覧ください。
いつも作品をご覧いただきありがとうございます。
この作品は史実や古典、実在の人物より多く題材をとっており、一つ一つの元ネタについて知っている人にはニヤリとさせられる一方で、元ネタについて知らないまま誤解を与える場合が少なくないと思われます。そのため、作品中で使われた元ネタを解説させていただきたいと思います。
・2話:灰かぶり姫
グリム兄弟による童話「シンデレラ」の和名。シンデは灰の意味があり、かまどの灰をかぶるほどの虐待を継母、連れ子義姉妹から受けていたためこう呼ばれる。いわゆる「ざまあ」のもっとも古い古典の一つ。グリム童話に編纂されたのは1812年。
・8話:地動説
太陽を中心に惑星が回っているという地動説で最古のものは紀元前の古代ギリシャで、アリスタルコス(紀元前310-230頃)が唱えていた。残念ながらプトレマイオス(古代ローマ 83-168)の天動説が普及し、神様が作られた地球が宇宙の中心と考える教会もこれを認めていたため、中世において地動説の復活はニコラウス・コペルニクス(ポーランド 1473-1543)の功績を待たねばならなかった。
ガリレオ・ガリレイ(伊 1564-1642)が自身の観測結果によりコペルニクスの地動説を裏付けたが、それにより教会に罰せられそうになったのは史実に詳しい。
・ポテトチップ
1853年米ジョージ・クラムにより発明されたとされるジャガイモ料理。
原型となる「フライドポテト」は17世紀のベルギーが発祥と言われている。フライドポテトを客に何度も作り直させられたジョージが腹を立てて思い切り薄く切って出したのが好評だったからという話がある。
・9話:ハムレット
英劇作家のウィリアム・シェイクスピアの代表作の一つでシェイクスピアの四大悲劇の一つに数えられる。1602年ごろの作品で正式タイトルは「デンマーク王子ハムレットの悲劇」。シェイクスピアの戯曲の中では最も長い。劇中のセリフ「生きるべきか死ぬべきか」は「To be, or not to be」を意訳したもので、「やるべきかやらざるべきか」とも受け取れ、訳本により解釈が異なる。見たい場合はローレンス・オリビエ版の白黒映画をお勧めする。
・ウイリアム・シェイクスピア(英 1564ー1616)
イングランドの劇作家、俳優。史実、古典、創作のいずれにおいても優れた作品を残し、悲劇、喜劇、恋愛、戦記、風刺劇などジャンルにこだわらない作風の幅の広さなどから未だに「複数作家による創作で実在しない人物では」という説が絶えない演劇界の巨人。シェイクスピアを読んで「どこかで見たようなセリフ」と思ってはいけない。全てそれが元ネタである。著作は全て「劇の台本」であるため、登場人物の心理描写はセリフのみである。そのため初めてシェイクスピア作品を手に取る読者には大変に難解であり、本で読むより、舞台や映画、DVDを観るほうが理解が早くお勧めである。
・10話:社交ダンス
男女がペアとなり踊る社交を目的としたダンス。12世紀ごろからヨーロッパの貴族階級で流行し、18世紀頃にウインナワルツとして現在の形に完成した。男女が密着することから19世紀までふしだらな踊りという偏見は残っていたようである。
・11話:九九
九九に相当する物は世界中に古くからあるが、語呂合わせに相当するものがない言語圏の国では現在でも普及していない場合が少なくない。戦後捕虜になった日本兵が、掛け算ができないソ連兵(現ロシア)のために、整列して人数を自己申告した例などがある。
・フライドチキン
鶏のから揚げ料理は世界中にあるが、植物油が貴重な国では高級料理、大量生産される国ではジャンクフードという位置づけがされている。米国では綿花の綿実油(脱脂綿の副産物)があったため某チェーン店が1952年に登場するまで奴隷階級のソウルフードというイメージが強く、そのため日本人がクリスマスにフライドチキンを喜んで食べることを、「せっかくのクリスマスになにもそんなものを食べなくても……」と同情されているのをご承知だろうか。クリスマスにローストターキー(七面鳥)を食べる風習をチキンで代替していることをバカにされているのである。
クリスマスにフライドチキンを食べようというCMを流しているのは誰だ……。
なお、「圧力鍋で揚げる」という製法は調理時間を短縮するために創業者が開発した業務用の専用フライヤーにより実現されているのであって、ご家庭の圧力鍋でこれを行うのは大変危険で再現は不可能である。市販圧力鍋の説明書では経済産業省が定める「消費生活用製品安全法」により「揚げ物には使わないでください」と必ず、絶対に書いてある。
・15話:ムーンウォーク
ムーンウォークは宇宙飛行士が月面でふわふわ歩く様子を真似したダンスで、その発祥はアポロ11号が月面着陸した1969年頃からと推定できる。それ以前にもバックスライドとして存在していたが、これを現在の形に定着させたのは米の歌手・ダンサーのマイケル・ジャクソンで、1980年代から世界中で流行したのはご承知の通り。ミュージックビデオの中でこれを披露しているのは案外少なく、ライブ映像のほうが観察しやすい。
特撮映画やドラマで宇宙飛行士が月面を歩くシーンで本物のムーンウォークを再現するには、宇宙服を着た俳優に風船を縛り付けて地球の六分の一の重力を演出する手法があり、映画「アポロ13」やテレビドラマ「フロム・ジ・アース/人類、月に立つ」などで観ることができる。
・17話:裸エプロン
全裸でエプロンだけを着用し局所を隠すコスチュームの一つ。性的嗜好を目的としない物の原型にヨーロッパの公衆浴場で実際にこれに近い形で女性が入浴する実例がある。日本でエロ目的で普及した発祥は1980年代の「ノーパン喫茶」ではないかと思われる。その後テレビ東京の深夜番組、「ギルガメッシュないと(1991-1998)」で野坂なつみが「夜食ばんざい」の料理コーナーで着用したことにより全国的に性的嗜好の一つとして定着した。
・18話:およげたいやきくん
1975年のヒット曲。フジテレビの児童番組「ひらけ!ポンキッキ」からの童謡。販売は500万枚以上と言われており、その記録は現在も破られていない日本最大のヒット曲であり国民的な歌曲である。当時ブームにあやかって街にタイ焼き屋が乱立したことは言うまでもない。キャラクターも人気であったが、ただしその絵はどこからどうみてもタイではなくヒラメである。
・消毒用アルコール
医療で消毒という手法を確立したのはセンメルヴェイツ・イグナーツ(ハンガリー 1818-1865)で、当時まだ細菌という観念が無かった時代に、産院での死亡率を消毒液による手洗いを行うことで18%から2%まで下げることに成功した。
病気において衛生管理が重要であることをデータにより確立したのはフローレンス・ナイチンゲール(英 1820-1910)である。当時高等教育を受けた女子が看護師のような底辺職に従事することはきわめて異例であったが、実際に現場で統計を取ることにより衛生管理の効果を実証し、統計学者としての功績でも評価が高い。
エチルアルコール(エタノール)は酒として有史以前から存在しており、消毒に有効なことは経験的に知られていたと考えられる。
工業用に使われるメチルアルコール(メタノール)は人体に有害であり視神経に障害が出ることが知られているので混同は厳禁。「目が散っちゃうのがメチルアルコール」と覚えよう。
・雷
雷が電気であることを実証したのはベンジャミン・フランクリン(米 1706-1790)で、100ドル紙幣の肖像にもなっているアメリカ独立宣言文書の草案にも参加した政治家と同一人物である。先生、なにやってんすか。
1752年、ライデン瓶(検電器)に電線で接続した凧を嵐の中であげ、雷が電気であることを確認した。雷の出力から考えると一歩間違えれば感電死しかねない危険な実験であったことは言うまでもない。
避雷針の発明者としても知られている。なお、避雷針は雷を避けるのではなく、建物に代わって雷の直撃を受けるための装置であり、「これを立てておけば雷がよけてくれる」と思ったら大間違いである。むしろ「雷を引き寄せる」のが避雷針と心得ていただきたい。
・19話:小惑星探査機はやぶさ
日本の宇宙科学研究所が2003年に打ち上げた工学実験機。2005年に小惑星イトカワに着陸、微粒サンプルの採取を行い、2010年に地球に帰還して、月以外の天体から初めて試料の回収に成功した。あまりにも挑戦的なその目標に、発射前から多くの注目を集め、数えきれないほどの障害、絶望的な故障に見舞われながらも、地球に帰ることを決してあきらめないはやぶさに多くのファンが最期の瞬間まで応援を続けた。その功績はネットの動画、テレビドキュメンタリー、映画、出版物など様々な形で現在でも見ることができる。
2020年には、新たに開発されたはやぶさ2が小惑星「リュウグウ」より予想を上回る大量の資料を持ち帰ることに成功し、現在もなお別の小惑星を目指して航行中である。はやぶさ2がほとんどのミッションを計画通り順調にこなすことができたのは、はやぶさによって得られた様々なノウハウが生かされていたことはもちろんである。
・20話:コンビニエンスストア
発祥は米国で1920年代。チェーン展開されるようになったのは1940年代である。ライセンス契約が結ばれ日本で最初のコンビニエンスストアがオープンしたのは1974年。当初は朝7時から夜11時までの営業であったが、翌年にはもう24時間営業が試験的に行われている。
・アポロ11号
1969年に米国で開発された月面探査有人ロケット。この時使用されたサターン五型ロケットは現在でも世界最大のロケットである。三名の乗員を載せ1969年7月16日に打ち上げられ、7月21日、人類を初めて月面に到達させ、7月24日に無事帰還することに成功した。
技術的に特筆すべきアイデアは、打ち上げロケットの「小型化」を実現するために、着陸船と司令船を別々に分け、リスクを承知のうえで月軌道上でのドッキングを行うことで月面からの離陸重量を最小限に抑えたことがきわめてユニークである。これをSF映画のように一台の宇宙船ですべてを行う形にしていたら、サターン五型ロケットは倍の大きさが必要であったと考えられる。
月着陸捏造説が一時流行ったが、もし捏造であったならわざわざ月面に今も残ることになる着陸船の下段を放置する形にするわけがなく、パイロットにより月面に置かれたレーザー反射鏡は今日も月と地球の距離をミリ単位で正確に測定している。今世紀に入って日本の「かぐや」をはじめとする各国の月探査機により、月着陸船や月面車の痕跡や、月面の当時の写真と3D観測地形の一致などが確認され、捏造説にようやく決着がついたことは記憶に新しい。
・22話:ロミオとジュリエット
1595年頃のウイリアム・シェイクスピアの戯曲。恋愛悲劇とされているが、喜劇的な演出も少なくないシェイクスピア流の皮肉や風刺がふんだんに盛り込まれた微妙作という見方もある。シェイクスピアの四大悲劇といえば「マクベス」「リア王」「オセロー」「ハムレット」であり、ロミオとジュリエットは除外されていることからお察しいただきたい。人気のテーマでありスタイルを変えて様々なメディア展開がされている。ちなみに舞台はイタリアで、イタリア語読みは本作中同様「ロメオとジュリエッタ」であり、実際に伊自動車メーカーの「アルファロメオ」社に「ジュリエッタ」というスポーツクーペがある。元ネタとなる戯曲は古くからイタリアにあり、本作は「シェイクスピア版リメイク」と言うこともできる。
小説家になろうで中世ヨーロッパの世界を書きたい方は一度ぐらいは映画化されたシェイクスピア作品を見ておこう。映画「ロミオとジュリエット(1968)」のセリフはすべて英語だが舞台はイタリアで、衣装、風俗、街並みなど参考になることがたくさんあるはずである。ちなみに原作のロミオは17歳、ジュリエットは13歳で、今これを原作通り映像化したら青少年健全育成条例違反となるのは間違いない。
・23話:ルイ・パスツール(仏 1822-1895)
細菌学者。細菌学の父と呼ばれる。細菌は自然に発生する説を実験的に否定し、微生物が病気の原因となることを突き止め、低温殺菌法の確立や、弱毒化ワクチンによる感染病(ニワトリコレラ、炭疽病、狂犬病)の予防を確立するなど、当時電子顕微鏡がまだ無かったためウイルスという存在が発見されてもいない中で大きな功績を遺す。
なお、作中登場する細菌の固体培養(シャーレに寒天培地を敷き、細菌を培養させる手法)を確立したのはパスツールと同時代のロベルト・コッホ(独 1843-1910)である。
・バルト
1925年の冬、アラスカのノーム市にジフテリアが発生したが、秒速40メートルの吹雪のためアメリカ本土から血清を運ぶ手段が鉄道、空路、道路のすべてが閉ざされていた。救援隊は1100キロの距離を総勢200匹の犬そりチームを編成し、およそ100キロをリレーして血清を運搬したが、その最後の最も困難を極めたアンカーのリーダー犬を務めたのがアラスカンマラミュートのバルトである。その功績をたたえ、ニューヨークのセントラルパークに銅像が立っており、1995年にはアニメ映画にもなった。
アニメ映画の中では「血清」ではなく、「ワクチン」と呼んでいて、これを見たセレアが「血清だった」と言うのは作者都合である。
・24話:十手
日本の時代劇では「じゅって」と呼ばれるが、実際には当時はじって、じっていと呼ばれていたようである。再三にわたり誤字報告をされているが、「銭形平次」のテーマでも舟木一夫が『じゅって』と歌っているので、テレビより知識を得たセレアが「じゅって」と呼ぶのはご勘弁いただきたい。
当時の警察機構、「同心」の使いっ走りである「目明し」に捕り物具として渡されていた。時代劇で銭形平次が「十手を預かる身」と言うのは、当時の警察役人である士族の同心より、帯刀が許されない平民である平次に悪人を捜査、逮捕する権限と共に十手を渡されていたという事実に由来し、単なる捕縛武具だけでなく、警察手帳のような役割も持っていた。そのため、「十手はただ身分証明のためにあり、刀と対抗できる武器ではなかった」という誤解があるが、宮本武蔵の父が十手術の達人であり、いくつもの流派が存在する室町時代から連綿と続く実戦的な武術である。
様々な形のものが現存するが、現在骨董品で入手できる物は捕物映画ブームの戦後作られた模造品がほとんどで本物はまずお目にかかれない。カギの部分が溶接だったり、ネジが切られていたり、からくりが仕込んであったり、鍛造でない物、刃が内蔵されていたり殺傷能力があるもの(そんな権限は目明しにはないし、武士階級の同心なら剣を使う)は、まずニセモノであろう。
・26話:ヨハン・シュトラウス
ワルツ王と呼ばれるオーストリアの作曲家。親子二代ともに数々の名曲を作曲した。
ヨハン・シュトラウス一世(1804-1849)とヨハン・シュトラウス二世(1825-1899)がいて混同されやすいが、シュトラウス作曲の著名なワルツ曲は大半が二世によるものである。
・28話:アレクサンダー・フレミング(英 1881-1955)
細菌学者。黄色ブドウ球菌のシャーレにカビが生えてしまったのを捨てずに観察し、青カビの溶菌効果を1928年に発見した。後にペニシリンの純粋抽出に成功した二人の学者と共に、第二次世界大戦中で多くの兵士の命を救うことになり、共同で1945年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。失敗は成功の母である。
・30話:ジョン・ゴリー(米 1802-1855)
真空ポンプによる気化熱を利用した製氷機を開発し、機械で製氷を行うことに1848年に成功した冷凍機器の先駆者である。元は医師であり、マラリアなどの熱帯病の治療のために氷を処方する必要に迫られての発明であった。
・アンデルス・セルシウス(スウェーデン 1701-1744)
天文学者であるが、それより現在の国際基準、氷水を0度、沸騰水を100度とする温度基準、セルシウス温度計の提唱者としての功績のほうが有名である。
・32話:エドワード・ジェンナー(英 1749-1823)
開業医。牛痘にかかった人間は天然痘にかからないという俗説よりヒントを得て、牛痘を使った種痘による免疫予防を確立した。人間だけがかかる天然痘では動物実験は行えず、そのため初めての人体実験には使用人の息子の八歳の少年を使うという大変ほめられないことをやっていて、現在なら炎上批判は必至であっただろうと思われる。天然痘の予防接種は世界中で行われ、1980年にはWHOにより地球上からの根絶が認められた。人類が特定の病原菌・ウイルスの根絶に成功したのは歴史上天然痘が初めてであり、唯一のものである。
・40話:オムニバス
現在は多くのアーティストの曲をまとめたアルバムのことを指すオムニバスだが、元は乗合馬車の呼称である。現在の「バス」の語源でもある。
・フリーズドライ
高野豆腐にも見られるように「寒干し」として古代からある食品の乾燥技術。これを凍結させた食品を真空下に置くことで、直接氷から水分を奪う方法がフリーズドライである。加熱しないため保存状態が非常に良く数多くのインスタント食品が作られている。元は1950年代の軍用食の開発から広まった。
・41話:ヨハネス・ケプラー(独 1571-1630)
天文学者。数学者、占星術師。「ケプラーの法則」の発見者として知られ、観測により惑星の軌道が楕円であることを実証した。特筆すべき点はこれが観測結果だけでなく、計算結果とも一致する数学的な軌道計算を確立した点が偉大であり、後にアイザック・ニュートン(1642-1727)の万有引力の発見に影響を与えている。ケプラー式望遠鏡の発明者でもある。
・火星人
米天文学者のパーシバル・ローウェルが1877年の火星大接近の際、火星表面を観察して「運河がある」と言い出したために、その人工建造物を作り出した知的生命体がいるということになって火星人が存在するという説が広がった。
英SF作家のH・G・ウエルズがそれを元に1897年に「宇宙戦争」を発表し、脳だけが発達し手足が触手化したタコ型火星人が定着した。
その後、観測技術が発達し、火星の模様は自然なもので人工建造物ではなく、火星人の存在が否定されたのは言うまでもない。
・42話:謄写版
通称ガリ版。18世紀より様々な方式があり、トーマス・エジソン(米1874-1931)もこれを基にした印刷機の特許を取っている。
誰にでもできる簡単で安価な複写技術なので日本でも普及をしていて、1960年代にいわゆるコピー機が登場するまで学校、役所、その他のオフィスで多用されており、アングラ組織の出版手段としても1980年代まで存在し続けた。ワードプロセッサ、パーソナルコンピューターとプリンタ、コピー機の普及により現在ではほぼ絶滅しており入手は困難。
・45話:百人一首
平安~鎌倉の公家藤原定家(1162-1241)の編纂による和歌集。
歌を詠んだのは帝から下級武士に女官まで身分差別なく、テーマもバラエティに富んでおり、この当時としては異例と思われる定家の公平な偏見のなさがうかがえる。
後にかるたとなり、この歌集は広く知られることになる。
余談だが作者出身の北海道では伝統的になぜかこの百人一首はいきなり下の句しか読まない「下の句かるた」で、しかも「木札」を使う独特なもの。しばしばお正月に集まった親戚どうしで、飛んだ木札による流血騒ぎが発生するという「特に教養が無くても力づくで遊べる」雅のかけらもない荒っぽい娯楽である。そのため北海道人の大半は、百人一首は下の句しかわからない。
・ミシェル・ノストラダムス(仏 1503-1566)
占星術師。どうとでもとれるあやふやな四行詩を予言集として出版し、千を超える詩の中からたまたま類似した事件が起こったことから偉大な予言者として担ぎ上げられた。
死後も信奉者による勝手な解釈や原文の改竄、恣意的な誤訳により、どの四行詩も史実とこじつけられ的中したことにされたため、最も有名な予言者となっている。そもそも、事件が起こってしまってからでないと何のことを指した予言だったのかわからないのでは予言の体を成していないのだが、作中の「1999年七の月~」は数少ない具体的に年が指定されていたため特に有名で、世紀末であることからも人類が滅亡する大災害が起こるなどの説が広がった。実際にはその年、特になにも起こらなかったことから、改めて検証が行われた結果、「ノストラダムスの予言の的中率は2%以下」という評価もある。
なおモーセ、キリストやムハンマドなどは「預言者」であり、神よりお言葉を預かったという意味があり、「予言者」と書くのは間違いである。混同注意。
・46話:ガリバー旅行記
アイルランドのジョナサン・スウィフト(1667-1745)により著作された1726年の空想小説。正式なタイトルは「船医から始まり後に複数の船の船長となったレミュエル・ガリヴァーによる、世界の諸僻地への旅行記四篇」という、現在のなろう小説の流行を予言したような長いタイトルである。小人の国の話が童話として有名であるが、「火星の衛星が二つある」、という記述は第三篇、ラピュータ編で登場し、そこでは単に衛星が二つとされているだけで命名まではされていないため、「フォボスとダイモスはスウィフトが命名者」というのは誤解である。当時地球には衛星が一つ(月)、木星には衛星が四つ(ガリレオ衛星)あることが知られていたので、間を取って二つぐらい? としたのではないかと推測されている。
・47話:エドモンド・ハレー(英 1656-1742)
彗星の軌道の予測に成功したことで知られる。特定の大型彗星が太陽を周回する軌道を回っていることを過去の観測データから気付き、軌道計算によりその彗星が地球に再来することを予言して没した。死後、その彗星が再び観測され、公転周期を的中させたことにより、その彗星が「ハレー彗星」と命名された。ケプラーの法則をアイザック・ニュートンが万有引力の法則を元に補完し、惑星の軌道が数学的に証明できることを公表する本を出版するのに資金援助をしたニュートンの友人でもある。ウィキペディアを見れば、「彗星なんかより断然コッチのほうが凄いだろ!」と思わざるを得ないほど多くの分野で業績を残した多才な人物である。
・反射式望遠鏡
主レンズに凸レンズを使わず、凹面鏡を使うことで映像の拡大を行う望遠鏡。ガラスをレンズに使う屈折式望遠鏡に対し、光の屈折率の違いによる色のにじみが無いことと、大口径のレンズを製作するより構造が簡単で精度良く作ることが可能なため、現在の天体望遠鏡の主流である。有名なニュートン式を始め、多くの天文学者が独自の方式の望遠鏡を開発し、自らの観測に使用している。
・土星の環
土星の環を発見したのはガリレオ・ガリレイ。同時期に木星の四つの衛星も発見している。ただしガリレオは環だとは思っていなかったようで、様々な珍妙なスケッチを残しており、その本当の姿を自作の解像度の低い望遠鏡で必死に推定していたことがうかがえる。
土星の周辺物が「環」だと初めて確認したのは1655年のクリスティアーン・ホイヘンス(オランダ)で、ガリレオ死後のことであった。
・48話:メイド喫茶
メイドは家政婦である。家事一般を担当するために雇われる女性の使用人の雇用形態の一種であるが、それをファンタジー世界で最大限に拡大解釈されたのが現在の「なんでも言うことを聞いてくれるヒロインとしてのメイド」である。これが萌え文化として確立されたのは90年代であり、コスチュームプレイの定番として三次元展開されるのにそう時間はかからなかったであろうことは想像に難くない。日本に初めてメイド喫茶が誕生したのは2001年の秋葉原とされているが、なぜ秋葉原が発祥の地なのかは不明である。
・49話:スパゲティナポリタン
ゆでたスパゲティを肉や野菜と共にケチャップで味付けしたパスタ料理の一種。スパゲティという食材とナポリタンと言う名称からイタリア料理という誤解が多いが、純然たる日本で発明された日本料理。スパゲティ料理の本場イタリア人からは敵視され、イタリア料理を辱めるゲテモノ料理であり、忌み嫌われている様子を海外の反応ネットで多く見ることができる。
・54話:ルネ・デカルト(1595-1650)
哲学者。それまで宗教的側面の強かった哲学を人間を中心にし神と切り離して考察した点で近代哲学の祖とされる。様々な解釈がされる「我思う、ゆえに我あり」であるが、映画「マトリックス」を観た人の中には、「世界が本当に存在しているのか疑い出したらキリがないが、それを疑っている自分は確かに存在することを確信できる」という意味でこのデカルトの言葉を思い出した人もいたのではないだろうか。
子供でも覚えられるもっとも有名な哲学の命題であり、夏目漱石はこれを著作「吾輩は猫である」の中で「三歳児でもわかること」とこき下ろしているが、逆に言うと三歳児や猫でもわかるから凄いのである。
・58話:乾板写真
写真の発明は1827年のジョセフ・ニセフォール・ニエプスと言われている。その後感光剤として塩化銀が発明され、ガラス板に感光剤を塗ったガラス乾板式写真機が実用化されることにより1870年以降普及が広がった。日本でも1860年頃に写真館が開業され、坂本龍馬を始め多くの幕末志士たちの肖像が現存している。
・59話:ボウリング
ボールを転がして何かを倒す遊びは有史以前よりあると思われるが、元はピンを悪魔に見立ててこれを倒す神事であったとされる教会発祥のスポーツである。これをナインピンボウリングとして基本ルールを統一したのはなんとあの宗教革命家にしてプロテスタントの開祖、マルティン・ルター(1483-1546)であり、まさにキリスト教の歴史において最大の「なにやってんすか先生」である。清教徒と共にアメリカに伝来したボウリングは、賭け事の対象としてたびたび禁止され、法の目をくぐるためにナインピンボウリングから、テンピンボウリングに改良され現在に至る。
・65話:メタルギア・ソリッド
1998年コナミから発売されたプレイステーション用ゲーム。背景まで3D化された緻密なグラフィックと映画的な手法、敵と戦闘することを避け、敵に見つからないように行動するという逆転の発想が大いに評価されヒット作となった。いわゆる「ミリオタ」垂涎のネタが盛り込まれ、軍事関係者にもシナリオの評価は高い。一方で、キャラクターの「×ボタンを押すんだ!」「これはゲームなんだから」といったメタ発言が多いことも特徴の一つで製作者の遊び心(悪乗り)が見て取れる。なお「メタ発言」の語源はこの「メタルギアソリッド」だというのは誤解らしい。
・67話:オペラ座の怪人
ガストン・ルルー(仏 1868-1927)が1910年に書いた怪奇小説。たびたび舞台化、映画化されているが現在最も有名なのは1986年から上演されているアンドルー・ロイド・ウェバーによるミュージカル版であろう。日本で劇団四季が公演しているのはこのウェバー版である。「ジーザス・クライスト・スーパースター」や「キャッツ」などを手掛けたウェバーらしく楽曲にロックギターが使われるなど奔放な演出が特徴で、これは映画で観るよりも舞台を観なければ観たとは言えない作品であり、DVDで観るにしても映画よりも舞台を収録したものを観るほうがお勧めである。豪華な舞台セットと衣装が売りで、現代の舞台芸術の最高峰の一つである。
・69話:刀折り
作者が創作した架空の十手術であり実在しない。時代劇でもピンチを演出するためによくある「刀が折れる」というのは実際にはなく、日本刀は大きな力が加わると折れる前にまず曲がる。折れてしまうような刀はニセモノか数打ち物の粗悪品である。本来十手は一本しか支給されないため、両手持ちの二本使う双角術では一本はカギのない「なえし」を使う。テレビドラマでは大川橋蔵が銭形平次で毎回巧みな十手二刀流を披露していた。
・76話:印象派
1870年頃から発祥の芸術運動における作品群。印象派の定義は難しいが、精密な写実主義と決別して荒い即興的な色彩の印象を特徴とした一連の絵画であろうか。
印象派の興隆には当時発明されたばかりの写真が影響している。記録としての写実的な絵、または肖像といった本来の画家の仕事がカメラマンの仕事となり、画家は仕事を奪われることになる。そのため、絵画でなければ表現できない、写真にとってかわることのできない新しい芸術を模索した結果生まれたものの一つだったのではないだろうか。
・77話:推理小説
世界初の推理小説はエドガー・アラン・ポー(米1809-1849)の「モルグ街の殺人」とされている。その後探偵が事件を推理で解決するという様式はコナン・ドイル(1859-1930)の「シャーロックホームズ」シリーズで確立された。
コナン・ドイル以降推理小説で最も功績があったのは奇抜なアイデアを次々と作品に取り入れたアガサ・クリスティ(英1890-1976)で、「容疑者全員が犯人」「犯人は私」「犯人は被害者」などの斬新なアイデアを高い完成度で作品にし、現在でも、もう他作家が真似ができないほどの元ネタを網羅している。
・78話:美女と野獣
仏ヴィルヌーブ夫人の原作による1740年の小説。何度も映画や、バレエ、舞台化されており、現在ではほとんど原形をとどめていないほど改変されている、らしい。
現在ミュージカルで舞台化されているのはディズニー版のアニメベースのものだが、お子様向けの子供だましと思ってはいけない。大人の鑑賞に耐える第一級の舞台芸術である。
以上、「どれも史実もしくは著作権切れかパロディですよ」という言い訳の羅列でした!