焦燥
焦燥
春になるとしにたくなる
あふれる生命の息吹が私の中を揺さぶり焦らせる。
桜の花が散るくらいならば
どうかそのまま私も連れて行ってくれ
桜の下に死体が埋まっているというならば
願わくば私もそこにやさしく埋めてくれないか。
夏になるとしにたくなる
密度の濃すぎる自然のちからが私を塵と化しにくる。
重い空気が張りつめた空と、爆発する命の境界線は
飛べない私の身を内からよじる
純粋な夏の記憶の結晶に
私を概念として混ぜてくれ
秋になるとしにたくなる
風前の枯草は刃となって私に突き刺さる。
みな何事もなかったかのようにふるまい
私だけをおいて逃げていく。
心ふるわされるならば
私を置いていかないでくれ。
冬になるとしにたくなる
あまりにも澄んだ空気は毒となってせかいを覆う
みな時は止まり
聞こえてくるのは私だけ
それならいっそこのままで
放っておいてくれないか