表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/43

三十四話 一発

 ユージン様が、ごくりと生唾を飲んだのがわかった。


「三つ目は……これからは、思っていることをちゃんと口に出してください」

「…………それだけか?」

「その『それだけ』が出来ていないから申し上げているのです。……ユージン様なりに、私のことを愛していることはちゃんと伝わりました。ですが、それはさっきの話を聞いて初めてわかったことです」

「……」


 ユージン様が唇を噛み締める。


 私はそんなユージン様と目線を合わせるために、ソファから降りた。

 そして、正座をしているユージン様の正面にしゃがみこむ。


「ですが……私も今まで、ユージン様に自分の気持ちをお伝えしたことがございませんでした。……思えば私達、婚約者らしい話を全くしないでここまで来てしまったのですよね」

「それは……そうだな」

「だから、これからはどんな些細なことだと思っても、ちゃんと考えていることを話し合いましょう。……白い結婚ではなく、ちゃんとした夫婦になるために」


 私が微笑むと、ユージン様は縋るような瞳で私を見た。


「り、離縁したいんじゃなかったのか……?」

「それは、条件を受け入れられないのでしたら……という話です。私もユージン様のことを慕っておりますから」


 私がそう告げると、ユージン様は「え……?」と震えた声を漏らした。


 ____待って、私、もしかして……。


「……お伝えしたこと、ありませんでしたっけ……?」

「…………ないな。私の片想いだと……ずっと思っていた」


 ……これじゃ、ユージン様のことを悪く言えないわね。


 やっぱりユージン様の態度には、私が気持ちを伝えていなかったから……というのもあるのだわ。


「私達、両想いなのに勘違いして遠回りしていたんですね……」


 なんだかそう考えると……本当にこの八年間、何をやっていたのかしらね。


 でも、だからこそ。


 これからはそんなことにならないように、変わらなきゃならないのだわ。

 私も、ユージン様も。


「三つ目の約束、受け入れていただけますか?」

「あぁ、もちろんだ。そして……ベルナデッタ、愛している。……今まで本当に、すまなかった」

「はい、私もお慕いしております」


 今にも泣きそうなユージン様の表情を見ながら、私も自分の想いを伝える。


 ____でも、これだけでは流石に終わらせるわけにいかないわ。





「……では、四つ目。最後に一つだけ、私からお願いがございます」

「……お願い? 約束ではなくて……か?」

「はい。今からすることは、あまり淑女として褒められた行動ではないですから……」


 私が笑いながらそう言うと、ユージン様は何かを察知したようだった。


 明らかに、先程よりも表情が固い。


 ……まぁ、そうなるわよね。

 だってユージン様にとっては……これが初めての経験になるでしょうから。


「一つ確認したいんだが……君は本当に、私のことが好きなんだよな?」

「それとこれとは話は別です」

「……そうか、そうだな。むしろ、今までのことを考えるとこれだけじゃ足りないくらいか……」


 ユージン様は覚悟を決めたようだ。


 しっかりとした口調で、私に宣言した。


「……わかった。全力で頼む」

「もちろんです」


 私は笑顔を崩さないまま、ハッキリと告げた。





「では……しっかり目を瞑って、歯を食いしばってください」





 そして私は、大きく手を振りかざしてから……


 ____パシンッ……!




 …………ユージン様の傷一つない綺麗な頬に、思いっきり平手打ちをしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ