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三十一話 ベルナデッタの決意

 ……その後、無事にベルナデッタにネックレスを渡すことが出来た私は、ほっとしながら馬車の中で眠りについたのだった。


 ***


「…………と、いうわけなんだが……」

「……はぁ……」

「……怒っている……のか?」

「呆れているんです」


 結婚式後の新婦控え室とは思えないような重い空気が、部屋の中で流れる。


 本当に、この人って……。

 不器用という言葉で片付けていいのかしら?


 ……でもなんとなくだけど、わかってきたわ。

 この方は本当に、言葉が足りない上に言葉を口に出すのが下手なんだってこと……。


 だからといって、簡単に許すことは出来ない。

 いくら私の態度にも問題があったとはいえ……。


 ユージン様の言動で萎縮したり、『ビアンカのことが好きなんだわ』と思い込んでしまったのは事実だもの。


 本当に、思っていることを全部口に出してくれていればこんなことにはなってなかったでしょうに……。


 ……いえ、それは私もね。

 私も素直に「ユージン様が好きです」と言えていれば、もっと違う未来があったのかもしれない……。


 とはいえ、それはそれ、これはこれだわ。




 こちらを窺うように見つめているユージン様に、私は問いかけた。


「……そういえば、その初デート以降、ビアンカとの文通はやめたのですよね?」

「あぁ。ビアンカから『これ以上はお姉様に失礼ですから、もう辞めましょう。この手紙が最後ですわ』という手紙が来てな。今までに贈ったプレゼントも、未使用の状態で全て返送されて来たよ」

「えっ!?」


 ____ビアンカ、そんなことまでしてくれていたの?


 ……確かに考えてみれば、ビアンカがユージン様から贈られたプレゼントを使っているところを、一度も見たことがないわ。


 あの子、本当に私のことを想ってくれていたのね…………。


 それに、淑女たるもの男性から贈られてきたプレゼントを無碍にできない気持ちもわかる。


 あんなに幼い子供だったのに、本当に聡い子だわ。

 そもそも文通も、ビアンカが望んだものじゃないものね。


 それに比べて、このお方は本当に……!


 ……でも、ネックレスを懸命に探してくれたのも、この方なのよね……。

 貴族なのに服がボロボロになるまで探してくれた気持ちは、間違いなく本物だったし……嬉しかった。





 私はもう複雑な感情で心がぐちゃぐちゃになりながらも、淡々とユージン様に問いかける。


「……最後に、お聞かせいただきたいのですが……デビュタントの時の発言を、覚えていますか?」

「……あぁ」

「あの時あなたは、『ビアンカの方が可愛らしい』と、周りの令嬢に言いましたよね」

「……言ったな」


 やっぱり、覚えているのね。

 しかも、そんなに気まずそうな顔をするということは……失言をした自覚があるのかしら。


「あれはどういう意味で言ったんですか?」

「……信じてもらえるか……わからないが……」

「ここまで来たら、もう全部信じます」

「…………私はあの時、続けてベルナデッタのことを『そしてベルナデッタは美しくて優しい女性だ、可愛らしいなんて言葉では片付けられない』と告げるつもりだったんだ。二回も遮られて、結局言えずじまいだったが……」

「…………本当に……」


 感動や嬉しさよりも先に、私は思わず嘆息を漏らした。


 順序が逆なのよね……。普通は、私の名前を先に出すべきなのよ。

 いえ、確かにあの令嬢は「どちらが可愛いか」と聞いていたけれども……。




 でも、これで私のしなければならないことはハッキリしたわね。


 私は深く息を吐いてから、ユージン様にしっかりと向き直った。


 私も、もう逃げるのは辞めにするわ。


「____ユージン様、私からあなたに告げたいことが、四つほどございます」

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