蒲田を挟んだ自動ドア
初めての失恋ものです。
蒲田は、恋をしていた。「誰に?」と言えば、会社の同僚である。名前は、真錦美香。スレンダーな体型で、顔は比較的美形である。その上優しくて、話していて楽しい。蒲田は、美香の特に優しさに惚れたのである。今まで彼女もろくに作らず、この日本商社に入る為、勉強していて、女子耐性も無い。だが、蒲田は彼女をものにすると息巻いていた。
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いつも通りの時間に、退社する。そして退社直前の美香を食事に誘う。
「真錦さん。今日は食事、一緒にどうかな。」
女子耐性のない蒲田は、必死に誘う。すると美香は、誘いを受ける。
「良いですよ。蒲田さん。じゃあ、みんなも行こうか。」
さり気なく、二人きりの時に誘うのだがいつも、何処からともなく、西田と湖池が現れる。西田は、同期にして蒲田の親友、湖池は、真錦の親友だ。お互い仲も良いので、よく遊びに行くが、食事の誘いの時には、邪魔で仕方がない。蒲田は、「どうしていつもこうタイミングが良いのだ?」と二人に恨めしげな視線を送る。しかし、二人とも全く気付いた様子はない。ため息をつきながら、蒲田は、四人で食事に行った。
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蒲田が、美香のことを密かに想っている事を西田は知っている。そして、何より奴はそれを知っていて揶揄って来る。美香は知らないが、西田と湖池は付き合っているのだ。だからこそ、蒲田も美香と付き合おうと躍起になっているのである。
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馴染みの焼肉店に顔を出して、満足コースを注文する。蒲田はタンを焼きながら、三人の会話に耳を傾ける。大抵、三人は人が肉を焼いているのに、話しているだけで手伝わない。何故なら、蒲田が一番肉を焼くのが上手だと知っているからだ。三人の話は他愛もない物だったが、アルコールが入った三人は、だんだんと込み入った話をし始めた。丁度、美香が好きな男性のタイプについて話し出した。
「美香ー。どんな人がタイプなのー?」
湖池が聞く。
「えーっとー。なんか仕事を一生懸命にしててー、一途な人かなー?あとー、そこそこ貯金もあってー、甘やかしてくれる人ーが良いなー。」
蒲田は、自分にどれくらい当てはまっているか考え出した。仕事はいつも一生懸命にしてる。一途に美香を好きだ。貯金は多い方だと自負している。幾らでも、甘やかせる。
「これはチャンスだ。」と、蒲田は思った。神が自分に与えたチャンスなんだと。蒲田は彼女に気持ちを伝えようとカルビを焼きながら、決意した。
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お腹いっぱい食べた一同は、解散することにした。勿論、西田は湖池を家に送る。自然と自分が真錦を家に送るチャンスが訪れる。蒲田は、勇気を出して美香に言った。
「真錦さん。一人で帰るには危ないから僕が家まで送るよ。」
と。美香は、
「蒲田君。ありがとー。」
と、大変酔った様子でニコニコとこちらを見て来た。蒲田は脈ありだと判断した。
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美香のマンションの前まで来た。大きなエントランスに自動ドア。蒲田は、凄いと思った。
「蒲田君。今日はありがとー。ここまでで良いよ。」
蒲田は、今しかないと判断した。
「真錦さん。僕と付き合って欲しい。」
美香はキョトンとした様子でこちらを見つめこう言った、
「面白い冗談ねー。酒の勢いって凄いねー。」
そう言って、マンションに入ろうとする。蒲田はもう一度、真剣に言った。
「付き合ってください。」
と。
「冗談きついよー。蒲田君。酒の勢いってことにしておいてあげる。」
美香はそのまま自動ドアを開け、中に入る。
「待って。」
蒲田は、追いかけた。そして、自動ドアが閉まり、蒲田は自動ドアに挟まれた。この自動ドアこそ、彼女の気持ちを代弁していた。蒲田は悟った。「自分は振られたのだ」と。
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翌日、美香は何も変わらない様子で挨拶をして来た。蒲田も挨拶を返す。蒲田は美香を諦めた。
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昼休み、西田は聞いて来た。
「昨日はうまく行ったのか?」
と。蒲田は、
「いや、振られた。」
と言った。気まずい沈黙が流れる。西田はそんな空気に耐えられなかったのか、肩を叩いて、
「ドンマイ。」
と言って、去って言った。
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以後このことは、四人の会話に出でこない。ただの仲のいい同僚に戻った。
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それから、暫くして、美香は結婚した。幸せそうな顔を見るとあの夜のことが思い出されたが、蒲田は心からの祝福をした。
「結婚、御目出度う。」
と。
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