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九話 諦められたら良かったのに

 月日が流れるのなんてあっという間で、気付けば私は十四歳になっていた。


 髪の毛は腰の辺りまで伸びたし、少し大人っぽくなったと思う。

 もちろん、それはビアンカも同じで……可愛らしさにより拍車がかかっていた。


 大体月に一度のペースでお茶会をしていたのだけれど、やっぱりユージン様はお菓子とビアンカの話が好きみたい。


 私がお菓子の話をする時は、興味深そうな返事をしながら美味しそうに食べてくれる。

 そしてビアンカの話をする時は、決まって愛おしそうな目をしながら私のことを見つめるの。


 ____そんなにビアンカのことが、好きなのね……。


 その表情を見る度に胸がチクチク痛んだけれど、ユージン様のその表情が何よりも好きだった私は、結局いつもビアンカの自慢話をしてしまう。


 それに、お茶会に自らビアンカを誘って三人で時間を過ごすことも多々あった。

 私と二人でいる時よりも、明らかにユージン様の雰囲気が柔らかくなるから。


 ……叶うはずのない恋を、自ら絶対に叶わない恋にしているようなものだわ、こんなの。


 でも、やめることができなかった。

 だって私は、ユージン様の笑顔が大好きなんだもの……。


「不毛ね……」


 誰もいない部屋の中で、私の呟きが木霊する。


 けれど、どんなに不毛だとしても、私はメイウェザー子爵令嬢。

 貴族としての役目を果たすため、しっかりしなくてはならないわ。


 なんて言ったって……明日は、ユージン様と街で初めてのデートをするのだから。


 絶対に失敗なんて許されない。


 それに……できれば私のことを、少しでも見てほしい。

 私のことを、好きになってほしい。


 ……なんて、贅沢な悩みね。



 とりあえず今日は早く寝て、明日のデートに備えなければ。


「明日のデート、上手く行きますように……」



 そんなことを祈りながら、広いベッドの真ん中で眠りにつくのだった。

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