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Side-A【目を逸らした間にキス】【キスがその答え】

 学生の本分は勉強です。そう言い放つのは年上の彼女の知世さん。集中講義の有限要素法のテストを乗り越える為に勉強を見てもらっている。夏休み中の学校の研究室は二人で貸し切りだった。図書館ではなく研究室にしたのは専門書が沢山あるからと二人きりでいたかったからだ。ひたすら数式をホワイトボードに書き、知世さんが解説をしていく。数式を眺め、楽しそうに語っていく。そんな姿が愛おしい。気を抜いていたら即座に頭を分厚い専門書で叩かれた。容赦ない。テストまであと2日。それまで鬼教師を続けるつもりだ。花火大会以降、敬語を無くしているが知世さんは気がついていない。そんな鈍感なところも好き。そんな自分も末期症状だ。「知世さん。次の章が終わったら休憩しない?アイスフラペチーノを奢るよ。」校内の生協は夏休み中だ。知世さんは数学の世界から帰ってきた。小さい声で答えが返ってくる。「生クリーム多めでね。」その姿が可愛くて笑ってしまった。「了解。」笑い声まじりに返すと知世さんは軽く膨れる。気づかないフリをして数式の世界に戻る。今までの章よりも早く進んだのは言うまでもない。知世さんの運転する車に乗り込み喫茶店に向う。運転は得意ではないので知世さんに運転を任せる。知世さんは縦列駐車をあっさりと決め、ドアを開ける。秋が近いためか風がどこか涼しい。それでも知世さんはトールサイズのアイスフラペチーノを一気に飲み干した。「悠人は今日は20時までだよね。」あと3時間。長いようで短い時間。名残惜しい。一言で妥当な答えを返す。知世さんはどこか残念そうにしていた。車内で気まずい沈黙が続く。学校に戻ると、どんなときでも明るく振る舞うのが彼女の癖がでてきた。そのためか残り時間はあっという間に過ぎていった。自宅までの長い電車が何時もよりも長く感じた。シャワーをあび自室で今日の分の復習をする。携帯が震える。小さな画面には好きな人の名前が写っていた。今日会っていたにも関わらず知世さんはいつもの定期連絡を忘れない。内容を確認する。「アイスフラペチーノごちそうさまでした。美味しかったです。」そこまではよかった。あとは今日勉強した範囲の数学の事について熱く長く語っていたので画面に対して苦笑する。テストは明後日だが都内の兄と二人住まいのアパートまでの時間を考えると知世さんと勉強できるのは明日で最後だ。メールを短く返し、眠りについた。


 勉強会は最終日を迎えた。研究室には先生と研究関係者がいた。とてもではないが研究外の勉強はできない。学校の図書館に向う。赤茶のレンガ作りの三階建の古びた建物。三階の自習コーナーは混雑していた。並びの席が取れず席が離れる。レジュメとノートを持ち席に座る。知世さんは輪講で使う論文を読んでいる。覚悟を決め、勉強に励む。二時間ほど集中して数式を追う。三年分の過去問を解き終えた。準備万端。知世さんに近づくが、彼女は論文を読むのに夢中だ。しばらくそんな彼女を眺める。集中している時に見せる真剣な表情は会った時と変わらない。知世さんは論文の区切りがついたらしくふと視線を論文から逸らす。その隙に体で死角を作りキスをする。彼女はなれない姿勢に微かに体を震わせていた。秋の色を感じさせる風がカーテンをふわりと揺らす。外からアキアカネが飛来し、肩に止まる。肩に止まったアキアカネを知世さんが小さな手でそっと掴み席から立ち上がり外に返す。振り向きざまに「ドライブに行こうか?」と知世さんがささやく。図書館を跡にし、車を停めてある実験棟まで歩いていく。ドライブでは海に向かった。潮風が吹く中、靴を脱ぎ砂浜を歩く。二人で階段に座り自販機で買った缶コーヒーを飲む。夏が終わり、秋に近い海岸には二人しかいなかった。波の規則正しくうち寄せては返す周期運動を見ながら隣りに座っている彼女は体重をこちらに任せていた。優しい口付け交わし、そっと抱きしめる。黒く短く切りそろえられたキレイな髪を撫でる。彼女が余りにも無防備だったので不安になる。そんな気持ちを察したのか答えはキスが告げた。FIN.

体調不良のためこの一ヶ月間、更新が遅れて大変申し訳ございませんでした。


悠人の夏休みの集中講義の有限要素法は私が学生時代に受講した集中講義をが元になっています。

1日6時間、2週間にわたってひたすら数学とプログラミングを行いました。

数学とプログラミングは下手の横好きだったのでできないなりに楽しかったです。


しばらくは集中して更新できそうです。

またお会い出来ることを楽しみにしております。


2017年4月11日 長谷川真美


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