四話 初恋
この扉が開けば、私達はいよいよ夫婦として誓いを立てることになる。
ユージン様のことが好きな私と、ビアンカのことが好きな彼が、永遠の愛を誓うのだ。
「皮肉ね……」
つい、思っていることが口から溢れてしまった。
けれど、ユージン様はそんな私の独り言にも気付かなかったようだ。
何やら深刻そうな顔をして、何度も深呼吸をしている。
……緊張されているのかしら?
なんて、そんなわけないわよね。
きっと、ビアンカの前で私と愛を誓うことが、重荷になっているだけだわ……。
____どうして、こうなったんだったかしら。
私の初恋は、間違いなくユージン様だった。
彼の初恋も、私であればよかったのに。
……なんて、考えるだけ無駄ね。だって、ビアンカは可愛くて、あんなに良い子なんだもの。
私なんかじゃ敵わない。
ずっと昔からわかっていたことじゃない。
____リーン、ゴーン……
新郎の入場を知らせる、鐘の音が聴こえてきた。
私はチラリと、彼の方を見る。
彼は深く深呼吸をしてから、キリッとした表情で前を向いた。
扉が開き、彼が先にバージンロードを進んでいく。
その手は、微かに震えていた。
……その震えと緊張が私に対するものじゃないことなんて、言われなくてもわかっているけれど。
私も、もうすぐ父と共に入場して、途中からは彼ともバージンロードを歩くことになる。
……父は気を遣っていたのだろう、少し離れたところで待機をしてくれていた。
けれど、ごめんなさい。
私と彼の間には、お父様が期待するようなものは、何もないんです。
____扉の奥からフワリと花の香りが漂ってきて、思わず私は目を瞑る。
すると、まるで走馬灯のように……これまでの思い出が脳裏を駆け巡り始めた。
***
____私が彼と初めて出会ったのは、沢山の花が美しく咲き誇っているユージン様の実家の庭だった。
確か、私が十歳、ユージン様が十一歳。
そして……ビアンカが八歳の時だった。




