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Side-A【始まりの合図のキス】

 全ては春のせいだ。そのような理不尽な言い訳しか思い浮かばないぐらい混乱している。お互い同じ研究室の先輩と後輩の仲で終わらせようとしていた。なのに、ちょうど頭一つ分小さい、2つ年上の先輩に気がついたら恋をしていた。自覚をしていなかっただけに気が付いた時には重症化していた。同じ研究室の先輩、知世さんに会えるのは明日の卒業式で最後だ。頭がぐるぐるする。『モテたい君へのヘアアレンジ入門』という我ながら恥ずかしい本を買って、半年間毎日のように会っていた先輩に対して焼け石に水としか言えないような無駄な努力に励んでしまう始末。戦闘服とも言われるスーツはリクルートスーツしか持っていない。ネクタイに至っては父のお古だ。鏡に向かい試行錯誤を重ねる内にタイムリミットを迎える。父親が運転する車で学校に向う。朝早く家を出たため高速道路は順調に流れている。昨晩は興奮してしまいよく眠れなかったためあくびを噛み締める。熱いブラックコーヒーの香りは知世さんの面影を連想させた。


 学校にたどり着いた。駐車場で知世さんの車を探したが見つからなかった。卒業式を終え、謝恩会に移る前の間、一人の人を探す。この半年間、毎日見ていた人。これからも一緒にいたい人。その思いを告げたい。花束を抱えている知世さんを見つけた。視線が合い、手を振る。「卒業おめでとう」そんな形式張ったやり取りも今日が最後だと思うと寂しい。彼女がふと小さい声で発した言葉が引き金になった。「一緒に研究できて嬉しかったよ。一年間ありがとう。」


 「好きです。」弾けるように出てきた言葉。いつか言おうとしたから後悔はしていない。桜の欠片が混じった、ほのかに熱を帯びた風が吹き上げる。春風と共に知世さんの頬が薄紅色に染まっていく。そして透明な声が囁く。「私も好きです。」真摯な眼差しが返ってくる。落とした花束を拾い、そっとこちらに差し出す。「好きです。」その繰り返された一言が全身を貫いた。身体を折り曲げ彼女の軽い静止を振りほどき熱い頬にそっと口付ける。それが始まりの合図のキスだった。

FIN.


今回からラブコメモードになりました。

これからはラブコメが続きます。

へっぽこ悠人と知世さんの物語にお付き合いいただけると嬉しいです。この二人の物語は現時点では一応着地はしているので安心して読んで下さい。


この話から執筆中のBGMがハニーワークスになっています。ハニーワークスの甘酸っぱい歌詞に作品が引っ張られている気がします。また、J-WAVEを聞きながら執筆しているので小ネタが分かると面白いと思います。


また次回お会いできれば幸いです。


2017年3月7日 長谷川真美

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