全てが終わるとき3
僕は生き延びた。
何故だ。僕は確かに銃で撃たれたはずだ。
校長の銃口は僕にしっかりと向いていたのに何故なんだ!
「どういうことだ!何でお前が死なないんだよ!俺はお前を撃ったのに何故だ!」
僕も校長も委員長もこの場にいる誰一人が訳も分からない状態に陥っていた。そして、沈黙がこの場所を支配したのだ。
その時だった。
「それは私が教えてあげるわ」
一人の女の子の声がその沈黙を破ったのだ。
綺麗な髪をしていて、声が綺麗によく通っている。
僕の大好きな人。
僕がここ最近待ち続けた温もり。
遥がそこにいたのだった。
「どういうことだ!遥貴様何かを知っているのか!」
校長は激怒していた。
殺されそうになり、更に僕を殺す事も出来なかった。
そんな状態で校長を襲っているであろう恐怖は想像もできないものだ。
今にも自分は殺されかねない。
死が間近にさまって来ているのだから当たり前だ。
そして、遥は校長に洗脳されているはずなのに今はまるで校長に歯向かうような状態であり、更に今までに起きたことの全てを知っているかのような口振りだった。
僕は遥の方を見ると遥はすぐに僕に謝ってきた。
「ごめんなさい徹。私あなたに酷いことを言って。いくら演技だったとは言え言い過ぎだったわ。でも、信じてほしいの。私が校長室で言った言葉は全部デタラメよ。校長に忠誠を誓ったように思わせるためのフェイクだったの」
遥の言うことに僕の頭は混乱していた。
えっ、と。一体どういうことなんだ?
「遥。すまないが分かりやすく説明してくれないか。君が校長に忠誠を誓ったふりをしていた理由や。何で僕が銃で撃たれたのに死んでいないのか」
僕がそう言うと遥は順を追って話を始めた。
「私は始業式の日。徹と一緒に帰る前に校長室に女子がみんなで行くと話をしていたのを耳にしたの。何でみんなで行くの?と私が訪ねるとみんなが口を揃えて「校長先生のお側にいるためよ」と答えたわ。私は徹と一緒に帰ったあとに不安だったから仲の良い女の子の家に電話をかけた。するとその女の子は家に帰って来ていないと言われたの。私とその女の子のご両親とで話をして警察に校長の事を調べてくれと頼んだわ。するとね警察は何の行動も起こしてくれなかったのよ。何でも上からの圧力だそうよ。そして私は仕方なくその日は諦めて明日に何とかして校長を調べようとした。でも、それでは遅かった。次の日に学校に行ってみるとほとんどの女子が登校していなかったわ。そこで私は考えたの。さすがに全員をこんな短期間で手懐けられる訳がない。そこで思い付いたの校長も悪魔と契約をしたのだと」
「遥。ちょっと待ってくれ。何で遥が悪魔の事を知ってるんだ!」
「徹。それはね、君が死ななかった理由にも繋がるんだよ。実は私は悪魔との契約をしていたのよ。徹と私をあらゆる物から守ってくださいってね」
何だって、それじゃ昔に委員長と同じ事を遥はしていたのか。
だから、僕は死ななかった。悪魔の力に守られているからだ。
「でも、遥は何で悪魔なんかと契約をしたんだ!」
「それはね、昔の徹を守るためよ。記者の考えもない質問に徹の心はどんどん擦りきれていった。でも、私はあなたを守れる力が無かった。だから悪魔と契約をしたのよ」
そんな、僕のせいで遥も悪魔と契約を………………………。
「私には悪魔の力は効かない。だけど、何が起きているのかも分からない状態だった。そこで私は校長の力の影響を受けているフリをして校長の動向を探っていたのよ。そして、今日徹のおかげで無事に他の女の子達を救ってあげることが出来た。ごめんなさい徹。あなたを騙していて」
遥は泣きながら僕に謝っていた。僕はホッとしていた。
なんにせよ遥が戻って来てくれたからだ。
「別に良いよ。それよりも早く終わらせようか」
僕はそう言うと予備のナイフを懐から取り出した。
僕達は悪魔の力によって守られているために校長が銃で僕を殺して動きを止めようとしたが意味をなさなかった。
僕は校長の心臓をナイフで刺した。
校長は叫んでいた。痛みや死ぬ恐怖によってだ。
しかし、僕はナイフを校長の体から引き抜くと別の所を刺した。
校長は倒れてしまった。
そして、校長は少しずつ少しずつ消えていった。
チリとなってまるでこの世に元々いなかったかのように消えていった。




