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Side-A【通信終了後の携帯にキス】

 誕生日のデート以降、知世さんの研究は忙しくなった。珍しく掛かってきた電話での研究が忙しくなるという報告が最後の彼女の声だった。去年の事を振り返ると3月まで研究室に缶詰めだった。早くてあと3ヶ月。電話ではメールは大丈夫と言われたのでメールはしている。しかし、携帯からPCになり、メールの返信は一週間前から無くなった。待つ身は辛い。ふと左手の薬指にはめられている指輪を触る。まだ待っていても大丈夫なのだろうか。クリスマスのイルミネーションが一人でいた時よりも残酷までにまばゆい。知世さんの誕生日はクリスマスイヴだ。去年、研究室で他の学生達と一緒にケーキを頬張った時の方が近かった気がする。


 春は遠い。年内の最終の授業は担当の講師の体調不良で急遽、休講になった。クリスマスイヴ、知世さんの誕生日は地元に帰れる。知世さんに電話をするがドライブモードを告げるアナウンスが流れるばかりだった。そのため携帯とPCの両方に同じ内容のメールをする。待っている夜は長い。寝付けず浅い眠りを繰り返す。メールチェックを何度も行うが返信はない。気がついたら地元に向う始発の電車に乗っていた。知世さんの研究室に立ち寄る口実が欲しかったため学校前のコンビニでお菓子とジュースを買う。もちろん知世さんの好きな物は欠かせない。実験棟には知世さんの車が止められていた。即座に携帯に電話をする。携帯からはドライブモードではなく知世さんの声がする。研究室にいるらしく背後からは他の学生の声も聞こえる。この時間は実習工場では実験はできない。知世さんに実習工場に向かうように伝える。携帯を片手に知世さんを待つ。研究室から実習工場までの数分が長く感じる。知世さんが目の前に現れた。眼鏡に作業服。目は酷使されているためか充血している。誕生日の朝は研究室で過ごしたのは明白だ。知世さんの目から涙が零れる。その涙をそっと拭き取る。ボロボロの姿でも可愛かった。あまりに愛おしくて頭をくしゃくしゃに撫でる。離したくなくて強く抱きしめる。前よりも少し痩せた体だった。知世さんの左手の薬指にはめられたお揃いの指輪を確認すると言葉よりも先にキスをした。キスは気がつけば荒いキスになっていた。そしてまた抱きしめた。静寂があたりを支配した。彼女が忘れていた言葉を告げる。「知世さん、誕生日おめでとう。」彼女は驚いた。空白が続く。照れ隠しで陣中見舞いのお菓子とジュースを差し出す。知世さんは嬉しさとほんの少し恥ずかしそうな様子でありがとうと呟いた。その次に申し訳なさそうな顔をした。「悠人はいつでも待つのをやめていいんだよ」その言葉は心に突き刺さった。「待っているよ。俺はこう見えてもしつこいよ。」思わず涙声になった。待つ事を選んで知世さんに軽く口付けをした。短い時間だったが心を満たすには十分だった。夜に携帯が鳴った。「今日は学校に来てくれてありがとう。また、頑張れるよ。春が待ち遠しいです。」返信を即座に打つ。「会えて嬉しかった。春まで待てます。修了式には知世さんが好きなチューリップを持っていきます。」知世さんの顔を思い浮かべるだけで嬉しくなれた。そして通信終了後の携帯にそっとキスをした。FIN.


本日の最後の更新です。

某有名テーマパークの花火の音をBGMに更新をしております。


この作品は携帯はガラケーです。

スマホとLINEが主流の現代を物語の時代にできなかったのは私の想像力不足です。

アラサーにはLINEのある学生恋愛は想像ができません。


知世さんは研究中は眼鏡に作業服です。

作業服は身長が150cmの作者でもきちんとサイズがありました。

作業服業界の凄さに思わずたじろいだのは言うまでもありません。


それではまたお会いできることを心待ちにしております。


2017年5月16日 長谷川真美


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