二話 全ての始まり
小さい時から、私はお姉様のことが大好きだった。
お姉様はとても優秀な方だった。
お勉強もできるし、マナーだって素晴らしい。
そしてなにより、誰よりも優しい心を持っていた。
私はそんなお姉様に遊んでもらうのが何よりも好きで……。
貴族の娘として生まれた以上は叶わないことだとわかっていても、ずっとお姉様と暮らしていたいと願っていたこともあった。
けれど、私が六歳になった頃くらいだろうか。
勉強やマナー、そしてピアノやバイオリンなどのレッスンを受けるうちに、私はお姉様の能力を超えてしまうようになった。
お父様とお母様は私達を平等に愛してくれていたけれど、それでも周囲の目は誤魔化せない。
そして案の定、家庭教師が褒めるのは私ばかりになってしまって……。
……お姉様は、とても苦しかったと思う。
私のことを憎んでいるんじゃないか、妬んでいるんじゃないかと不安になったことだって、何度もあった。
実際に、色々と思うところはあったと思う。
だって、お姉様は本当に努力家だったもの。
それを、私が台無しにしてしまった。
でも……それでも、お姉様は私に優しかった。
絶対に私に嫌なことなんて言わなかったし、いつも私の味方をしてくれた。
それどころか、私の好きなデザートを「内緒よ」って分けてくれたりして……。
本当に本当に、優しくて素晴らしいお姉様。
そんな大好きなお姉様と、私はずっと一緒にいられると思っていた。
____でも、私が八歳の時。
お姉様がとある方と「お茶会」をすることになった。
でも、この頃の私は本当に幼くて、未熟で……。
その「お茶会」に混ぜてもらえないことが、私にはとても不満だった。
大好きなお姉様を誰かに取られてしまうのが嫌だったの。
……本当に、馬鹿だった。
私だって、貴族の娘だから、この「お茶会」がどういう意味を持っているかくらい、本当はわかっていた。
それに、一回目の「お茶会」から帰ってきた時のお姉様の様子を見れば……。
お姉様がその人に心を奪われてしまったことくらい、容易に想像がついた。
だってお姉様ったら、私と話している時もずっと上の空なんだもの。
それが悲しくて悲しくて……私はどうにかして、お姉様に構ってもらいたかった。
だから私は……二回目のお茶会の時、私の相手をしていた侍女の目を盗んで、お姉様達のところへ飛び込んだのよ。
何も知らない、無邪気な子供のようなフリをして。
……いいえ、実際に未熟な子供だった。
「おねぇさま〜! わたしといっしょにあそんでください!」
____今思うと、これが全ての始まりで、私の最大の失態だった。




