由紀子
「こんにちは。こんなところで何してるの?」
昨日と同じように来た道をぼんやりと帰っている。行きよりも雲が多くなった気がする。
「ここは危ないから入っちゃいけないって先生が言ってたよ。」
放課後は学習塾で英語と算数、そして国語を勉強している。
「ずっと下向いて何してるの?」
お母さんは僕に立派な中学校に行って欲しいらしい。
「おーい。大丈夫?」
そのためには遊ぶよりも勉強をしないとダメなんだって。
「ずっと無視されると悲しいんだけど。そのフードめくっちゃうぞー?」
最近はお母さんのいうことばっかり聞いてる。操り人形みたいな気分。
「ねぇってば。」
でもどうしようもないから何も考えずに頑張ってる。
「本当にやっちゃうよ?」
そんなことを考えている時に、この田舎の町には場違いな金髪の女の子を見つけた。
「えい!」
彼女には両足が無かった。全身も傷跡が多くあり、汚れがたくさんある。顔を覗くと、突き刺すような青い目がこちらを向いていた。秀介はなんて綺麗な女の子なんだろうと思った。
「どこから来たの?」
学校の生徒全員を知っているわけではないが、少なくともこんなに目立つような子は見かけたことがない。ましてやこの町に金髪の人がいるのかも怪しい。
「...」
相変わらず彼女から返事はない。口元は比較的傷がないため、怪我をしているから話せないということはないと秀介は考えた。すると彼女のパーカーに名前が書いてあるのを見つけた。
『由紀子』
見た目の印象で海外の子だと思っていたがどうやら違ったらしい。日本で生まれてこの辺りに最近引っ越してきたのだろうか。
そんな彼女にどう声をかけようか悩んでいると、雨が降ってきた。
秀介は由紀子を背負って家に帰った。お母さんにばれると思ったが、暗いリビングで座っていたため、その心配は杞憂に終わった。ゴミ袋が積まれた玄関を通り過ぎ、息を潜めながら2階の自分の部屋へと向かった。お母さんのご機嫌はリビングの明るさとゴミ袋の多さで分かる。今日は最悪な日。
部屋に入り、由紀子をそっとベッドの上へ降ろした。
「えっと...」
今になって秀介は自分の判断を悔やんだ。訳ありな女の子がいたとはいえ、あと先を考えずに無理に連れ帰る必要はなかった。だが彼女の瞳がそれを許すことはなかった。
「由紀子ちゃん...でいいんだよね...?」
相変わらず返事はない。表情もピクリとも変わらない。まるで作り物に話しかけているみたいだ。
「とりあえず雨で濡れてるしタオル持ってくるね。」
秀介は脱衣所へ向かう。リビングの母親は動いていない。声をかけようとしたが、今日が最悪な日であることを思い出し踏みとどまった。タオルを1枚持ち、2階へ上がろうとするとチャイムが鳴った。もう夜になるのに誰だろう、と思いながらインターフォンにでると、
「秀くん。おばちゃんよ、開けてー。」
おばあちゃんだった。由紀子という奇妙な存在に気を取られ、今日が来る日であることを完全に忘れていた。扉を開けると気持ちの悪いくらい笑顔なおばあちゃんがいた。
「秀くん、元気にしてた?今日は雨だったから大変だったでしょ?」
「うん。急に降ってきたから濡れちゃった。」
「あー、だからタオルを持ってるのね。あ、そうそうこれ今日の夜ごはん持ってきたわよ。肉じゃがとお味噌汁。あとは簡単なサラダとコンビニのスイーツよ。お米は炊いて食べてちょうだいね。」
「うん、ありがとう。」
「余ったら自由におかわりしてちょうだいね。」
「うん」
「また来るからいい子にして過ごすのよ?お勉強はどうかしら?」
「頑張ってるよ」
「そぉなのね。秀君は賢いから将来有望ね~。じゃあおばちゃんはこの後もやることがあるから早いけど行くわねぇ。」
そういうとおばあちゃんはリビングのお母さんんには目もくれず足早に去っていった。
「もう少しくらいゆっくりしてもいいのに」
秀介はそう呟きながら2階へと向かった。部屋へ戻ると由紀子はうつ伏せで寝ころんでいた。きれいな金髪がベッドから垂れ下がっている。
「はい、タオル。持ってきたよ。」
返事はない。本当に生きてるのか?
「雨は汚いんだよ。だから拭いた方がいいよ。」
石のままだ。なんなんだこの子は。
考えあぐねていると不意に腕を差し出してきた。拭けってことなのだろうか。
「はいはい、拭きます。」
由紀子の言う通り(?)に腕や髪を拭いた。しかしうつぶせなのでそれ以外の部分はできない。
「ちょっと、拭きにくいから一回起きてよ。」
「...」
「もー、起こすよー。」
だんだんと接し方が分かってきた。彼女を起こし、顔などを拭いていく。まるで介護みたいだ。
「はい、終わり。」
拭き終わり時計を見ると8を指していた。もうこんなに遅くなってしまった。ご飯やお風呂はどうしようかと悩み、由紀子の方を見ると微笑んでいた。青い目で秀介を包み込み、温かい雰囲気が部屋を覆った。
窓からは雲が消え、月明かりが秀介を照らしていた。
初めて書きました。アイデア出しのようなものなのでこれから色々なことに挑戦していきたいと考えています。




